75 / 138
第三十八話 「笑里奈さんの夢!」
しおりを挟む
そんなことが起こって一分後、ようやく、私達は笑里奈さんちにつきましたぁ。
それより、笑里奈さんちって、すっごく大きいね。
看板にでっかく、『なにわ屋』って、書いてあるし、二階建てだし、引き戸だし、ちょっと失礼だけど、古そうなお店だね。
「笑里奈さん、笑里奈さんの店って、何年に始まったんですか?」
「一九〇三年。」
えぇ!?明治時代から、笑里奈さんのお店が始まったって、ことですか?
「そう。うちのひいじいちゃんが、お好み焼きの修行から帰って、早速つくったお店だって。」
ひいおじいさんが元祖、この店の主人だったなんて、すごすきます。
「で、ひいおじいさんは?」
「死んだに決まっとるやろ。」
ですよね。
「さ、中に入ろう。」
はいっ。
笑里奈さんが、引き戸に手をのばそうとした、その時。
ガラッ!
とつぜん、引き戸が開いた。
「笑里奈、遅かったねぇ。」
「えへへへへ。おかん、この人が、うちの同級生の、春間真莉亜さんや。」
あ、どうも。春間真莉亜です。よろしくお願いします。
「こちらこそ。いつも娘がお世話になっています。」
笑里奈さんのお母さん、優しそう。
かおにちょこっと、しわが生えていて、年齢は、48歳ぐらいで、ちょっと失礼だけど、顔が太っていて、大きい。
「笑里奈が友達がとまりに来るって言い出して、もし、不良だったらどうしようって、思うたけど、優しい子でよかったぁ。はぁ、今日はなんて、いい日やろ・・・・・・。」
「あぁ。おかん、泣くなら中に入って、泣いて。」
「あぁ、ごめんごめん。真莉亜さん、荷物、笑里奈の部屋にもっといてやろうか。」
えぇ?いいんですか?
「あたり前やろ。」
あ、ありがとうございます。
私は笑里奈さんのお母さんに荷物を渡して、笑里奈さんと笑里奈さんのお母さんと一緒に、中に入った。
ん~。お好み焼きのにおいが、ただようぞぉ。
「いらっしゃい、真莉亜ちゃん。」
ん?年齢は51歳ぐらいで、今、お好み焼きを焼いているのは、誰?
ガラッ!
また、引き戸が開いた。
「おかん、おとん、ただいま。」
「お帰り。」
えぇ!?笑里奈さんの、お父さんだったの!?
ていうか、この女の人、誰?
背が170cmあるし、美人さんだし、髪の色は茶色だし、茶色のコートを着ていて、大きい青色のバックを持っている女の人。
一体、誰!?
「姉ちゃん、お帰り。」
姉ちゃん?
「ただいま、笑里奈。」
えぇ!?この人、まさかまさか!
「うちの自まんの姉ちゃんや。」
えー!?この人が、笑里奈さんのお姉ちゃん!
「もう、自まんだなんて、照れるんやないか。」
今日は驚くことが、多いです。
「姉ちゃん、あたいが東京でできた友達、春間真莉亜さんや。」
「あっ、どうも。春間真莉亜です。」
私は、笑里奈さんのお姉ちゃんの方を向いて、おしぎをした。
「初めまして。お笑いコンビの、チェリーのツッコミ役を担当しています。川辺由唯です。いつも妹がお世話になっています。」
あ・・・・・・。手を出しているってことは、あくしゅ・・・・・・ですか?
「そう。」
うわぁ。いいんですか?
「いいに決まっとるやろ。」
ありがとうございますっ。じゃあ、お言葉に甘えて・・・・・・。
私と由唯さんは、あく手した。
うわぁ。芸能人とあく手するなんて、生まれて初めてです。
もう、このあく手した手は、洗えません。
「さぁ。今日はお好み焼きパーティーで、盛り上がろうか。」
いいですね!私、お好み焼き、大好きですっ!
