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第1章

第十八話 「愛ってなんだ?」

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それからウルフ一郎さんは、お城へ来なくなってしまった。

「リリアさん、あまり言いすぎたんじゃないですか?いくらネルさんのためでも、それは言いすぎたんじゃな……。」

「うるさいっ!だまってて!」

リリアさんは怒りながら、向こうへ行っちゃった。
リリアさん……。

「よっ、真莉亜。」

「ジュンブライト!」

「リリアのやつ、相変わらず、機嫌が悪いなぁ。」

うん。

「いくら妹のために言い張っても、かばいすぎだと思う。そうだろ?真莉亜。」

うん、そうだね。

「ちょっくら、散歩に行ってくるわ。」

いってらっしゃい。気を付けてね。

「おう。」

ジュンブライトは、ドアを閉めた。


                                       ☆


ふふふふふーん、ふふふふふーん。
さあて、お城に戻るか。

「ひくっ。」

ん?なんか、踏んだような……あ!

「ウ、ウルフ一郎!」

てめえ、ここでなにやってんだ!
しかも裸だし!

「う、うっせぇ~。ひくっ、ひくっ。」

こいつ、酔っ払ってるな。
よいしょっと!こいつをお城へ運ぶかぁ。


                                ☆


ウ、ウルフ一郎さんが、来てるぅ!?

「はい。なんか、ちょっと、いつもより感じがちがってて……。」

「あー!うんめぇ!ったくよぉ、俺様は悪くねぇのに、リリアのやつ、急に怒りやがって!頭がおかしいんじゃねぇの?」

よ、酔っ払ってる……。

「うんうん。それはよーくわかった。リリアもそう思ってるぜ。言いすぎたかなぁ~?って。」

「わ、私はそう思ってないわ!」

「あーもう!ネルなんかあきた!これからはまた、真莉亜ちゃん一筋で生きていくわ。」

「はいはい。ただし、真莉亜は俺の嫁だからなっ。」

「そんなのわかってらぁ。はい、おかわりちょーだいっ。」

「はいはい。」

ジュンブライトは盃に、お酒をそそいだ。

「サンキュー。」

ウルフ一郎さんは、ゴクゴクとお酒を飲んだ。

「あー、うまい!」

「おい、もうそれ以上、飲むのはやめろ。」

「やっだねー。」

「聞いてないしっ!」

ウルフ一郎さん、本っ当に、やめてください。
体に悪いですよ?

「うっさい!」

「昨日から飲んでいるみたいですねぇ。」

確かに。お酒のにおいが、プンプンする!

「ウルフ一郎くん、君の気持ちは、よーくわかった。だからもう一度、やり直してみないかい?私が女の人を紹介してやるよ。」

「やだよ!ひくっ!俺様はなぁ、ひくっ!ネルがいねぇと……ひくっ!生きて……ひくっ!いけねぇんだよぉ……ひくっ!」

「それはわかってます。ですから、飲むのはやめてください。」

「いやっだねーだ!べーろべーろばぁ!」

ルアン様に向かって、なんたる態度!

「!?」

ルアン様、怒りをおさえて。

「さぁ、飲みましょ~う♪」

「まて!」

ジュンブライトが、ウルフ一郎さんのうでを、がっしりつかんだ。

「な、なにすんだよぉ!は、離せ!」

「もうそのくらいにしとけっ!最近、ネルと会ってねぇのか!?」

ウルフ一郎さんは、下を向いた。

「……ああ。会ってねぇ。あれから、連絡も取ってねぇ。」

「そりゃあそうでしょ。私が近づくなって言ったから。」

ちょっとリリアさん、言いすぎたんじゃありません!?

「そうですよ!いくら妹をこんな目に遭わせたくらいで、そんな言い方をする人、いないと思うんですけど!」

「マドレーヌ、いいんだ。」

「えっ、でも……。」

「全部、俺様が悪い。俺様がいけねぇんだ。愛する人をこんな目に遭わせたのは、俺様だ。責任は取る。だからもう、俺様をせめないでくれ。」

ウ、ウルフ一郎さん、どこに行くんですか!?

「真莉亜!止めるなっ!」

で、でも……。

「あいつはなやみをかかえている。だから、ほっとこう。」

……えぇ、そうね。
ウルフ一郎さん、大丈夫かなぁ?
私は、向こうに行くウルフ一郎さんを、だまって見つめた。


                                   ☆


「ねぇあなた、明日はどこに行く?」

「そうだなぁ。遊園地はどう?」

「アハッ、いいわね、それ!」

「うふふふふ。」

「フハハハハ!」

「……ネル……。」


                                ☆


トントントン。

「お嬢様、出て来てください。夕食のお時間ですよ。」

今日は一人で食べる。

「……そうですか……。」

召使いはしゅんとして、去った。
……ウルフ一郎……。

「最近、お嬢様は、元気がありませんねぇ。」

「どうしたんでしょう?」

「気にするな。きっと、男のことだろう。」

「男って、お嬢様の恋人?」

「ああ。」

「たぶん、別れを告げられたんでしょうね。」

「ああ。」

……なぜ、別れなきゃいけなかったんだ?
この子のことでか?
この子は悪くないのに……なぜだ。
なぜ別れなきゃいけなかったのか?
あたし、あたし、ずっと、お前と一緒にいられると思ったのに……。
ポタ、ポタ……。
あ、あれっ?あたし、泣いている。
こ、このくらいのことで、桜吹雪のネルが泣くかよ!
あたしは一生懸命、涙をぬぐった。
……また一からやり直し……か。



                                     ☆
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