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第1章
第十二話 「ヴァンパイアカラオケ大会に出場!」
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パーン、パーン、パーン!
美しい花火が舞い上がった。
「『ただいまより、第二十二回ヴァンパイアカラオケ大会を開催しまーす!』」
「ィェーィ!」
「『司会はわたくし、メンマがお送りしまーす!』」
この人、昼間の情報番組のMCに似ているような……。
「『それでは、最初に、ルールの説明をします!まず、二人の歌い手に、カラオケで対決してもらいます!お互いの歌唱は精密採点DXで採点され、得点が高かった方の勝利です。なお、この大会は、トーナメント戦でおこなわれまーす。そして、優勝した方には、なんと、賞金100万円を贈呈しまーす!さぁ、早速参りましょう!第一回戦は、ツルギさんVSモーリスさんでーす!』」
ジュンブライト達はまだなんだねっ。
絶対、ジュンブライトが勝ちますように!
「やぁみなさん、ごきげんよう。」
「ギラ様!」
「ギラ様、なんでギラ様がカラオケ大会に来てるんですか?」
「妹が出てるんですよ、この大会に。」
えっ!?妹さんが出てるんですか!?
「あぁ。」
「そういえば、ギラ様の妹は、スーパーアイドルでしたねぇ。」
「はい。なので、妹の親衛隊の方と一緒に来ました。」
親衛隊って、ファンの人達のことだよね。
テレビで観たことあるー。
ハチマキつけて、はっぴを着て、スティックライトを2~3本持って、変なおどりをするやつでしょ?
「変なおどりじゃないッス!」
「『オタ芸』っていうんですっ!」
オ……オタ……わからん。
「ハルルちゃんが勝つように、エールを送る!フレー、フレー、ハールールちゃーん!そーれっ!」
「フレッ、フレッ、ハルルちゃん!」
「負けるな、負けるな、ハルルちゃん!」
「負けるな、負けるな、ハルルちゃん!」
「ワー!」
な、なんという、ファン達の熱い応援……。
「お義兄さん!」
「なんですか?」
「もし、ハルルちゃんが勝ったら……。」
「ハルルちゃんを、嫁にくださいっ!」
え~!?
「アハハハハ。おもしろいですねぇ。いいですよ。」
「イェーイ!」
ギラ様、どんだけマイペースなんすか!
「『第二回戦は、ハルルさんVSアクアさんでーす!』」
「フー!」
え~!?アクアさんも出てるのぉ~!?
「『いやぁ、ハルルさん、まさかこんな舞台に立つとはねぇ。この大会では初めてです。』」
「『えへへへへ。』」
「『えへへへへじゃねぇーよ!ハルル!俺と決着をつけてやろうじゃねぇか!』」
ア、アクアさんのキャラが変わってる!
「『いいでしょう。もし私が勝ったら、今度こそ、「お義姉さん」』って呼ばせていただきますわ!」
『キィー!なめやがってぇ~!』」
ふ、二人とも、目線が熱い……。
「ハルルちゃ~ん!がんばってぇ~!」
そして、結果は……。
「『ハルルさん96点!ハルルさんの勝利ですっ!』」
「『やったぁ~!』」
「バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ!うわー!」
さすがはアイドル。歌上手すぎです。
「そ、そんなぁ~。」
アクアさんは、腰を落としている。
すると、ハルルさんが、手をさしのべた。
「『ほら、立たないと、前に進めませんよ、お義姉さん。』」
「『う、うるさい!この勝負、私が勝ったことにしてね!』」
「『いや、できないんですけど……。』」
「『さぁ、熱くなってきましたぁ!第三回戦は、ヒアン様VS……おお!これはこの大会にして初!おとぎの国からやって来た男、ウルフ一郎さんですっ!』」
あっ、ウルフ一郎さんだ!
ウルフ一郎さ~ん、がんばってぇ~!
