ヴァンパイア♡ラブ

田口夏乃子

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第三十九話 「えぇ〜!?マドレーヌちゃんが、恋をした!?」

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バレンタインデーまであと1日。
私は家で、バレンタインデーチョコをつくっています。
もちろん、ハート型のチョコのカップケーキですっ。

「真莉亜ー、円花ちゃんよぉ。」

え?マドレーヌちゃん?
なんで、マドレーヌちゃんが、うちに?
もしかして、グレスくんのことを、あきらめるって、言い出すんじゃないだろうね。
胸をドキドキさせながら、私は玄関に行った。
玄関に行くと・・・・・・。
え?マドレーヌちゃんが泣いている!
一体、どうしたんだろ。

「マドレーヌちゃん、どうしたの?」

うわぁ。マドレーヌちゃんはむらさき色の涙を、目でためているよぉ。
しかも、歯を食いしばっているし。

「ま、真莉亜お、お姉様・・・・・・。」

マドレーヌちゃんの声が、いつもと違う。
だって、ふるえているもん。足も、肩も、体中全部。
おまけに、かわいいかわいい顔は、鼻水で台無しになっている。

「なにかあったの?正直に、話してごらん。」

私がそう言うと、マドレーヌちゃんはいきなり、私にぎゅっと、だきついてきた。
ど、どうしたの?

「あ、あ、明日、転校するって!」

えぇ!?ど、どこに!?

「・・・・・・アメリカにです・・・・・・。理由は、お父様のお仕事の都合らしく・・・・・・。もう、一生、会えないんですぅ!うわーん!」

ちょ、ちょっとマドレーヌちゃん、家の中で泣かないでぇ~。

「どうしたの?円花ちゃん。」

あ、お母さん。ちょっと、円花ちゃんと、部屋で一緒に、話すから。

「あら、そう。じゃあ、円花ちゃん、おやつをもっていくから、真莉亜と一緒に、ゆっくりしといてね。」

「は、はい。」

マドレーヌちゃんが泣きやんで、私の前を歩いて、階段にのぼって、私の部屋に入った。
円花ちゃん、早いよぉ。
私が、マドレーヌちゃんの後をついて、部屋に入ろうとすると。

「真莉亜。」

「なに?」

「チョコレートケーキ、どうするの?こげちゃうわよ。」

あ。

「焼いたら、ふくろに入れといてぇ。明日、やるから。」

「誰に?」

「好きな人。」

「え!?」

お母さんが、目をぱちくりさせながら驚いて、それから、急に泣き始めた。
ど、どうしたの?

「む、娘に好きな人ができたなんて、成長の証だわぁ!」

あのう、娘に好きな人ができたぐらいで、泣く親は、いませんけど。

「とりあえず、部屋に行きなさい。円花ちゃん、首を長ーくして、まってるわよ。」

はーい。
私が部屋に入ったとたん、マドレーヌちゃんの姿がなかった。
え、え?マドレーヌちゃん、どこ?
もしかして、ショックを受けて、自殺したとか!?
そんなの、やだぁ!

「ここにいますよ。」

うわぁぁぁぁ!ベッドの中から、マドレーヌちゃんの幽霊がぁぁぁぁぁ!
お願いだから、呪わないでぇぇぇぇぇぇ!

「生きてますよ。」

本当だ。体半分、透けてないし、マドレーヌちゃんの姿が、はっきりと見える。
よかったぁ。

「はぁ。」

ため息をつきながら、マドレーヌちゃんは、ベッドから出てきた。

「もっと、お話がしたかったです・・・・・・。」

そうだよね。私も、そう思う。

「あの時、帰らなかったら、よかったです・・・・・・。」

マドレーヌちゃんが悪いんじゃないんだよ。

「え?それって、どういう意味ですか?」

悪いのは、恋だよ、恋。恋があまり、マドレーヌちゃんとグレスくんの会話の時間をくれなくて、マドレーヌちゃんを傷つけた。それで、恋がグレスくんをマドレーヌちゃんから引き離した。
そうでしょ?
私だって、ジュンブライトに近づこうとしても、比奈多さん達がじゃまする。つまり、恋がじゃましたってわけ。

「なるほど・・・・・・。」

どうしたの?背を向けて。
それから、マドレーヌちゃんは、私の方を向いた。

「おいっ、恋!俺とグレスの時間を、勝手に取るなぁぁぁぁぁ!」

ひぃぃぃぃ!キャラ、変えないでぇ!

