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第1章

第三十話 「新婚生活」

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あたし達の新居は、ヴァンパイア界こ森の奥にある一軒家。
ウルフ一郎のおじさんが不動産で、紹介してくれたんだ。
ピンク色の屋根で、木でできたおうちで、小さな階段があって、階段を上がると、その横に、花を植えた植木鉢が左右に一個あって、中に入ると、中も木でできており、木のテーブル、木の床、木の階段、木のギャラリー、木のドアが三つある。
いすと窓とキッチンは普通。
キッチンの近くに木のドアがあるだろ?
あそこはあたしとウルフ一郎の寝室。
そして、上の部屋は、子供が大きくなってから、子供部屋にしようと思ってんだ。
早く産まれてこないかな?赤ちゃん。

「♪あー私の恋はぁ 南のぉ~ 風にのってはしーるわぁ~。」

ウルフ一郎が歌を歌いながら、洗濯物をたたんでいる。
上機嫌だなぁ、あいつ。

「♪ 俺様はぁ~長男だぁ~♪
家族を大事にするしっかり者ぉ~♪
天国の父ちゃんのサングラスかけてぇ~
いっちょ前の男に大変身~♪イェイ!イェイ!イェーイ! 」

ただ、歌いすぎ。
あいつ、オンチだから、窓ガラスがびりびり震えて、今でも割れそう……。

「♪かーえーるーのーうーたーがぁきーこーえーてーくーるーよーウワオーン、ウワオーン、ウワオーン、ウワオーン、ウワウワウワウワウワオンオンオン。」

そこ、ふつー、『グワッ、グワッ、グワッ、グワッ、ゲロゲロゲロゲログワッ、グワッ、グワッ』だろっ。

「♪あっるっこーあっるっこーわたしはぁ元気ぃ~。」

はぁ、うるさくて、耳がキンキンする……。
ヘッドホンでもつけとこ。
ふぅ、やっとこれで静かになる。

「♪しおーさーいーのーメーモリーじゅうななさぁいはぁよーせては返す波のよーおーにぃ激しくぅ~。」

あー!ヘッドホンしても響く!

「お前、うっせぇんだよ!少しは静かにしろっ!」

「いいじゃねぇか!歌を歌うぐらい!今日はこんなに、機嫌がいいんだよぉ!」

は?なんでだ?

「あ、もうすぐ来るぜ。そろそろ、したくしないと。」

もうすぐ来るぅ?誰が?

「あー、急がねぇと!間に合わねぇ!」

洗濯物を持って、あっちこっち行っちゃって。どうしたんだろ。
それに、急に掃除をし始めたし。一体どうしたんだろ。
ピンポーン。
あ、誰か来たぞ。
あたしがドアを開けると、そこには、こぶたが三匹、立っていた。

「こんにちはー。」

「ウルフ一郎、いるだか~?」

ウルフ一郎?

「おぉ!こぶたちゃん達!元気にしてたか?」

「あぁ!」

「ウルフ一郎、久しぶり!」

「あと、結婚、おめでと~!」

「ニヒッ。ありがとう。」

ウルフ一郎は、ニカッと笑った。
ウルフ一郎、こいつら、お前の知り合いなのか?

「あぁ。こいつらは、俺様達オオカミ三兄弟の元ライバルの、こぶた三兄弟だよ。」

「どーもー。こぶた三兄弟の長男、ブタ一郎でーす。」


「同じく次男の、ブタ次郎でーす。」

「同じく三男の、ブタ三郎でーす。」

へぇー。
ところでお前達、元ライバルってことは、過去になにかあったのか?

「あ……あぁ。話せば長くなるが……。」

「くわしくは、『ヴァンパイア♡ラブ』第四十話を、読めばわかるだよっ!」

ふーん。

「よろしくな、こぶた三兄弟。」

あたしが優しくほほえむと、こぶた三兄弟達の顔は、まっかになった。

「や……やべぇ!」

「ウルフ一郎の嫁さん、べっぴんだねぇ!」

そ、そんな!べ、べっぴんだと言われると……。

「そうだろ?うちのネル、桜吹雪のネルだったんだぞ。」

「えっ!?」

「ウルフ一郎の嫁さんが、桜吹雪のネルぅ!?」

こぶた三兄弟が、目をまるくして、驚いている。
あぁ。そうだけど?
そしたら三人は、目をキラキラさせちゃって。

「すんげぇ!」

「ウルフ一郎、すごいだな!」

「あの、桜吹雪のネルと、結婚したなんて!」

「い、いやっ、それほどでもぉ~。」

照れてるし。

「あ、ネル!お前に、見せたいものがあるんだ!」

あたしに見せたいもの?

「こぶたちゃん、お願い!」

「はいだぁ!」

ブタ一郎は、白い布を、ぱっと取った。
ん?これは、木でできた、赤ちゃんのベッド?

「あぁ!そうだ!」

「おら達とウルフ一郎が、ネルさんにナイショで、つくったんだよ!」

あ、あたしに、ナイショで?

「あぁ。」

ウルフ一郎……ありがとう。

「いえ、どういたしまして。あと2カ月。楽しみだな。」

ウルフ一郎は、あたしのお腹をさわった。
うん。
あたしは、こくりとうなずいた。

「さぁ、こぶたちゃん達!ベッドを中に運んで!それから、お菓子を食べていってくれ!」

「はいだぁ!」

四人は早速、ベッドを家の中へ運び始めた。
あと2カ月……がんばるぞぉ~!


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