「『OK~♡君のためにがんばるよ~ん♡』」
「『あ、あの、ウルフ一郎さん。』」
「『なんだよ。』」
「『ひぃぃぃぃ!こ、この大会にして、おとぎの国の出場者は初めてですけど、今の心境は?』」
「『ん?ぜってぇおとぎの国初、優勝者になるぜ!』」
「『おぉ、熱くなってますねぇ。もし、100万円もらったら、なにをします?』」
「『な、なにをするって言ったって……。』」
ウルフ一郎さんは、ネルさんの方を見た。
「ウルフ一郎……。」
「ネル……。」
「『あ、あの、ウルフ一郎さん?』」
「『なんだよ!』」
「『ひぃぃぃぃ!ひゃ、100万円もらったら、なにをしますか?』」
「『べ……べ……。』」
「『べ?』」
「『弁当箱を買おうと思います!超~高級の!』」
「あだー!」
私達は、お笑い劇のようにコケた。
「うふふふふ。」
「ネル、どうしたの?お腹をさわって。」
「い、いやっ、なんでもないっ。」
「ふーん。」
「『さて、続いては……ヒ、ヒアン様です。』」
「『なんだ。私がこの大会に出るのに、不満があるのか?』」
「『い、いやっ、ないですぅ~!アハハハハ!』」
なーんか怪しーい。
「『そうか。ならいい。』」
「『で、では、もし100万円もらったら、なにをしますか?』」
「『ん?そうだなぁ~。人間界でシャンハイという国があるらしい。私、一度でいいから、その100万円を使って、シャンハイに旅行したい。一人で。』」
「一人かいっ!」
ジュンブライトがステージの裏でつっこんだ。
「『ふーん。まさかあのロンゲヤローの親父さんが対戦相手とはなぁ。まぁ、俺様が勝つけどな。』」
「『おぉ!ウルフ一郎さん、余裕ですね!それでは参りましょう!ウルフ一郎さんで、『WHITE BREATH』』。」
そのとたん、音楽が流れ始めた。
「『♪凍えそうな季節に君は愛をどーこー云うの?そんなんどーだっていいから、冬のせいにして暖め合おう』」
ウルフ一郎さん、歌うま~い!
「『♪TVを消し忘れ孤独さえもド忘れで乾燥した時間にノドを痛めてる 十二時解禁で見られる明日のビジョンは大事なトコに来てモザイクがかかる ウカツな僕のせつなさを中に出させて 凍えそうな季節に君は愛をどーこー云うの?そんなんどーだっていいから冬のせいにして暖め合おう』」
パチパチパチパチ。
「『あー、声がかれたぁ~。』」
「『いやぁ、すばらしかったですぅ、ウルフ一郎さん!』」
「『真莉亜ちゅわ~ん♡俺様の歌声、どーだった~ん?』」
「『って、聞いてますかっ。』」
「『ん?ま、100点ぐらいは行ってると思うけど。』」
「『出ました!ウルフ一郎さんの余裕ぶり!では、採点していただきましょう!ウルフ一郎さんの点数は!』」
デデデデデデデデデン、ジャン!
スクリーンに点数がうつった。
「『96点!』」
「『やったぜぇ~!』」
ビクッ。
「うふふふふ。」
「ネル、お腹が痛いの?」
「うるせぇ!」
(この調子で、ベビー用品を買える!)
「『そ、それでは次は、ヒアン様で『Let It Go~ありのままで~』』。」
「みんな、耳栓の用意を!」
「はいっ!」
みんな、なにやってるんだろ?
「『ふりーはじめーたーゆーきーはーあっしあっとをぉけーしてぇ~。』」
うわぁ!な、なに?これ!
まさかヒアン様、オンチなの!?
「『こっのまっまーじゃーだーめなんだーとぉ~。』」
ク、クリスさんの時より、もっとひどい……。
「『なやんでたそれももーうやーめーよう ありの~ままの~すっがった見っせるのっよ~ ありの~まっまっの~じーぶーんーきなぁるぅのぉ~ なーにもぉ~こわくない~かーぜーよーふーけーすこーしもさっむっくっないっわ』」
ふぅ、やっと終わったぁ~。
「こいつの父ちゃん、ひっでぇオンチだなぁ。」
「『し、心境はいかがですか?』」
「『うーむ、ストレス解消ができた、かなっ?』」
なんという余裕っぷり!
