ヴァンパイア♡ラブ

田口夏乃子

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第三十九話 「えぇ〜!?マドレーヌちゃんが、恋をした!?」

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2月。2月といえば、節分です。
節分だけじゃありません。2月は、女の子にとって、メインイベントがあります。
そう、バレンタインデーです。
え?誰にチョコを渡すのかって?そりゃあもちろん、ジュンブライトです。
だって、好きな人だし、やろうかなぁっと、思ったわけです。
そういうわけで、私、さっそく本屋さんに行って、バレンタインデーチョコのレシピ本を、買いましたぁ。
なので、さっそくジュンブライトのお家におじゃましたいと思いまーす。
ピンポーン。
あれ?いないのかな?
ピンポン、ピンポン、ピンポーン。
私が何度もインターホーンを押すと、ドアが開いた。

「もう、いちいちうるさいです・・・・・・あれ?真莉亜お姉様。」

あ、マドレーヌちゃん。ジュンブライトは?

「ジュンブライトお兄様は、ルクトじいや様とリリアと一緒に、町へ、買い物に行きましたよ。それで、残っているのが、私だけなんです。」

一人でお留守番なんて、えらいねぇ。でも、ジュンブライトと、ルクトさんと、リリアさん三人組で、買い物なんて、めずらしいね。

「置き手紙がありましたので、手紙通り、宿題して、おやつを食べました。」

うお、えらいねぇ。さっすがマドレーヌちゃん、人の言うことをちゃーんと、聞くなぁ。

「とりあえず、中に入りましょう。お外は、寒いですし。」

そうだね、中に入ろう。
私達は、家の中に入った。

「おじゃましまーす。」

本当だ。ジュンブライトと、ルクトさんと、リリアさんがいる気配が、全くしない。

「ここに、すわってください。」

え!?すわっていいの!?ありがとう、マドレーヌちゃん!さっすが、気がきくねぇ。

「いいから、お座りになってください。お話したいことがありますので。」

あれ?いつものマドレーヌちゃんじゃ、ないぞ。
そう思いながら、私はいすにすわった。

「・・・・・・はぁ。」

どうしたの?マドレーヌちゃん。急にため息ついちゃって。
いつものマドレーヌちゃんじゃないよ。

「実は・・・・・・その・・・・・・。」

あぁ、お話しようって、言ってたもんね。で、どうしたの?
暗い表情で、マドレーヌちゃんはいすにすわった。
その表情をしているってことは、いじめられたの!?

「違いますっ。」

あ、違うんだね。よかった、よかった。
だって、首を左右に振ってたもん。
あれ?だんだん、マドレーヌちゃんの顔が、赤くなってるぞぉ。
どうしたのかな?

「実は私、できちゃったんです。」

え?何が?

「・・・・・・好きな人が。」

あぁ。好きな人ね。はいはい・・・・・・って。

「えぇ~!?」

それって、本当!?

「はい。」

照れながら、マドレーヌちゃんが答えた。

「で、お相手は?」

「お相手は・・・・・・外国人の方です。」

外国人の子!?

「ただいマンゴー。」

「ジュンブライト、それを言うなら『ただいま』でしょ。」

「あ、そうだったぁ。二ヒ二ヒ。」

ジュンブライト!帰って来たんだぁ!

「真莉亜様、いらしたんですね。」

「あ、あの。ちょっと話していい?」

私が、マドレーヌちゃんに好きな人ができちゃったことを全部話すと、ジュンブライト達は驚いた。

「え!?マドレーヌ、もうそんなお年ごろになっちまったのかよっ。」

「はい。」

「しかも、好きな人が外国人だなんて、あなた、すごすぎるわよ。」

みなさん、落ち着いて、お話でもしましょう。

「そうですね。」

そう言いながら、ジュンブライト達は、いすにすわった。

「で、その外国人の名前は?」

「グレスルビーくんです。」

グレスルビーくん?

「その子、どんな子?」

「グレスくんは、最近、私のクラスに転入した子で、背が高くて、かっこよくて、頭がよくて、運動神経バツグンの男の子なんです。で、けっこう女子にも人気があります。けど・・・・・・。」

けど?
それから、マドレーヌちゃんは、ため息をついた。

「実はグレスくん、ドイツ出身なんです。」

「なぬぅ!?」

ど、どうしたの、ジュンブライト。

「ドイツって、あのクララがいるところか!?」

なんてそこで、反応するの。

「そういうところで反応しないでくださいよ。」

ルクトさん、なんでそんなにあわてているの?