「ホンマかいな!それはありがとう。真莉亜ちゃん、好きなやつ、選んでええよ。」
えぇ!?いいんですか!?じゃあ、お言葉に甘えて、豚玉を。
「はいよっ。」
「春間さん、コーラー、飲む?」
あ、はい。飲みます。
「そうだ!」
な・・・・・・何ですか!?急に大きな声、出しちゃって。
・ ・ ・・
「ソーダーをのもう!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。」
がくー!おやじギャグですかっ。
「ぷはははは!」
笑里奈さんのお母さん、笑里奈さんのお父さん、由唯さんは、大爆笑です。
「え、笑里奈、もっかい。」
・・ ・・
「そうだ!ソーダーをのもう!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。」
「ぷはははは!さっすが、うちの娘やなぁ。」
ご家族も、おやじギャグが大好きだなんて、さすがは大阪人。
「はい、春間さん。」
あ、ありがとうございます。
私はコーラーが入ったコップを取った。
「はいっ、豚玉ねっ。」
あ、あの・・・・・・。私がたのんだのは、豚玉だけなんですけど・・・・・・。なんで、イカ玉と、キムチ玉と、チーズ玉と、もんじゃ焼きと、トッピングのキムチとチーズがあるんですか?、あと、私は13歳だから、ビール3本は、飲めません。
「なーに言っとんねん。このビールは、わしと頼子と由唯が飲んで、このトッピングとイカ玉とキムチ玉とチーズ玉ともんじゃ焼きは、うちら5人で食べるんやぞ。」
えぇ!?いいんですか!?
「あたり前田のクラッカー!」
それ、やや昔のギャグじゃありませんか?
「ぷはははは!」
みなさん、大爆笑しています。
「さぁ、みんなでカンパイしようか。」
「はいっ。」
「じゃあ、笑里奈、真莉亜さんのお笑いコンテスト出場をいわって、カンパーイ!」
「カンパーイ!」
カンパイした後、みんなはゴクゴクと、飲みものを飲み始めた。
「なぁ。最初、なにから焼く?」
えっと、チーズ玉から、お願いします。
「はいよっ。」
うわぁ。すっごくチーズがこんがり、とろけてるぅ。
「まだネタ、考えてないやろ?」
あ、はい。
「なかなか決まってなくて・・・・・・。姉ちゃん、なんかいいネタ、考えてくれへんか?」
「私からも、お願いしますっ。」
私達が土下座をすると、由唯さんは首を振った。
「ダメ。」
「な・・・・・・なんでなん!?」
「ネタとは、自分達で決めて、客を笑わせることや。人にネタを考えさせるのが、お笑いじゃないで。」
☆
「えぇ!?春間さんのおばあちゃん、大阪に住んでるの!?」
『ハート』を読みながら、笑里奈さんは驚いている。
「はい。富田林で、桃山ベーカリーっていう、パン屋さんを開いているんです。」
「あー。あそこ、大阪におったころ、行ったことあるで。」
え!?そうなんですか!?
「あぁ。あたいが5歳のころ、あんぱんがとってもおいしいと評ばんがあるから、おかんと姉ちゃんと行ってみたら、もう、あんこがおいしくておいしくて、たまらんやったで。」
そのあんこ、おばあちゃんの手作りなんです。
「えぇ!?」
また、笑里奈さんは驚いた。
「なぁ。春間さん。」
ん?なんですか?
「明日、一緒にテレビ局に行こう。」
えぇ!?テレビ局って、関係者以外、立ち入り禁止ですよ!?
「それは知っとる。だってあたい。姉ちゃんのマネージャーと、仲がええからなぁ。姉ちゃんをわぁ!って、ビックリさせたいんや。」
笑里奈さんらしいですね。けれど、なんでテレビ局なんかに?
「姉ちゃんのお笑いを見に行くんやで。」
なるほど。
「さぁ、早速コンビ名とネタを考えるで!」
えぇ!?今、夜の10時ですよ!?もう寝なきゃいけない時間ですよ!?
「大丈夫。小さな声でしゃべれば、誰にも気付かれへん。」
確かに。そうですね。じゃあ、思いっ切り、しゃべりましょう。
「せやな。まず、ここにすわって、コンビ名を考えようや。」
あ、そうですね。じゃあ、すわりましょう。
私達は床にすわった。
あれ?笑里奈さん、何を書いてるんですか?