「お願いだ、真莉亜姉貴!」

キャラは変わっているけど、真剣な表情になっている。
おまけに、私の両手をギュッとにぎっているし。
てか、今『真莉亜姉貴』って、呼んだ?

「な・・・・・・なんでしょうか。」

「一緒に・・・・・・一緒に、チョコを作ってくれないか!?」

え!?マドレーヌちゃん、本気なの!?

「あたり前だろ!好きな人にチョコを作るのが、女の役目だろ!後、もう一つ、言っていいか?」

は、はい。

「今日の夜中、グレスにヴァンパイアだってこと、言ってもいいか!?」

え~!?そんなの、無理だよぉ。
絶対、大騒ぎになるよぉ。

「大騒ぎになってもいい!ジュンブライト兄貴とルクトじじーとリリアに頼むから!頼む、言わせてくれっ!」

・・・・・・わかった。じゃあ、一緒にチョコ、作ろ。

「はいっ。」

ふぅ。やっと、いつものマドレーヌちゃんに戻ってくれたぁ。





「えぇ!?マドレーヌのやつ、そんなことを言ってたのか!?」

しっ!これがマドレーヌちゃんの決意だから、ちゃんと見守ってくださいね。

「あぁ、わかった。」

だって、私達、透明マントをかぶって、夜空を飛行中しているんです。
先頭に飛んでいるマドレーヌちゃんには、私達の姿は、全く見えない。

「ふぁ~。ねむいわぁ。」

リリアさん、ねないでくださいっ。
ここは我まんですよ、我まん!

「グゥ~、グゥ~。」

こらぁ!ジュンブライト、起きろー!

「んがぁ!もう、人の昼寝をじゃまするなよぉ。」

私もねむたいけど、我まんしているんだよっ。

「王子。これは大仕事ですから、ねたらだめですよ。」

「わかった。じゃあ、もうねないぜっ。」

そうそう。そういう気で、大仕事にはげんでください。

「マドレーヌ、グレスくんの家についたわ。」

本当だ。窓をたたいている!

「そばに行ってみましょう。」

あ、はい。
って、ジュンブライトぉ、どこにいるのぉ?

「ガーゴー、ガーゴー。」

浮いたまま、ねるとは、すごいです。
って、こらぁ!さっき、「もう寝ない。」って言ったくせに、寝るなぁ!

「んがぁ!あ、そうだった!ごめん、ごめん!」

大急ぎで、ジュンブライトが、私の右手をギュッとにぎると、ジュンブライトの顔が、急に、りんごみたいに真っ赤になった。

「ど、どうしたの?」

「い、いや、なんでもない。」

あやしいなぁ。
そう思っているうちに、私達は、マドレーヌちゃんの後ろに来ちゃった。

「グレスくん、グレスくん。」

小さな声で、マドレーヌちゃんが、窓をたたきながら、グレスくんを呼んでいる。
すると、カーテンがシャッと、開いて、窓が開いて、グレスくんが窓から顔を出して、きょろきょろと、辺りを見渡した。

「グレスくん!」

マドレーヌちゃんの大きな声で、グレスくんが顔を上げると、グレスくんは、マドレーヌちゃんの姿を見て、驚いた。

「ま、円花ちゃん!どうしたの?その格好。それに、その黒い翼、何!?」

「そのことは、後で話すから。一緒に、夜空を飛ぼう。」

「夜空を?ふ、そんなもん、人間にはできない。できるのは、ヴァンパイアだけだ。」

グレスくんは、マドレーヌちゃんを細い目で見つめた。

「そうだけど、信じてください。だって、明日、アメリカに行くんでしょ?いい思い出になると思って・・・・・・。お願いします!一緒に、夜空を飛んでください!」

グレスくんが、マドレーヌちゃんの熱意に負けたのか、窓に腰をかけた。

「いいよ。一度、夜空を飛んで見たかったんだ。」

「うん!じゃあ、手を出してください。」

「あぁ。」

グレスくんが、マドレーヌちゃんの手をギュッとにぎった。
にぎった瞬間、グレスくんの体が、フワッと浮き上がった。

「さぁ、行きましょう。」

「うん。」

あぁ。二人とも、仲良くしながら、飛んで行くよぉ。
私達も、行かなくきゃ。

「おうっ。」

私達は、二人の後をついた。

「うわぁ。家が小さく見えるぅ。菜の花広場も、花田小学校も全部!」

「でしょ?」

「まるで、ピーターパンになった気分だぁ!」

「でしょ?」

「アハハハハハ。」

「ウフフフフフ。」

二人とも、ピーター・パンとウェンディみたいに、仲良くぐーるぐる飛んで楽しんでいる。
そんな楽しい時間が、あっという間に過ぎちゃって・・・・・・。

「今日は楽しかったよ。」

「そう?ありがとうございます。」

あっという間だったね。グレスくんと過ごした時間が。

「じゃあね。」

「まってください!」

マドレーヌちゃんが、ベッドに戻ろうとしているグレスくんを、呼び止めた。

「なに?」

グレスくんが、マドレーヌちゃんの方を振り向いた。

「あ、あのね・・・・・・。」

がんばれ、マドレーヌちゃん!

「どうしたの?なにかあったの?」

「私ね、円花って言うでしょ?」

「う、うん。それが?」

「・・・・・・それ、名前じゃないんです。」

「え?」

「本当の名前は・・・・・・マドレーヌ。ヴァンパイア界の王女様なんです。」

「え!?じゃあ、君は・・・・・・。」

「そう。ヴァンパイアなんです。」

「え!?」

グレスくんが、驚いた。

「ごめんなさい。今まで隠して・・・・・・。私、二年前から、人間界に来たんです。『黒月円花』として、学校に行って、勉強したり、友達と遊んだり、いろいろな、楽しい一日を過ごしたんです。けど、あなたと出会って、私は・・・・・・。」

がんばれ~!

「あなたのことが、好きになってしまいました!」

言えたぁ!さっすが、マドレーヌちゃん!

「これ、受けとってくださいっ。」

マドレーヌちゃんが、私と一緒に作った、チョコのカップケーキを、グレスくんの前に出した。
それを、グレスくんが、手に取った。

「確かに、受け取ったよ。明日は、バレンタインデーだもんね。」

「は、はい。」

マドレーヌちゃんが、顔を真っ赤にして、うなずいた。

「それに、さっきのこと、誰にも言わないよ。マドレーヌちゃん。」

グレスくんのキラキラ輝いている笑顔、久しぶりに見た気がするなぁ。





バレンタインデー当日。
はぁ~。心臓の音が、ドックンドックン、鳴ってるよぉ。
早く来ないかなぁ?ジュンブライト。

「おはよう、黒月。」

「おはよう。」

あ、来た!

「ジュンブラ・・・・・・。」

「潤様~!」

ふんぎゃあ!
ジュンブライトファンクラブの人達から、先こされちゃった・・・・・・。

「これ、わたくしの気持ちです!受け取ってくださいな!」

「ありがとう。」

「潤様!チョコピナ1年分、受けとってくださいな!」

「私のも!」

「あたしのも!」

「ぜ~んぶ、受け取ってくださいな♡」

「あ、ありがとう。」

さっすが、人間界でもヴァンパイア界でも、モテる王子です。

「キャハ♡よかったですね、比奈多様♡」

「えぇ。それに、わたくしのお気持ちまで、受け取ってくださいましたわ。オーホッホッホッホ!」

ふぅ。やっと、女子軍団のお楽しみのお時間が、終わりましたか。

「真莉亜!大丈夫か!?」

大丈夫じゃないです・・・・・・。

「立てるか!?」

あ、はい。立てます。
それにしても、チョコ、大丈夫かな?
私は、チョコのカップケーキをのぞいた。
あはっ、大丈夫みたい。
そう思いながら、私は立ち上がった。

「ところでジュンブライト・・・・・・。」

「なんだ?」

「渡したいものがあるけど・・・・・・。」

「俺もだ。」

え?ジュンブライトも?