「そ、それでは、ヒアン様の点数は!」
デデデデデデデデデン、ジャン!
「『9点!よって、3回戦は、ウルフ一郎さんの勝ちです!』」
「『そ、そんなぁ~。がくし。』」
あらら。ヒアン様、すっごく落ちこんでる……。
「『続いて第四回戦は、ギロさん!』」
「『アハハハハ!』」
ギロさんは、にっこりと笑いながら、みんなに手を振っている。
「『VS……ナツメさんでぇ~す!』」
「って、相手がすごすぎですけどー!」
「『さて、今大会初出場のギロさん、意気込みをどうぞ!』」
「『ねぇ、対戦相手は?』」
「『え……ナツメさんですけどぉ……。』」
「『え……うわぁぁぁぁぁ!先輩の永遠のライバルの人だぁ~!』」
気付くのおそ!
「てか驚きすぎ!」
「『え、えっとぉ、まあ、とにかく頑張ります!多分。』」
「多分かいっ!」
「『それではナツメさん、今の気持ちを一言でどうぞ!』」
「『フォッ、フォッ、フォッ、フォッ、フォッ。しょせん、若者には負けんわい。』」
「『おぉ!なんという余裕っぷり!さすがはカラオケの神様!気合い十分ですっ!』」
「『か、帰ります。』」
「『ちょっと!帰らないでくださいっ!ギロさん!』」
「おい!なにやってんだ!早くステージに戻れ!」
「いやですぅ~!あのハゲ頭のおじいさんと、対決したくないですぅ~!ウルフ一郎とデュエット、したい。」
「なに言ってんだ、ボケ。」
「とりあえず、ステージに戻れ!まだ負けと決まったわけじゃないだろ!」
「そうだ!俺様、ここでお前を見守っとくから!」
「ウルフ一郎……うわ~ん!」
「って、ちょっと!だきつくなっ!お前はホモかっ!」
「じゃあ、俺、頑張る!」
「おう!頑張れ、ギロ!」
「あのクソじじいをやっつけろ!」
「はい!」
ギロさんはら再びステージに上がった。
「『やい、ハゲ頭のじいさん!優勝は、俺がもらう!』」
「『フォフォフォフォフォ。さすがは若者じゃのう。じゃが、わしにはそんな簡単には勝てないよ。』」
「『さぁ、盛り上がって参りましたぁ!早速参りましょう!ギロさんで『夜桜お七』。』」
って、やっぱり演歌なのね。
「『赤い鼻緒がぷつりと切れた すげてくれる手ありゃしない 置いてけ堀をけとばして駆けだす指に血がにじむ さくらさくらいつまで待っても来ぬ人と死んだ人とはおなじこと さくらさくらはな吹雪 燃えて燃やした肌より白い花 浴びてわたしは夜桜お七 さくらさくら弥生の空にさくらさくらはな吹雪』」
パチパチパチパチ。
これ、90点以上、ねらえるんじゃない!?
「『さぁ、ギロさんの点数は!』」
デデデデデデデデデン、ジャン!
「『96点!』」
「『やったぁ~!』」
ギロさんは大喜び。
「『せんぱ~い、やりましたよぉ~!』」
「おう!この調子で、クソじじいをぶっ飛ばせ!」
「『はいっ!』」
ギロさんは笑顔でうなずいた。
「『それではいよいよみなさんおまちかねのあの人が歌います!ナツメさんで、『津軽海峡冬景色』』。」
ナツメさん、どれだけ歌が上手いんだろ。
ま、しょせん、演歌ならギロさんに勝つわけ……。
「『♪上野発の夜行列車降りた時から青森駅は雪の中』」
ちょ……超~うまいんですけど~!
ギロさん、口をポカーンと開けているし!