「これ?これはなぁ、あたいが考えた、コンビ名や。」
え!?見せてください!
「はいっ。」
私の前に、笑里奈さんは白い紙を出した。それを、私は手に取った。
うわぁ。いっぱい書いてあるなぁ。
さっすが笑里奈さん、たよりになります。
でも、ちょっと気になるコンビ名があります。
それは・・・・・・。
『プリン&大プリン』
一体、なんなんですか、これ。かいけつプリンは知ってるけど……大プリンって誰?
「春間さん、大プリン知らんの!?かいけつプリンに出てくる!」
はい・・・・・・。てか、笑里奈さん、そんなに大きな声、出さなくても、いいんじゃないですか?
「大プリンってのはな、プリンワールドの大王で、かいけつプリンのおとんや。」
えぇ!?かいけつプリンのお父さん!?
「ほら、かいけつプリンがピンチになった時、カラメルソースビームが向こうから的に向かって飛んでくるやろ?あれ出してんの、かいけつプリンのおとんや。」
へぇー。死んだかと思ったぁ。
「勝手に死なせるなっ。」
おぉ!大阪人につっこまれたの、生まれた初めてです。
「笑里奈さん、なんで『プリン&大プリン』ですか?」
「あたい、小さいころむっちゃくっちゃアニメ、観とったもん。」
私も。もう、すっごくおもしろかったぁ。あと、プ〇キュアも観ていました。
「特に、『かいけつプリンのうた』が、おもしろかったなぁ。」
『かいけつプリンのうた』?なんですか、それ。
「え!?知らんの!?『かいけつプリンのうた』」
まあた、笑里奈さんったら、さっきより2倍、大きな声を出しちゃって。本当に、誰かに気づかれますよ~。
「『かいけつプリンのうた』って、かいけつプリンのオープニングテーマで、プリンが歌っていた歌やで!?春間さん、知っとるやろ!?」
いや。もう、7年前のことなので、忘れました。
「じゃあ、笑里奈さん、歌ってください。」
「よっしゃ!じゃあ春間さんのかわいい少女時代を思い出させるため、歌いまーす!聞いてください、『かいけつプリンのうた』!」
そのあと、笑里奈さんは、『かいけつプリンのうた』を元気な声で歌ってました。
「どうやった?思い出したやろ。」
はい。なんとなーく。
「よかったわぁ!春間さん、かいけつプリンのうたを思い出してくれてぇ!」
「とりあえず、『プリン&大プリン』は、ダメです。」
「え~、やだぁ。『プリン&大プリン』がいい~。絶対ウケると思うも~ん。」
アニメのキャラでコンビ名作んないでくださいっ。
「じゃあ、『ふたりはプ〇キュア』。」
ダメです。
「笑里奈さん、もしかして、アニメが大好きなんですか?」
「あぁ。もう、超~大好き・・・・・・って、そんな話、している場合ちゃう!」
そうですね。
「あぁ、なんでうち、コンビ名を考えている時に、アニメのキャラの名前を、入れるんやろ~。もう!アニメオタクのあたいの、バカバカバカバカ~!」
あぁ!そんなに自分の頭を、自分でポコポコたたかないでくださいっ。私、いいコンビ名を思いつきましたから。
「いいコンビ名?なんやそれ。早く教えて!」
笑里奈さんは、自分の頭をポコポコたたくのをやめて、真剣な顔で、私をじーっと、見つめています。
「『お笑いガールズ』。」
そう言うと、笑里奈さんの表情が、急に明るくなった。
「それええなぁ!じゃあ、『お笑いガールズ』に、決定~!」
そのポーズとセリフ、毎週日曜日の朝の8時半にやってた魔法戦士アニメに出てきた、私と同じ歳の子が言うセリフとそっくり。
トタトタ。
しかも、こっちに向かってくるぅ!
トタトタ。
「春間さん、早く急いでぇ!」
笑里奈さん、そんなにあわてなくても、いいんじゃないですか?
「いいから早くぅ!」
あ、は~い。
ガチャ。
ひぃ!ドアが開いたぁ!