「ドイツという国は、『アルプスの少女ハ〇ジ』に出てくる、ク〇ラ様で有名ですが、それだけじゃありません。ヴァンパイアが有名なんですよ!」

えぇ~!?そうだったのぉ!?初耳です。

「そのグレスくんは、実はヴァンパイアオタクだったんです。」

えぇ~!?じゃあ、あきらめちゃえばいいじゃん。

「あきらめるわけにはいかねぇよ!」

うわぁ。マドレーヌちゃんのキャラが変わったよぉ。

「俺は、まだ恋を始めたばっかりだ!それなのに、なーぜ、簡単に、「じゃあ、あきらめればいいじゃん。」って言うのかよ!」

すみません、すみません。もう、言いませんから。

「本当か?」

本当です。

「じゃあ、よろしいです。」

ふぅ。やっといつものマドレーヌちゃんに戻ったぁ。

「で、みなさんに作戦を考えて欲しいんです。」

「作戦?なんの?」

ジュンブライトが首をかしげると、マドレーヌちゃんは、むらさきの目を輝かせた。

「その名も、『マドレーヌの、告白成功大作戦』ですっ。」

「『マドレーヌの、告白成功大作戦』だとぉ!?」

「そんなの、自分で考えればいいんじゃない。」

「いいえ、みなさんで考えてください。その方が、早いですし。」

作戦を考えろって、言われても・・・・・・。

「王女様、王女様自身が、考えた方がいいんじゃありませんか?そうしたら、早いじゃありません?」

「いーや!みなさんで、考えて欲しいんですぅ!」

あらら。マドレーヌちゃん、足をじたばたさせちゃったよぉ。

「あー、もうわかったから、菜の花広場に行って、あそんでくれる?私達で作戦、考えておくから。その代わり、六時になったら、帰るのよ。」

その瞬間、マドレーヌちゃんが足をじたばたさせるのをやめた。

「わーい!じゃあ、いってきまーす!」

そう言いながら、マドレーヌちゃんは家を出た。

「さぁ、作戦を考えましょう。」

「おうっ。」 「はいっ。」

って、リリアさん、なんでホワイトボードを出しちゃってるんですかっ。

「作戦を考えるための会議よ。会議中に必要なのは、ホワイトボードしかないのよ。ジュンブライト、書記をお願い。」

「わかった。」

ちょっと、リリアさん、ジュンブライトは字がヘタいし、ルクトさんに書いてもらえば、いいんじゃないですか?

「つべこべうるさいわよ、真莉亜!」

あ、すみません・・・・・・。

「さぁ、気を取り直して、会議を始めるわ。今回の会議は、『マドレーヌの、告白成功大作戦』を、みんなに考えさせてもらうわ。まず、ルクト、内容を書いて。」

「はいっ。」

すくっと、ルクトさんが立ち上がった。

「内容は、マドレーヌ王女様に好きな人ができて、その好きな人に、どうやってうまく告白ができるのかを、みなさんで考えて欲しいと、王女様がおっしゃっていたので、みなさんで考えてください。」

はい・・・・・・って、ジュンブライト、その女の子、誰!?

「ん?見ての通り、マドレーヌだろっ。」

いや、違いますっ。
マドレーヌちゃんは、そんなに昔のヤンキーみたいな髪型をしていませんっ。てか、『スケバン刑事』をイメージして、書いたでしょ!

「いーや、『マジすか学園』だ!」

どっちも同じじゃないかいっ。

「そんなツッコミは、会議に必要じゃないわ。」

あ・・・・・・、すみません。じゃあ、つっこむの、がまんしますから。

「じゃあ、また気を取り直して。会議を再開するわ。」

う~ん、迷うなぁ。
どんな作戦をつくるか、迷います。

「真莉亜、なにかいいこと、考えた?」

い、いーや、まだ考えています。

「あ、そう。ルクトは?」

「わたくしもです。」

「あ、そう。ジュンブライトは?」

「俺も。そういうお前は?」

「私もよ。」

みーんな、なやんでいるんだねぇ・・・・・・。
あ!いいこと考えました!