こ、こりゃあ、負けたね。
「『♪連絡船に乗り 凍えそうな鴎見つめ泣いていましたああ 津軽海峡冬景色』」
パチパチパチパチ。
「いいぞ、ナツメさん!」
「この調子でがんばれー!」
私、すっごい鳥肌立った……。
「『いやあ、ナツメさんの歌声は相変わらず、すばらしいですぅ~。』」
「『フォフォフォフォフォ。この『ヴァンパイア紅白歌合戦』に出場した、元歌手には、かなわんわい。』」
えっ!?ナツメさん、歌手だったの!?
「ウィキペディアに書いてあるわ!ナツメさんは、昭和9年から昭和50年まで活躍した、スターだったのよ!」
ジュンブライト、こんなにすごい人と対決してたんだね、ずっと。
「は?俺、初めて聞いたぞ。」
あだー!
「『昔は、人間界に行って、美人歌手とデュエットを組んだわい。』」
えー!?
「『名前は忘れたけど、とてもかわいかったなぁ~。』」
のん気に思い出を語るなっ!
「『ナツメさん、今はそういう話をしている場合じゃありません!』」
「『あと、役者デビューしてたんじゃよ。『ヴァンパイア侍』』。あの超大物俳優とも仲良くなったなぁ。」
「『話を聞いてくださいっ!』」
「『あ、すまん。』」
「『それでは行きましょう!ナツメさんの点数は!』」
デデデデデデデデデン、ジャン!
「『な、なんと100点~!』」
え~!?
「そ、そんなバカな!」
「そんな簡単に100点を取れる人なんていないわ!」
「ズー。そりゃあそうですよ。だって、ナツメ様は、元歌手ですから。」
って、なにのんきにお茶なんか飲んでるの!
「『そ、そんなぁ~。』」
ギロさんは腰を落としちゃった。
「『よって、第四回戦は、ナツメさんの勝ちです!』」
「『フォフォフォフォフォ。』」
ナツメさんは、ジュンブライトの方を振り返った。
「『ジュンブライト様、今年もわしに勝てそうにないなぁ。』」
「ちっら必ずらお前に勝ってやるぜ、ナツメ!」
☆
美しい花火が舞い上がった。
「『ただいまより、第二十二回ヴァンパイアカラオケ大会を開催しまーす!』」
「ィェーィ!」
「『司会はわたくし、メンマがお送りしまーす!』」
この人、昼間の情報番組のMCに似ているような……。
「『それでは、最初に、ルールの説明をします!まず、二人の歌い手に、カラオケで対決してもらいます!お互いの歌唱は精密採点DXで採点され、得点が高かった方の勝利です。なお、この大会は、トーナメント戦でおこなわれまーす。そして、優勝した方には、なんと、賞金100万円を贈呈しまーす!さぁ、早速参りましょう!第一回戦は、ツルギさんVSモーリスさんでーす!』」
ジュンブライト達はまだなんだねっ。
絶対、ジュンブライトが勝ちますように!
「やぁみなさん、ごきげんよう。」
「ギラ様!」
「ギラ様、なんでギラ様がカラオケ大会に来てるんですか?」
「妹が出てるんですよ、この大会に。」
えっ!?妹さんが出てるんですか!?
「あぁ。」
「そういえば、ギラ様の妹は、スーパーアイドルでしたねぇ。」
「はい。なので、妹の親衛隊の方と一緒に来ました。」
親衛隊って、ファンの人達のことだよね。
テレビで観たことあるー。
ハチマキつけて、はっぴを着て、スティックライトを2~3本持って、変なおどりをするやつでしょ?
「変なおどりじゃないッス!」
「『オタ芸』っていうんですっ!」
オ……オタ……わからん。
「ハルルちゃんが勝つように、エールを送る!フレー、フレー、ハールールちゃーん!そーれっ!」
「フレッ、フレッ、ハルルちゃん!」
「負けるな、負けるな、ハルルちゃん!」
「負けるな、負けるな、ハルルちゃん!」
「ワー!」
な、なんという、ファン達の熱い応援……。
「お義兄さん!」
「なんですか?」
「もし、ハルルちゃんが勝ったら……。」
「ハルルちゃんを、嫁にくださいっ!」
え~!?