「笑里奈!」
うわぁ!声が100倍、大きいよぉ!
前に立っているのは、髪が長くて、服装は笑里奈さんと同じシャツを着ている女の人が、怒った顔をして、仁王立ちになって、私達の前に現れた。
この女の人、どっかで見たことあるんだよね・・・・・・。
「姉ちゃん!」
あ。笑里奈さんのお姉さん、由唯さんだった。
でも、髪が少し、ボサボサになっていて、目をねむそうにしているけど、どうしたんだろ。
「笑里奈、今何時と思ってるん。10時39分やぞ、39分!もう寝る時間やぞ!変な歌歌ったり、大きな声出さんといて!あたい、明日朝早いから、寝かせて!ごめんね、真莉亜ちゃん。」
いや、いいですよ、別に。
「全く笑里奈ったら、小さいころから声が大きいから、めいわくかけないで欲しいで。」
そうぶつぶつ言いながら、由唯さんは部屋を出た。
☆
それより、笑里奈さんちって、すっごく大きいね。
看板にでっかく、『なにわ屋』って、書いてあるし、二階建てだし、引き戸だし、ちょっと失礼だけど、古そうなお店だね。
「笑里奈さん、笑里奈さんの店って、何年に始まったんですか?」
「一九〇三年。」
えぇ!?明治時代から、笑里奈さんのお店が始まったって、ことですか?
「そう。うちのひいじいちゃんが、お好み焼きの修行から帰って、早速つくったお店だって。」
ひいおじいさんが元祖、この店の主人だったなんて、すごすきます。
「で、ひいおじいさんは?」
「死んだに決まっとるやろ。」
ですよね。
「さ、中に入ろう。」
はいっ。
笑里奈さんが、引き戸に手をのばそうとした、その時。
ガラッ!
とつぜん、引き戸が開いた。
「笑里奈、遅かったねぇ。」
「えへへへへ。おかん、この人が、うちの同級生の、春間真莉亜さんや。」
あ、どうも。春間真莉亜です。よろしくお願いします。
「こちらこそ。いつも娘がお世話になっています。」
笑里奈さんのお母さん、優しそう。
かおにちょこっと、しわが生えていて、年齢は、48歳ぐらいで、ちょっと失礼だけど、顔が太っていて、大きい。
「笑里奈が友達がとまりに来るって言い出して、もし、不良だったらどうしようって、思うたけど、優しい子でよかったぁ。はぁ、今日はなんて、いい日やろ・・・・・・。」
「あぁ。おかん、泣くなら中に入って、泣いて。」
「あぁ、ごめんごめん。真莉亜さん、荷物、笑里奈の部屋にもっといてやろうか。」
えぇ?いいんですか?
「あたり前やろ。」
あ、ありがとうございます。
私は笑里奈さんのお母さんに荷物を渡して、笑里奈さんと笑里奈さんのお母さんと一緒に、中に入った。
ん~。お好み焼きのにおいが、ただようぞぉ。
「いらっしゃい、真莉亜ちゃん。」
ん?年齢は51歳ぐらいで、今、お好み焼きを焼いているのは、誰?
ガラッ!
また、引き戸が開いた。
「おかん、おとん、ただいま。」
「お帰り。」
えぇ!?笑里奈さんの、お父さんだったの!?
ていうか、この女の人、誰?
背が170cmあるし、美人さんだし、髪の色は茶色だし、茶色のコートを着ていて、大きい青色のバックを持っている女の人。
一体、誰!?
「姉ちゃん、お帰り。」
姉ちゃん?
「ただいま、笑里奈。」
えぇ!?この人、まさかまさか!
「うちの自まんの姉ちゃんや。」
えー!?この人が、笑里奈さんのお姉ちゃん!
「もう、自まんだなんて、照れるんやないか。」
今日は驚くことが、多いです。
「姉ちゃん、あたいが東京でできた友達、春間真莉亜さんや。」
「あっ、どうも。春間真莉亜です。」
私は、笑里奈さんのお姉ちゃんの方を向いて、おしぎをした。
「初めまして。お笑いコンビの、チェリーのツッコミ役を担当しています。川辺由唯です。いつも妹がお世話になっています。」
あ・・・・・・。手を出しているってことは、あくしゅ・・・・・・ですか?
