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第1章

第三十一話 「ネルさん、出産する」

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1月21日。新たな命が誕生した。
あたしとウルフ一郎の、子供……男の子だ。
目は、ウルフ一郎にそっくりで、肌の色は、あたしにそっくりで、それに、おしりにはかわいいオオカミのしっぽが。

「んく、んく、んく、んく、んく、んく……。」

「うふふ。おっぱい、おいしそうに飲んでるわね。」

「あぁ。もう、なくなりそうだぜぇ。」

「うふふふふ。あまり飲みすぎたらだめよー。」

「んく、んく、んく……。」

タッ、タッ、タッ、タッ、タッ!
ガチャッ!

「ネル!」 「ネルさん!」 「ネル様!」 「ネルお姉様!」 「ネルちゃん!」

「ウルフ一郎!みんなぁ!」

「あ……。」

みんなの視線は、あたしの胸。
こんのぉ~!こんなことをしている最中に、入って来んなぁ!
あたしは物をいっぱい投げた。

「うわ~!ごめんなさい、ごめんなさ~い!」

「み、見なかったことにしますぅ!」

ガチャン。
ふぅ、やっと、出て行ってくれたぜぇ。

「う、う~!」

もう、お腹いっぱいなのか?

「あう、あう~!」

うふふ、かわいい。

「さあてと。」

リリアは立ち上がった。

「入って来るように、伝えようかしら。」

リリアはドアの方へ歩き始めた。
ガチャッ。

「もう終わったから、入っていいわよ。」

「ネルーっ!」

「ネル様ぁ~!」

みんなはどんどん、部屋に入って来た。

「ウルフ一郎。あたし、頑張ったよ。」

「あぁ。よく頑張ったな、ネル。」

ウルフ一郎が、あたしの手を、ぎゅっとにぎった。

「ネル……。」

「おふくろ、親父!」

二人はあたしを抱きしめた。

「よく頑張ったな。」

「赤ちゃんの産声を聞いて、私、私……。」

おいおい、泣くんじゃねぇよ、クソババア。

「ネルたばぁ~!」

わっ!ウルフ三郎!いきなり飛びつくんじゃねぇ!
びっくりするじゃないか!

「俺たば……俺たば、もう二度と、会えないかと思ったよ~ん……うわぁぁぁぁぁん!!」

なに言ってっか、わかんねぇよ。
ていうか、顔が鼻水と涙で、台無しだし。

「まぁ、気にしない方が、いいと思うぜ。」

ウルフ次郎義兄さん、そうですよね。

「ところでネルさん、赤ちゃん、見せてください!」

誰がおめぇみてぇなうぜーやつに、赤んぼうを見せるか、ぶあか。

「えーっ?」

「ネル、俺に見せてくれっ。」

わかりました♡あなたに見せます♡

「やったぁ~!」

(ちっ、邪魔者ヤロー、俺様のネル様と、仲良くなりやがって!)

「赤ちゃーん、みんながお前の顔を見たいって。」

あたしはみんなに、赤ちゃんを見せると、みんなは、「うわぁ~。」と、歓声を上げた。

「かっわい~♡」

「ウルフ一郎さんに、そっくりですね!」

「いやあ~、DNAが、一致しすぎたんだよ~ん♡」

こいつ、あとでぶん殴る。

「見て見て!」

「おしりにオオカミのしっぽが!」

「あらほんと。かっわい~♡」


あたしは、ウルフ一郎の前に、赤ちゃんを出した。

「はいっ。お父さんっ。」

「き、緊張するなぁ~。」

そう言いながら、ウルフ一郎は、赤ちゃんを抱っこした。

「うわぁ~、かわいいなぁ~。」

うふふふふ。

「次はあたしだよ!」

「ネルさん、お願いですから、私に抱っこ、させてください!」

「私にもさせて。」

「私にも~!」

「俺様にも~!」

「ネル様ぁ~♡俺様にも、抱っこさせて~ん♡」

はいはい。順番ずつなっ。
みんなはそれぞれ、赤ちゃんを抱っこし始めた。

「うわぁ~、かっわい~♡」

「ほら道華ぁ、お前のお友達だぞぉ。こんにちはーは?」

「う、う~!」

「うふふ。これから仲良くしてねぇ~。」

「うわぁ~、あたしの孫、すっごくかわいいなぁ。な、あんた。」

「父ちゃん、おじいちゃんになったね。」

「天国で見守ってくれよな。」

「うわ~ん!俺、とうとう、おじさんになるのかぁ~!」 

「なーに泣いてんのよ。そんなにうれしいの?」

「いいや!俺、まだ26なのに、おじさんになんて、なりたくないよ~!」

「がくっ。私だって、まだおばさんになりたくないわよっ。」

みんな、赤ちゃんをだっこして、嬉しそう。

「はい、ネルさんっ。赤ちゃん、返しますっ。」

あ、ありがとう。

「う、う~!」

あぁ、起きてしまったかぁ。

「ところで、なににする?」

「へっ?なにが?」

「名前だよ、名前。」

「う~ん、名前ねぇ。……まあ、めんどくさいから、ウルフ一郎2号で、いいんじゃねぇの?」

くおうら!めんどくさがるなぁ!
ていうか、鼻ほじって床に捨てるなっ!

「兄貴、あまりにもマイペースすぎッス。」

もうちょっと、考えろよぉ。

「そうだそうだぁ!ネル様が、困ってるじゃないかぁ!」

「お前、今回からうるさいよ。」

「う~ん、う~ん……あ!」

ウルフ一郎が、ポンッと、右手を左手に置いた。
なにか、思い付いたか!?

「あぁ!この子の名前は……。」

ウルフ一郎は、赤んぼうをだっこした。

「……ガオンだ。」

ガオン……いいなぁ、それ。
オオカミっぽいし。

「だろぉ?」

ウルフ一郎は、ニッと笑った。
あたしはガオンをだっこした。
ガオン……これからよろしくなっ。
お母さんはいつでも、お前の味方だよぉ。

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