「アハハハハ。おもしろいですねぇ。いいですよ。」
「イェーイ!」
ギラ様、どんだけマイペースなんすか!
「『第二回戦は、ハルルさんVSアクアさんでーす!』」
「フー!」
え~!?アクアさんも出てるのぉ~!?
「『いやぁ、ハルルさん、まさかこんな舞台に立つとはねぇ。この大会では初めてです。』」
「『えへへへへ。』」
「『えへへへへじゃねぇーよ!ハルル!俺と決着をつけてやろうじゃねぇか!』」
ア、アクアさんのキャラが変わってる!
「『いいでしょう。もし私が勝ったら、今度こそ、「お義姉さん」』って呼ばせていただきますわ!」
『キィー!なめやがってぇ~!』」
ふ、二人とも、目線が熱い……。
「ハルルちゃ~ん!がんばってぇ~!」
そして、結果は……。
「『ハルルさん96点!ハルルさんの勝利ですっ!』」
「『やったぁ~!』」
「バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ!うわー!」
さすがはアイドル。歌上手すぎです。
「そ、そんなぁ~。」
アクアさんは、腰を落としている。
すると、ハルルさんが、手をさしのべた。
「『ほら、立たないと、前に進めませんよ、お義姉さん。』」
「『う、うるさい!この勝負、私が勝ったことにしてね!』」
「『いや、できないんですけど……。』」
「『さぁ、熱くなってきましたぁ!第三回戦は、ヒアン様VS……おお!これはこの大会にして初!おとぎの国からやって来た男、ウルフ一郎さんですっ!』」
あっ、ウルフ一郎さんだ!
ウルフ一郎さ~ん、がんばってぇ~!
「『OK~♡君のためにがんばるよ~ん♡』」
「『あ、あの、ウルフ一郎さん。』」
「『なんだよ。』」
「『ひぃぃぃぃ!こ、この大会にして、おとぎの国の出場者は初めてですけど、今の心境は?』」
「『ん?ぜってぇおとぎの国初、優勝者になるぜ!』」
「『おぉ、熱くなってますねぇ。もし、100万円もらったら、なにをします?』」
「『な、なにをするって言ったって……。』」
ウルフ一郎さんは、ネルさんの方を見た。
「ウルフ一郎……。」
「ネル……。」
「『あ、あの、ウルフ一郎さん?』」
「『なんだよ!』」
「『ひぃぃぃぃ!ひゃ、100万円もらったら、なにをしますか?』」
「『べ……べ……。』」
「『べ?』」
「『弁当箱を買おうと思います!超~高級の!』」
「あだー!」
私達は、お笑い劇のようにコケた。
「うふふふふ。」
「ネル、どうしたの?お腹をさわって。」
「い、いやっ、なんでもないっ。」
「ふーん。」
「『さて、続いては……ヒ、ヒアン様です。』」
「『なんだ。私がこの大会に出るのに、不満があるのか?』」
「『い、いやっ、ないですぅ~!アハハハハ!』」
なーんか怪しーい。
「『そうか。ならいい。』」
「『で、では、もし100万円もらったら、なにをしますか?』」
「『ん?そうだなぁ~。人間界でシャンハイという国があるらしい。私、一度でいいから、その100万円を使って、シャンハイに旅行したい。一人で。』」
「一人かいっ!」
ジュンブライトがステージの裏でつっこんだ。
「『ふーん。まさかあのロンゲヤローの親父さんが対戦相手とはなぁ。まぁ、俺様が勝つけどな。』」
「『おぉ!ウルフ一郎さん、余裕ですね!それでは参りましょう!ウルフ一郎さんで、『WHITE BREATH』』。」
そのとたん、音楽が流れ始めた。
「『♪凍えそうな季節に君は愛をどーこー云うの?そんなんどーだっていいから、冬のせいにして暖め合おう』」
ウルフ一郎さん、歌うま~い!
「『♪TVを消し忘れ孤独さえもド忘れで乾燥した時間にノドを痛めてる 十二時解禁で見られる明日のビジョンは大事なトコに来てモザイクがかかる ウカツな僕のせつなさを中に出させて 凍えそうな季節に君は愛をどーこー云うの?そんなんどーだっていいから冬のせいにして暖め合おう』」
パチパチパチパチ。
「『あー、声がかれたぁ~。』」
「『いやぁ、すばらしかったですぅ、ウルフ一郎さん!』」
「『真莉亜ちゅわ~ん♡俺様の歌声、どーだった~ん?』」
「『って、聞いてますかっ。』」
「『ん?ま、100点ぐらいは行ってると思うけど。』」
「『出ました!ウルフ一郎さんの余裕ぶり!では、採点していただきましょう!ウルフ一郎さんの点数は!』」
デデデデデデデデデン、ジャン!
スクリーンに点数がうつった。
「『96点!』」
「『やったぜぇ~!』」
ビクッ。
「うふふふふ。」
「ネル、お腹が痛いの?」
「うるせぇ!」
(この調子で、ベビー用品を買える!)
「『そ、それでは次は、ヒアン様で『Let It Go~ありのままで~』』。」
「みんな、耳栓の用意を!」
「はいっ!」
みんな、なにやってるんだろ?
「『ふりーはじめーたーゆーきーはーあっしあっとをぉけーしてぇ~。』」
うわぁ!な、なに?これ!
まさかヒアン様、オンチなの!?
「『こっのまっまーじゃーだーめなんだーとぉ~。』」
ク、クリスさんの時より、もっとひどい……。
「『なやんでたそれももーうやーめーよう ありの~ままの~すっがった見っせるのっよ~ ありの~まっまっの~じーぶーんーきなぁるぅのぉ~ なーにもぉ~こわくない~かーぜーよーふーけーすこーしもさっむっくっないっわ』」
ふぅ、やっと終わったぁ~。
「こいつの父ちゃん、ひっでぇオンチだなぁ。」
「『し、心境はいかがですか?』」
「『うーむ、ストレス解消ができた、かなっ?』」
なんという余裕っぷり!
「そ、それでは、ヒアン様の点数は!」
デデデデデデデデデン、ジャン!
「『9点!よって、3回戦は、ウルフ一郎さんの勝ちです!』」
「『そ、そんなぁ~。がくし。』」
あらら。ヒアン様、すっごく落ちこんでる……。
「『続いて第四回戦は、ギロさん!』」
「『アハハハハ!』」
ギロさんは、にっこりと笑いながら、みんなに手を振っている。
「『VS……ナツメさんでぇ~す!』」
「って、相手がすごすぎですけどー!」
「『さて、今大会初出場のギロさん、意気込みをどうぞ!』」
「『ねぇ、対戦相手は?』」
「『え……ナツメさんですけどぉ……。』」
「『え……うわぁぁぁぁぁ!先輩の永遠のライバルの人だぁ~!』」
気付くのおそ!
「てか驚きすぎ!」
「『え、えっとぉ、まあ、とにかく頑張ります!多分。』」
「多分かいっ!」
「『それではナツメさん、今の気持ちを一言でどうぞ!』」
「『フォッ、フォッ、フォッ、フォッ、フォッ。しょせん、若者には負けんわい。』」
「『おぉ!なんという余裕っぷり!さすがはカラオケの神様!気合い十分ですっ!』」
「『か、帰ります。』」
「『ちょっと!帰らないでくださいっ!ギロさん!』」
「おい!なにやってんだ!早くステージに戻れ!」
「いやですぅ~!あのハゲ頭のおじいさんと、対決したくないですぅ~!ウルフ一郎とデュエット、したい。」
「なに言ってんだ、ボケ。」
「とりあえず、ステージに戻れ!まだ負けと決まったわけじゃないだろ!」
「そうだ!俺様、ここでお前を見守っとくから!」
「ウルフ一郎……うわ~ん!」
「って、ちょっと!だきつくなっ!お前はホモかっ!」
「じゃあ、俺、頑張る!」
「おう!頑張れ、ギロ!」
「あのクソじじいをやっつけろ!」
「はい!」
ギロさんはら再びステージに上がった。
「『やい、ハゲ頭のじいさん!優勝は、俺がもらう!』」
「『フォフォフォフォフォ。さすがは若者じゃのう。じゃが、わしにはそんな簡単には勝てないよ。』」
「『さぁ、盛り上がって参りましたぁ!早速参りましょう!ギロさんで『夜桜お七』。』」
って、やっぱり演歌なのね。
「『赤い鼻緒がぷつりと切れた すげてくれる手ありゃしない 置いてけ堀をけとばして駆けだす指に血がにじむ さくらさくらいつまで待っても来ぬ人と死んだ人とはおなじこと さくらさくらはな吹雪 燃えて燃やした肌より白い花 浴びてわたしは夜桜お七 さくらさくら弥生の空にさくらさくらはな吹雪』」
パチパチパチパチ。
これ、90点以上、ねらえるんじゃない!?
「『さぁ、ギロさんの点数は!』」
デデデデデデデデデン、ジャン!
「『96点!』」
「『やったぁ~!』」
ギロさんは大喜び。
「『せんぱ~い、やりましたよぉ~!』」
「おう!この調子で、クソじじいをぶっ飛ばせ!」
「『はいっ!』」
ギロさんは笑顔でうなずいた。
「『それではいよいよみなさんおまちかねのあの人が歌います!ナツメさんで、『津軽海峡冬景色』』。」
ナツメさん、どれだけ歌が上手いんだろ。
ま、しょせん、演歌ならギロさんに勝つわけ……。
「『♪上野発の夜行列車降りた時から青森駅は雪の中』」
ちょ……超~うまいんですけど~!
ギロさん、口をポカーンと開けているし!
こ、こりゃあ、負けたね。
「『♪連絡船に乗り 凍えそうな鴎見つめ泣いていましたああ 津軽海峡冬景色』」
パチパチパチパチ。
「いいぞ、ナツメさん!」
「この調子でがんばれー!」
私、すっごい鳥肌立った……。
「『いやあ、ナツメさんの歌声は相変わらず、すばらしいですぅ~。』」
「『フォフォフォフォフォ。この『ヴァンパイア紅白歌合戦』に出場した、元歌手には、かなわんわい。』」
えっ!?ナツメさん、歌手だったの!?
「ウィキペディアに書いてあるわ!ナツメさんは、昭和9年から昭和50年まで活躍した、スターだったのよ!」
ジュンブライト、こんなにすごい人と対決してたんだね、ずっと。
「は?俺、初めて聞いたぞ。」
あだー!
「『昔は、人間界に行って、美人歌手とデュエットを組んだわい。』」
えー!?
「『名前は忘れたけど、とてもかわいかったなぁ~。』」
のん気に思い出を語るなっ!
「『ナツメさん、今はそういう話をしている場合じゃありません!』」
「『あと、役者デビューしてたんじゃよ。『ヴァンパイア侍』』。あの超大物俳優とも仲良くなったなぁ。」
「『話を聞いてくださいっ!』」
「『あ、すまん。』」
「『それでは行きましょう!ナツメさんの点数は!』」
デデデデデデデデデン、ジャン!
「『な、なんと100点~!』」
え~!?
「そ、そんなバカな!」
「そんな簡単に100点を取れる人なんていないわ!」
「ズー。そりゃあそうですよ。だって、ナツメ様は、元歌手ですから。」
って、なにのんきにお茶なんか飲んでるの!
「『そ、そんなぁ~。』」
ギロさんは腰を落としちゃった。
「『よって、第四回戦は、ナツメさんの勝ちです!』」
「『フォフォフォフォフォ。』」
ナツメさんは、ジュンブライトの方を振り返った。
「『ジュンブライト様、今年もわしに勝てそうにないなぁ。』」
「ちっら必ずらお前に勝ってやるぜ、ナツメ!」
☆
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