「そう。」
うわぁ。いいんですか?
「いいに決まっとるやろ。」
ありがとうございますっ。じゃあ、お言葉に甘えて・・・・・・。
私と由唯さんは、あく手した。
うわぁ。芸能人とあく手するなんて、生まれて初めてです。
もう、このあく手した手は、洗えません。
「さぁ。今日はお好み焼きパーティーで、盛り上がろうか。」
いいですね!私、お好み焼き、大好きですっ!
「ホンマかいな!それはありがとう。真莉亜ちゃん、好きなやつ、選んでええよ。」
えぇ!?いいんですか!?じゃあ、お言葉に甘えて、豚玉を。
「はいよっ。」
「春間さん、コーラー、飲む?」
あ、はい。飲みます。
「そうだ!」
な・・・・・・何ですか!?急に大きな声、出しちゃって。
・ ・ ・・
「ソーダーをのもう!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。」
がくー!おやじギャグですかっ。
「ぷはははは!」
笑里奈さんのお母さん、笑里奈さんのお父さん、由唯さんは、大爆笑です。
「え、笑里奈、もっかい。」
・・ ・・
「そうだ!ソーダーをのもう!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。」
「ぷはははは!さっすが、うちの娘やなぁ。」
ご家族も、おやじギャグが大好きだなんて、さすがは大阪人。
「はい、春間さん。」
あ、ありがとうございます。
私はコーラーが入ったコップを取った。
「はいっ、豚玉ねっ。」
あ、あの・・・・・・。私がたのんだのは、豚玉だけなんですけど・・・・・・。なんで、イカ玉と、キムチ玉と、チーズ玉と、もんじゃ焼きと、トッピングのキムチとチーズがあるんですか?、あと、私は13歳だから、ビール3本は、飲めません。
「なーに言っとんねん。このビールは、わしと頼子と由唯が飲んで、このトッピングとイカ玉とキムチ玉とチーズ玉ともんじゃ焼きは、うちら5人で食べるんやぞ。」
えぇ!?いいんですか!?
「あたり前田のクラッカー!」
それ、やや昔のギャグじゃありませんか?
「ぷはははは!」
みなさん、大爆笑しています。
「さぁ、みんなでカンパイしようか。」
「はいっ。」
「じゃあ、笑里奈、真莉亜さんのお笑いコンテスト出場をいわって、カンパーイ!」
「カンパーイ!」
カンパイした後、みんなはゴクゴクと、飲みものを飲み始めた。
「なぁ。最初、なにから焼く?」
えっと、チーズ玉から、お願いします。
「はいよっ。」
うわぁ。すっごくチーズがこんがり、とろけてるぅ。
「まだネタ、考えてないやろ?」
あ、はい。
「なかなか決まってなくて・・・・・・。姉ちゃん、なんかいいネタ、考えてくれへんか?」
「私からも、お願いしますっ。」
私達が土下座をすると、由唯さんは首を振った。
「ダメ。」
「な・・・・・・なんでなん!?」
「ネタとは、自分達で決めて、客を笑わせることや。人にネタを考えさせるのが、お笑いじゃないで。」
☆
「えぇ!?春間さんのおばあちゃん、大阪に住んでるの!?」
『ハート』を読みながら、笑里奈さんは驚いている。
「はい。富田林で、桃山ベーカリーっていう、パン屋さんを開いているんです。」
「あー。あそこ、大阪におったころ、行ったことあるで。」
え!?そうなんですか!?
「あぁ。あたいが5歳のころ、あんぱんがとってもおいしいと評ばんがあるから、おかんと姉ちゃんと行ってみたら、もう、あんこがおいしくておいしくて、たまらんやったで。」
そのあんこ、おばあちゃんの手作りなんです。
「えぇ!?」
また、笑里奈さんは驚いた。
「なぁ。春間さん。」
ん?なんですか?
「明日、一緒にテレビ局に行こう。」
えぇ!?テレビ局って、関係者以外、立ち入り禁止ですよ!?
