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第1章

第二十九話 「会いたい」

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                       ー1週間後ー

よし、ネクタイをしめてっと。
これでどーだ、二人とも。

「はい!すっごくお似合いですよ、兄貴!」

えへへ、ありがとう。

「ゔ……ゔぅ……。」

ん?どうした、ウルフ三郎。そんなに感動するのか。俺様が結婚するのが。

「ちげーよ!今すぐネル様と別れろ!俺様……俺様!ネル様がいねぇと、生きていけねぇタイプなんだよぉ!うわ~ん!」

そこか。

「絶対、結婚反対してやる!絶対、結婚反対してやる!絶対、結婚反対してや……。」

はいはい。わかったからだまっとけ。

「ゔぅ、息子の晴れ舞台が見られるなんて、夢にまで見たことか。」

母ちゃんも泣かないで。
恥ずかしいじゃねぇか。

「……バカ!このあたしが、かわいい息子の前で泣くわけないだろーが!」

母ちゃん、指で涙をぬぐっているから、もうバレバレだよ。

「父ちゃんもすっごく喜んでるよ。お前の花婿姿が見れて。」

あ……。

『ウルフ一郎の花婿姿、見たかったなぁ。』

……父ちゃん、夢が叶って、よかったな。

「どうしたんだい。」

あっ、いやっ!なんでもないっ。

「早くネルさんのところへ行きな。ネルさん、首をながーくして、まってるよ。」

「ネルすわ~ん♡今行くからね~♡」

「お前じゃない!ウルフ一郎に言ってんだっ!」

「ガーン。」

じゃあ、行ってくるわ。

「行ってらっしゃい。」

俺様は、ドアを優しく閉めた。

「……そのあとを、俺様が、お~う~……。」

「あんたは行かなくていい。」

「そ、そんな!ネル様ぁ~!」


                                    ☆


うわぁ~。
ネルさん、とても似合ってますよっ。

「そ、そうかなぁ~?」

はいっ!
白いベールに、白のひらひらしたウェディングドレス!それに、化粧までして、とてもかわいいですっ。

「う、う~!」

うふふ、道華もかわいいって、言ってますよ。

「ありがとう、道華。」

ネルさんは、道華の方に向かって、優しくほほえんだ。

「だ、だ~!」

ネルさんは、鏡の方を見た。

「こんなあたしも、ついに結婚するのかぁ。」

「ま、少しは女っぽくなったんじゃない?」

「うるせー!」

ほら、怒ると美しいお顔が、台無しになっちゃう。

「やっかましいわ、ボケーッ!」

ガチャッ。
ん?今、ドアが開いたような……。

「ネル、準備はできたか?」

あ、ウルフ一郎さん!ウェディングスーツが、とっても似合いますっ!

「ウルフ一郎。」

ネルさんは、くるりと振り向いた。

「どう?似合うか?」

ん?ウルフ一郎さん、口をポカーンと開けちゃって。どうしたんだろ。

「あれぇ?部屋、まちがえたかなぁ~?」

「くおうら!出ていこうとするなっ!」

「ごめん、ごめーん。お前のウェディングドレス姿が、あまりにも美しすぎて、わからなかったよーん。」

「ふっ、ありがとう。」

「いよいよだな。」

「あぁ。」

「このヤロー!ネル様といい雰囲気になりやがってぇ!」

あ、ウルフ三郎さん、お久しぶりです。

「こいつ、こっそりあとを着いていきやがったな。」

「……ウルフ一郎。」

ネルさんは、ウルフ一郎さんの方に向かって歩いて、だきついた。

「あわわわわ!」

ウルフ三郎さんはそれを見て、目を点にして、驚いている。

「ありがとな、あたしをこんなにしあわせにしてくれて。」

「……あぁ。俺様、お前と出逢えて、よかったと思うぜ。」



ウルフ一郎さんは、ネルさんをぎゅっとだきしめた。

「……これからも、よろしくな、旦那。」

「こちらこそ。よろしくな、女房。」

二人とも、いい雰囲気になってますっ。

「こんのぉ~!バカ兄貴!毎日、お前んちに通うからなっ!」

「はいはい。だまりましょうねぇ。」

バタン。

「あー!閉めるな!この、バカ兄貴の友達王子!」

「俺とオオカミヤローは、友達なんかじゃねぇ。永遠の恋のライバルなんだよっ。」

あ、そうでしたね。


                                ☆


それから一時間後、結婚式が始まった。

「ネルさん、おめでとうございます!」

「う、う~!」

「おしあわせに~!」

「ネ、ネル様、どうか兄貴と、おしあわせに……うわ~ん!」

「こら、男が泣くんじゃないよっ!」

「ったくぅ、どこまで桜吹雪のネルLOVEなんだ。」

「オオカミヤロー、おめでと~!」

「おしあわせに~!」

そして、ネルさんがウルフ一郎さんのところに着いた。
神父さんが、「ゴホン!」と、せきばらいをした。

「ただいまより、ウルフ一郎、ネルの結婚式ヲ開式イタシマス。」

「ぷっ。」

「こら、笑うなっ。」

「はい、すみません。」

「それでは参ります。ウルフ一郎、アナタは叶わぬ愛ヲ誓いマスカ?」

「はい。誓います。」

「ネル、アナタは叶わぬ愛ヲ誓いマスカ?」

「はい。誓います。」

「それでは、指輪の交換ヲ。」

二人はそれぞれの手袋を外し、薬指に指輪をはめた。

「それでは、誓いのキスヲ。」

ウルフ一郎さんは、ネルさんのベールを外した。

「あ、あー!」

「ネル、愛してるぞ。」

「あたしも。愛してるよ、ウルフ一郎。」

二人は唇を近づけて……。
チュッ。
キスを交わした。

「おめでと~!」

「おめでとうございます、二人とも!」

「おしあわせに~!」

「うわ~ん!こんなシーン、見たくなかったぁ!」

「お前、落ち着け。」

お二人とも、本当に、おめでとうございますっ。


                                    ☆
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