ヴァンパイア♡ラブ

田口夏乃子

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第四十六話 「真莉亜、脱走する!」

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もう、夜明けちゃった。
一体、クリスさんはどこに連れて行く気なんだろ。

「♪ルンルンルーン。」

楽しそうに、元気よく歩きながら、クリスさんは、鼻歌を歌っている。
と、突然、クリスさんが止まった。

「ここだよ。」

前を見ると、丸太でできた家で、家のまわりには、きれいなチューリップやバラが咲いていて、えんとつから白いけむりの輪が、もくもくと出てくる。
その、家のドアを、クリスさんが笑顔でガチャっと開けた。

「ただいまぁ。ねぇ、あんたが知っている人を、連れて来たよぉ。」

お、おじゃましまーす。

「真莉亜ちゃん!?」

キッチンの方から、真っ黒のエプロンみたいな服を着ていて、髪型は、京花と一緒で、白髪のおばあさんが、驚いた顔をして、立っている。
このおばあさん、もしかして・・・・・・。

「ルーさん!?」

ルーさんは、「やっぱり!」と言って、私のところまで走った。

「久しぶりだねぇ。もう、会えないかと思ったよぉ。」

私もです。こんな形で会うなんて、とても光栄です。
ガチャ。
え?今、ドアが勝手に、開かなかった?
も・・・・・・もしかして・・・・・・。

「・・・・・・ただいまぁ。」

ギャャャャャャア!
私は急いで、ルーさんの後ろに隠れた。

「どうしたの?真莉亜ちゃん。」

い、今、「・・・・・・ただいまぁ。」っていう声が、聞こえたんですぅ!
しかも、超~不気味な声で!

「真莉亜さん、ごめんなさい。つい、やってしまうくせなんです・・・・・・。」

ひぃぃぃぃぃぃ!
二人の女の子の下半身が、す、透けてるぅ!

「あたしだよ、真莉亜。チーナだよ。覚えとらんと?」

その、長崎弁は・・・・・・。

「千代さん!?」

「うん。」

久しぶりです~!

「真莉亜さん、久しぶりです!元気にしていましたか?」

ゆり子ちゃん!
うわぁ、懐かしの人に会えるなんて、とてもうれしいです!

「真莉亜はかわいかねぇ~。」

な、なんでですか?

「だって、あたしの名前を生きていたころの名前で呼んでるもん。チーナでよかとに。」

そ、そうなんですか・・・・・・。

「久しぶりに会うなんて、思ってもなかったよ。」

私もですっ。

「よかったね!また会えて!」

クリスさんが、私の方に向かって、ウインクをした。
はいっ。もう、涙が出るぐらい、感動しますっ。
グー。
あ・・・・・・。
私、そういえば、お城から脱走してから、なにも食べてない・・・・・・。

「お城から脱走したぁ!?」

「一体、どういうこと?」

「なにがあったと!?」

「まぁまぁ、落ち着いて、あとであたしが説明するから。ルーさん、真莉亜のために、すっごいおいしい料理をつくって!」

「はいはい。わかったから、みんなが手伝ってくれると、助かるねぇ。」

と、ルーさんは私達の方に向かって、にこっと笑った。





「へぇー。そんなことがあったとね。知らんやった。」

私の目には、チーナさんとゆり子ちゃんの姿は見えるけど、コップが浮いていて、こわすぎます。

「人間界も、ほろぼされたんだね。」

ゆり子ちゃん、人間界もって、どういうこと?

「・・・・・・実は、あたし達の村も、ほろぼされたんだ・・・・・・。」

えぇ!?
じゃあ、人間界だけじゃなくて、猫族と、幽霊族の村も、ほろぼされたってこと!?

「うん。」

三人が、とても悲しそうな顔で、うなずいた。
さっきまで、笑顔だったクリスさんが、急に元気がなくなっている。

「に、二年前、あ、あたしのふるさと、猫族が、ほろぼされたんだ・・・・・・。」

クリスさんの目には、涙があふれている。
二年前にほろぼされたの!?

「幽霊族は、あたし達が帰って来た時に、ほろぼされたと。」

そう。

「んじゃあ、なんで隠してたの?言ったら、私達と一緒に、お妃をたおすことができたのに。」

そうしたらクリスさん、下を向いちゃった。

「言おうとしても、言えなかったんだもん・・・・・・。だってあたし、ジュンブライト様のことしか考えてなかったから。あたしのバカバカバカァ!」

自分をせめるのはよくないですよ、クリスさん。

「え?」

私、実は人見知りだったんです。友達と一緒に遊べなくて、仲良しだった子が、私とよく遊んでくれました。けれど、東京に転校することになって、友達ができなくて、自分をせめていました。
けれど、ジュンブライトと出会って、人見知りをこうふくするようになりました。
自分をせめたら、幸運は、やって来ないと、初めてそう思いました。

「自分をせめたら、幸運は、やって来ない?」

そう。
クリスさんは、涙をふきながら、口を動かした。

「あんた、いいことばっかり言うんじゃないよ。感動するんじゃないの。」

クリスさん、もしお妃をたおしたら、一緒に、人間界へ帰りませんか?

「人間界に?でも、猫族はどうするの?あたしがいなくなったら、みんな、悲しむし。」

大丈夫。
私がノア様に、人間界と、猫族と、幽霊族を復活して欲しいって言うから。

「う、うん。」

「さぁ、元気を出して。あんたが大好きな魚の丸焼きをつくったよ。しかも100個、つくったんだからね!」

「ひゃっ、100個~!?」

クリスさん、猫顔にならないでください!

「ニャハハハハーン♡おいしそ~♡」

よだれ、出てるよ!しかも大量に!

「はい、めしあがれ。」

ルーさんが、魚の丸焼きを出すと、クリスさんはボンっと、黒猫になって、魚の丸焼きをむしゃむしゃと、食べ始めた。
トントン、トントン。

「誰なんだろ。こんな早い朝に。」

ボン!

「あたしが出る~!」

一体、誰なんだろ。
ガチャ。

「あ、ジュンブライト様ぁ~♡お久しぶりです~♡」

ジュンブライト?

「おい!お前に会いに来たんじゃねぇ!真莉亜を迎えに来ただけだ!」

本当だ!その声は、ジュンブライトだ!

「真莉亜、迎えに来たぜ。」

その笑顔、やっぱりジュンブライトだ・・・・・・。

「久しぶりだねぇ、ジュンブライトくん。ルクトは・・・・・・。」

ドッ!

「うわぁ!」

ルーさん!

「大丈夫ですか?」

ゆり子ちゃんとチーナさんが、たおれているルーさんのところに駆けつけた。

「大丈夫だよ。」

「おい!なにもしていない人間ば、吹き飛ばすなんて、ゆるさん!」

「ジュンブライト様?」

ジュンブライト、ひどいよ。こんなことをするなんて。

「ひどい?全然、ひどくないぜ。」

「反省しとらんと!?この野郎!」

「チーナちゃん、落ち着いて!」

ゆり子ちゃんが、ジュンブライトをなぐろうとしているチーナさんを、止めた。

「・・・・・・あなた、私の知っている、ジュンブライトじゃない。」

「はぁ?バカ言え。俺は正真正銘、ジュンブライトだ。」

私の知っているジュンブライトは、人に暴力をふらない、優しいジュンブライトよ!
あなたは誰?正体を教えて!

「ふっ、ばれたようね。エストラ・ノカーレ!」

強い風が吹き始めて、ジュンブライトの姿が変わった。
強い風が吹き終わった後、ツインテールで、ニヤニヤ笑っている、真っ黒の服を着た、女の子が立っていた。
あ!

「クレイン!」

「クレインって、誰?」

お妃の娘だよ。

「えぇ!?」

「春間真莉亜、あなたを迎えに来たわよ。」

まさか、私が逃げたの、ばれたの!?

「そう。まんまと逃げやがって!」

クレインの目が、急にキッとなった。

「春間真莉亜!ここであなたを殺してやるわ!」

えぇ!?

「やめてください!」

「うるさい!この、幽霊族の幽霊め!いい?ここで春間真莉亜を殺すから、春間真莉亜が死ぬ瞬間を、黙って見なさい。」

クレイン、私と戦おう。

「真莉亜、本気なの!?」

うん。ちょっと、こわいけどね。

「いいわ。あなたと戦ってあげる。これは、女の子同士の戦いってわけね。うふふふふふ。」

さぁ、始めましょう!

「えぇ。果たして、どっちが死ぬかね。うふふふふふ。」

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