「それは知っとる。だってあたい。姉ちゃんのマネージャーと、仲がええからなぁ。姉ちゃんをわぁ!って、ビックリさせたいんや。」
笑里奈さんらしいですね。けれど、なんでテレビ局なんかに?
「姉ちゃんのお笑いを見に行くんやで。」
なるほど。
「さぁ、早速コンビ名とネタを考えるで!」
えぇ!?今、夜の10時ですよ!?もう寝なきゃいけない時間ですよ!?
「大丈夫。小さな声でしゃべれば、誰にも気付かれへん。」
確かに。そうですね。じゃあ、思いっ切り、しゃべりましょう。
「せやな。まず、ここにすわって、コンビ名を考えようや。」
あ、そうですね。じゃあ、すわりましょう。
私達は床にすわった。
あれ?笑里奈さん、何を書いてるんですか?
「これ?これはなぁ、あたいが考えた、コンビ名や。」
え!?見せてください!
「はいっ。」
私の前に、笑里奈さんは白い紙を出した。それを、私は手に取った。
うわぁ。いっぱい書いてあるなぁ。
さっすが笑里奈さん、たよりになります。
でも、ちょっと気になるコンビ名があります。
それは・・・・・・。
『プリン&大プリン』
一体、なんなんですか、これ。かいけつプリンは知ってるけど……大プリンって誰?
「春間さん、大プリン知らんの!?かいけつプリンに出てくる!」
はい・・・・・・。てか、笑里奈さん、そんなに大きな声、出さなくても、いいんじゃないですか?
「大プリンってのはな、プリンワールドの大王で、かいけつプリンのおとんや。」
えぇ!?かいけつプリンのお父さん!?
「ほら、かいけつプリンがピンチになった時、カラメルソースビームが向こうから的に向かって飛んでくるやろ?あれ出してんの、かいけつプリンのおとんや。」
へぇー。死んだかと思ったぁ。
「勝手に死なせるなっ。」
おぉ!大阪人につっこまれたの、生まれた初めてです。
「笑里奈さん、なんで『プリン&大プリン』ですか?」
「あたい、小さいころむっちゃくっちゃアニメ、観とったもん。」
私も。もう、すっごくおもしろかったぁ。あと、プ〇キュアも観ていました。
「特に、『かいけつプリンのうた』が、おもしろかったなぁ。」
『かいけつプリンのうた』?なんですか、それ。
「え!?知らんの!?『かいけつプリンのうた』」
まあた、笑里奈さんったら、さっきより2倍、大きな声を出しちゃって。本当に、誰かに気づかれますよ~。
「『かいけつプリンのうた』って、かいけつプリンのオープニングテーマで、プリンが歌っていた歌やで!?春間さん、知っとるやろ!?」
いや。もう、7年前のことなので、忘れました。
「じゃあ、笑里奈さん、歌ってください。」
「よっしゃ!じゃあ春間さんのかわいい少女時代を思い出させるため、歌いまーす!聞いてください、『かいけつプリンのうた』!」
そのあと、笑里奈さんは、『かいけつプリンのうた』を元気な声で歌ってました。
「どうやった?思い出したやろ。」
はい。なんとなーく。
「よかったわぁ!春間さん、かいけつプリンのうたを思い出してくれてぇ!」
「とりあえず、『プリン&大プリン』は、ダメです。」
「え~、やだぁ。『プリン&大プリン』がいい~。絶対ウケると思うも~ん。」
アニメのキャラでコンビ名作んないでくださいっ。
「じゃあ、『ふたりはプ〇キュア』。」
ダメです。
「笑里奈さん、もしかして、アニメが大好きなんですか?」
「あぁ。もう、超~大好き・・・・・・って、そんな話、している場合ちゃう!」
そうですね。
「あぁ、なんでうち、コンビ名を考えている時に、アニメのキャラの名前を、入れるんやろ~。もう!アニメオタクのあたいの、バカバカバカバカ~!」
あぁ!そんなに自分の頭を、自分でポコポコたたかないでくださいっ。私、いいコンビ名を思いつきましたから。
「いいコンビ名?なんやそれ。早く教えて!」
笑里奈さんは、自分の頭をポコポコたたくのをやめて、真剣な顔で、私をじーっと、見つめています。
「『お笑いガールズ』。」
そう言うと、笑里奈さんの表情が、急に明るくなった。
「それええなぁ!じゃあ、『お笑いガールズ』に、決定~!」
そのポーズとセリフ、毎週日曜日の朝の8時半にやってた魔法戦士アニメに出てきた、私と同じ歳の子が言うセリフとそっくり。
トタトタ。
しかも、こっちに向かってくるぅ!