「あぁ。ちょっと来い!」

ジュンブライトが、私の手をギュッとにぎって、走った。
って、どこに行くの~!?

「二人っきりになれるところだ!」

二人っきりになれるところ?

「ここだ!」

ジュンブライトに連れてこられたのは、学校の裏庭。

「はぁ、はぁ。やっと、二人っきりになれる・・・・・・。」

ジュンブライト、渡していい?

「俺も。渡していいか?」

い、いいよ。
今日のジュンブライト、様子が変だなぁ。
だって、顔が真剣だし、顔の色がりんごみたいに赤いもん。
一体、どうしたんだろ。
そう思いながら、私は、チョコのカップケーキを出そうとした。
あれれ?ジュンブライトも、なにか出そうとしているよ。
ま、そんなことは気にせず・・・・・・。

「はいっ。」

「はいっ。」

え?ジュンブライトが持ってるの、チョコ?

「あたり前だろっ。夜中に一人でがんばって、作ったんだぞ!おまけに、じいやとリリアと一緒に、真莉亜が好きそうなふくろを選んだんだ!」

えぇ!?買い物って、バレンタインデーの材料を買いに行ったのぉ!?

「そ。」

ジュンブライト・・・・・・。そこまで私のために、がんばって、チョコを作ってたんだぁ。

「そ。」

「ありがとう。そこまでがんばる、ジュンブライトが、一番好きだよ。」

「二ヒ二ヒ。好きって言われたぜ~。しかも、『一番』、だってぇ!ウッヒョヒョヒョヒョ。」

あのう、いい場面を、簡単に、くずさないでくれます?

「あ~、ごめんごめん。じゃあ、俺の気持ち、受け取ってくれるか?」

「もちろん!」

笑顔で私達は、チョコを渡した。
もう、ジュンブライトったら、チョコのカップケーキをぱくぱく食べてるし。

「うんま!さっすが、真莉亜は料理がうまいなぁ!」

えへへへへ。そんなこと、言われても、恥ずかしいなぁ。
ジュンブライトの手作りチョコ、食べてみよっかな。
私は、ふくろを開けて、さっそく、チョコを一口、ぱくっ。
もぐもぐ、う~ん・・・・・・むむ!?

「どうかしたのか、真莉亜!」

このチョコ、辛いよぉ~。

「あ。」

ん?どうかしたの?

「一味唐がらし、入れちゃったぁ♡」

え、えぇ~!?
なんで、一味唐がらしなんか、入れるのよぉ!?

「本当はぁ、ミルクを入れたかったんだけどぉ、間違えて、一味唐がらしを入れちゃったぁ♡その瞬間、ま、いっかって思ったのぉ♡ウフフフフ♡」

ローラのまね、するなぁ!てか、今、てへぺろしたよね?
・・・・・・気持ち悪い。

「もう!ルクトさんとリリアさんに、手伝ってもらえば、よかったんじゃないの!」

「ううん。だって、人に手伝ってもらう男って、かっこ悪いもん。」

ジュンブライトが、口をとんがらせた。
誰でもいますよ、手伝ってもらう人。

「もう!ジュンブライトのバカ!大嫌い!」

「あ~、ごめんごめん。今度から、そうするぜ。」

謝っても同じだよぉ。
こっちだって、辛~いチョコを、食べさせられたんだから。

「ごめんごめん。なぁ、ゆるしてくれよぉ。真莉亜が大好きなもの、買ってやっから。」

もう、知らない!

「えぇ~!?」

今日は、うれしいけど、ちょっと最低な、バレンタインデーです!
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