「真莉亜様、どうかなさいましたか?」

「実は、作戦を考えたんですよ、作戦を!」

「えぇ!?本当に!?」

本当です。

「その作戦の内容は?」

まぁ、みなさん、落ち着いてください。

「作戦の内容は、こうです。マドレーヌちゃんとグレスくんが会って、二人がいっぱい話して、仲良くなって、そして、次の日にはマドレーヌちゃんがグレスくんに告白するんです。」

「なるほどぉ。その手があったかぁ。」

「いい考えね。」

と、みんながなっとくした。





次の日。グレスくんの家の前で、昨日、私が考えた作戦を、マドレーヌちゃんに話すと、マドレーヌちゃんが驚いた。

「えぇ!?そんなの、無理ですぅ!」

それしかないんだよぉ。

「無理無理、無理ですぅ!」

マドレーヌちゃんが、顔を真っ赤にして、首を振っている。

「マドレーヌ、自分で告白するって言いながら、急にあきらめて、どうするの。」

「そうだ!あきらめたら、そこで試合終りょうだ!」

ジュンブライト、昔のバスケットボールのアニメの名ゼリフを、言ってどうすんの。

「わたくしとルーの話を、思い出してください。」

「ルクトじいや様と、ルー様のお話・・・・・・。」

そう。あの時、ルクトさんはルーさんにキスをして、それから、がんばって告白して、OKもらったんだよ。
あの時のせつなーい話を思い出して。

「わかりました。勇気をふりしぼって見せます!」

おぉ!さっすがマドレーヌちゃん!がんばって!

「はい!」

元気にマドレーヌちゃんはうなずいて、早速、インターホンを押した。
ピンポーン。

「みなさん、隠れましょう!」

「はいっ。」 「おう!」 「えぇ。」

私達は、マドレーヌちゃんに気付かれないよう、大きな花だんの後ろにサッと隠れた。

「え!?真莉亜お姉様達、一人にさせないでくださいっ。」

あ、もう気付かれてしまいました。

「マドレーヌ、俺達はここにいるから、安心しなっ!」

「・・・・・・わかりました。では、もう一度。」

ピンポーン。

「『はーい。』」

「グレスくんと同じクラスの、黒月円花ですけど。グレスくん、いますか?」

「『ちょっとまってね~。』」

なんか、今のお母さんの声、日本語ペラペラだったような・・・・・・。
すると、ドアががチャッと開くと、マドレーヌちゃんの顔が急に、赤くなった。

「円花ちゃん、こんにちは。」

「こ、こんにちは、グレスくん!」

うわぁ。マドレーヌちゃんの言う通り、イケメンで、背が二年生とは思えないくらい、140cmくらいあって、髪の色は黄色で、青色の優しい目をしていて、肌が白い男の子だった。

「よく、うちがわかったねぇ。」

グレスくん、日本語ペラペラだぁ。

「あ、恵里香ちゃんに教えてもらったんだ。」

マドレーヌちゃん、ファイト!

「とにかく、あがってよ。いろいろと、話したいし。」

え?話したい?まさか、まさか・・・・・・!

「う、うん。」

入ったぁ!

「真莉亜、これ!」

これは・・・・・・あの、透明マントじゃないですかっ。

「昨日、ライト・ホームに行って、買ったんだ!さぁ、早くこれを体にかぶれ!」

は、はい~。
私は透明マントを、体にかぶった。

「よし、グレスの部屋の窓まで行くぞっ。」

ちょ、ジュンブライト、離してよぉ~。
た、高すぎるぅ~。

「真莉亜、落ち着きなさい!」

は、は~い。
そう言われながら、私達は、グレスくんの部屋の窓に到着。
と、その時。

「ゔ!」

どうしたの、みんな。口をおさえて。
それに、青白い顔になってるし。

「オェー!」

こ、こらー!人んちで吐くなぁ!

「だって、でっけぇ十字架が、あったんだぜ!」

でっかい十字架?
不思議に思って、部屋の中をのぞくと・・・・・・。
う、うわぁ!か、壁紙に、本物のでっかい十字架が、かざってあるー!
それに、ヴァンパイアの映画のポスターに、十字架の模様がついたベッド、ヴァンパイアのとんがった歯の化石、ヴァンパイアのマントに、ヴァンパイアのでっかくてこわーい人形があるぅ!
グレスくん、夜、ねむれているのかな?
あ、マドレーヌちゃんとグレスくんが入った!
うわぁ。マドレーヌちゃん、グレスくんの部屋を見て、目を点にしているよぉ。
きっと、自分の予想通りの部屋じゃ、なかったんだね。残念です。
ん?グレスくんのお母さんが、何かもってきたぞぉ。
なにかな?

「これ、ドイツのソーセージなの。おやつにぴったりよ、食べてみて。」

やっぱり・・・・・・。ソーセージですか。

「母さん、ありがとう。」

「どういたしまして。円花ちゃん、ゆっくりしていてね。」

「は、はいっ。」

ほほえみながら、グレスくんのお母さんは、部屋を出た。
うわぁ。二人っきりになってしまったよぉ。

「ん~。やっぱ、ドイツ人には、ソーセージをポリポリ食べながら、コーラーを飲んでいる。

「あ、あの。このソーセージ、食べてもいい?」

「あぁ。かまわないさ。」

うわぁ。グレスくん、キラキラ輝いている~。

「マドレーヌが食べているソーセージ、うまそ~。」

ジュンブライト!よだれ、出てるよっ。

「ん~、本当だぁ。コーラーによく合う~。」

「ありがと。そのソーセージは、ブルートヴルストっていってね、主として豚の血液と、子牛の血液の中に、豚肉や背脂を混ぜて作ったやつだよ。」

なぬぅ!?ドイツには、そんなソーセージが、あったのぉ!?

「あはははは。おいしいね。」

マドレーヌちゃん、苦笑いです。
さっすが、演技派女優です。

「あ、あのさ。」

「ん?どうした?」

「日本語、ペラペラなんだね。」

「うん。だって、お父さんが、日本オタクなんだ。」

日本オタクって、どんなオタクなんだろ。

「ねぇ、ヴァンパイア、好き?」

その質問に、グレスくんは顔をにこっとさせた。

「ドイツ人には、ヴァンパイアが嫌いっていう人は、いないよ。」

やっぱり!
すると、グレスくんがにこにこしながら、大きな本だなの中から一冊、本を出して、マドレーヌちゃんにその本を見せた。

「これ、『ヴァンパイアサバイバー』っていうんだ。すっごくおもしろいよ。」

あ!小学校の時、読んだことある~。なつかしいなぁ。

「思い出を言っている場合かっ。見ろ!」

ジュンブライトが、指さした方は・・・・・・。
えぇ!?マドレーヌちゃん、真剣な表情をして、『ヴァンパイアサバイバー』を読んでるぅ!

「ありがとう。すっごく、おもしろかったよ。」

マドレーヌちゃんが、グレスくんの前に、『ヴァンパイアサバイバー』を出した。

「よかったぁ。」

グレスくんは、満足そうな顔をして、本を本だなに戻した。

「あのさ・・・・・・。」

「ん?どうかした?」

マドレーヌちゃん、悲しい顔をしながら、下を向いている。
どうしたんだろ。

「もしも、彼女がヴァンパイアだったら、どうする?」

えぇ~!?

「お、おい!ちょっとこれ、どうなってんだよ!」

「マドレーヌが、本気で言ったわ!」

「王女様、それを言ったらダメですよ!」

みなさん、落ち着いてください。

「追い出す。」

へ?グレスくん、今なんて言った?

「追い出すに決まってるだろ。」

えぇ~!?

「こいつ、俺のいとこの前で、あんなこと言って・・・・・・!」

「ジュンブライト、黙りなさい!」

リリアさんに言われて、ジュンブライトは黙り込んだ。

「ヴァンパイアはしょせん、人間をおそう、おそろしい怪物だよ。もし、ヴァンパイアが一匹、人間の血をたくさん吸ったら、どうなる?世界中、ヴァンパイアだらけになってしまうんだよ。」

グレスくん、キラキラ輝いていた笑顔が、急にこわーい顔になっている・・・・・・。
それを聞いたマドレーヌちゃんは、目をうるうるしながら、立ちあがった。

「おじゃましました!」

え?マドレーヌちゃん、もう部屋を出ちゃった!





その後、マドレーヌちゃんは大号泣しちゃった。

「うわーん!」

あぁ、泣き声で菜の花広場のブランコがゆれてるよぉ。
だって、あんなこと言われて、ショックを受けてるもん。

「うわーん!」

あぁ、うるさい。

「うわーん!」

私だって、泣きそうだよ。
なーんにも、悲しいことがないのに・・・・・・。

「うわーん!」

とうとう、私まで泣いてしまった。
それを見たジュンブライトは、怒りにたえきれず、とうとう、「あー!」lっと、さけんでしまった。

「もう、うっせー!」

ジュンブライトの大きな声とともに、私達は泣くのをやめた。

「マドレーヌ!そんなこと言われただけで、めそめそ泣くんじゃねぇ!真莉亜!なにも悲しいことねぇのに、めそめそ泣くんじゃねぇ!だいたい、お前らなぁ・・・・・・。」

「王子、そんなに怒らなくても、いいんじゃありませんか?」

「そうよ。マドレーヌと真莉亜は、あなたの娘じゃないわ。」

そうですよねぇ、リリアさん。

「あー!イライラしたぁ!マドレーヌ、今日は俺と、風呂に入ろう。」

「・・・・・・はい。」

しょぼーんとした顔で、マドレーヌちゃんはジュンブライトとルクトさんとリリアさんのところに行って、仲良く四人で帰っていっちゃった。
大丈夫かなぁ?
私はそう思いながら、帰っていく四人の姿を見つめた。


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