トタトタ。
「春間さん、早く急いでぇ!」
笑里奈さん、そんなにあわてなくても、いいんじゃないですか?
「いいから早くぅ!」
あ、は~い。
ガチャ。
ひぃ!ドアが開いたぁ!
「笑里奈!」
うわぁ!声が100倍、大きいよぉ!
前に立っているのは、髪が長くて、服装は笑里奈さんと同じシャツを着ている女の人が、怒った顔をして、仁王立ちになって、私達の前に現れた。
この女の人、どっかで見たことあるんだよね・・・・・・。
「姉ちゃん!」
あ。笑里奈さんのお姉さん、由唯さんだった。
でも、髪が少し、ボサボサになっていて、目をねむそうにしているけど、どうしたんだろ。
「笑里奈、今何時と思ってるん。10時39分やぞ、39分!もう寝る時間やぞ!変な歌歌ったり、大きな声出さんといて!あたい、明日朝早いから、寝かせて!ごめんね、真莉亜ちゃん。」
いや、いいですよ、別に。
「全く笑里奈ったら、小さいころから声が大きいから、めいわくかけないで欲しいで。」
そうぶつぶつ言いながら、由唯さんは部屋を出た。
☆
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
初恋の幼馴染に再会しましたが、嫌われてしまったようなので、恋心を魔法で封印しようと思います【完結】
皇 翼
恋愛
「昔からそうだ。……お前を見ているとイライラする。俺はそんなお前が……嫌いだ」
幼馴染で私の初恋の彼――ゼルク=ディートヘルムから放たれたその言葉。元々彼から好かれているなんていう希望は捨てていたはずなのに、自分は彼の隣に居続けることが出来ないと分かっていた筈なのに、その言葉にこれ以上ない程の衝撃を受けている自分がいることに驚いた。
「な、によ……それ」
声が自然と震えるのが分かる。目頭も火が出そうなくらいに熱くて、今にも泣き出してしまいそうだ。でも絶対に泣きたくなんてない。それは私の意地もあるし、なによりもここで泣いたら、自分が今まで貫いてきたものが崩れてしまいそうで……。だから言ってしまった。
「私だって貴方なんて、――――嫌いよ。大っ嫌い」
******
以前この作品を書いていましたが、更新しない内に展開が自分で納得できなくなったため、大幅に内容を変えています。
タイトルの回収までは時間がかかります。
【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~
蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。
なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?!
アイドル顔負けのルックス
庶務課 蜂谷あすか(24)
×
社内人気NO.1のイケメンエリート
企画部エース 天野翔(31)
「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」
女子社員から妬まれるのは面倒。
イケメンには関わりたくないのに。
「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」
イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって
人を思いやれる優しい人。
そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。
「私、…役に立ちました?」
それなら…もっと……。
「褒めて下さい」
もっともっと、彼に認められたい。
「もっと、褒めて下さ…っん!」
首の後ろを掬いあげられるように掴まれて
重ねた唇は煙草の匂いがした。
「なぁ。褒めて欲しい?」
それは甘いキスの誘惑…。
貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。
あおい
恋愛
貴方に愛を伝えてもほぼ無意味だと私は気づきました。婚約相手は学園に入ってから、ずっと沢山の女性と遊んでばかり。それに加えて、私に沢山の暴言を仰った。政略婚約は母を見て大変だと知っていたので、愛のある結婚をしようと努力したつもりでしたが、貴方には届きませんでしたね。もう、諦めますわ。
貴方の為に着飾る事も、髪を伸ばす事も、止めます。私も自由にしたいので貴方も好きにおやりになって。
…あの、今更謝るなんてどういうつもりなんです?
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる