ヴァンパイア♡ラブ

田口夏乃子

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第三十八話 「笑里奈さんの夢!」

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みなさん、明けまして、おめでとうございます。今年も、『ヴァンパイア♡ラブ』を、よろしくお願いします。
さーて、私はなにをやっているのかというと、初もうでが終わって、今、帰っているところです。
で、いっしょに帰っているのはもちろん・・・・・・。

「なぁ、真莉亜は今年の目標は、なんにするんだ?」

「今年の目標?私は、勉強をがんばるっかな。ジュンブライトは?」

すると、ジュンブライトは大きく体を張って、それから、ニッと笑って。

「俺の今年の目標は、真莉亜にいっぱいプロポーズをして、真莉亜と結婚することだ!」

やっぱり・・・・・・。そう言うと思った。
すると、ジュンブライトは急に、私の両手をぎゅっとにぎって。

「真莉亜、結婚しよう!」

はぁ?もう今年の目標、達成しようとするの?

「あたり前だろ。今年の目標を一発で達成するのが、男だぜ!」

い、意味わからん。こいつが言っていること。
とにかく私は、あんたと結婚するのはひゃっか。結婚するのは、私が16歳になってからねぇ。

「いや!ヴァンパイア界は年齢関係なく、結婚する国民が多いんだ!お前が16歳になるまではまてん!」

ヴァンパイア界と人間界の法律は違うの!この、わがまま王子め!

「なんだとぉ?」

ひぃ、ジュンブライトのまゆが4倍、つり上がってるぅ!
しかも、顔は怒っていて、目は私の方ににらんでいるし!
もしかして、もしかすると!

「お前、母ちゃんは何歳で、結婚したと言ったんだ?」

えっと・・・・・・、20歳って、言ってなかったっけ?

「は、そんなの遅すぎる。真莉亜、共にヴァンパイア界を平和にしよう。」

ひぃぃぃぃ!ジュンブライトが、とんがった歯を出して、私の首のまわりをかもうとしているぅ!
だれか、お助けを~。

「王子!」

パコーン!

「いたっ!」

だれかが、ジュンブライトの頭を、おもちゃのハンマーでたたいた。
しばらくして、ジュンブライトはばたりとたおれた。

「もう、正月そうそう、真莉亜様にめいわくかけたら、だめですよ。」

ルクトさん!

「真莉亜お姉様。明けまして、おめでとうございます。」

マドレーヌちゃん!今年もよろしくね。

「真莉亜、今年もよろしくね。」

リリアさん!今年もよろしくお願いします。

「ところで、ルクトさん達は、何しに来たんですか?」

「何しにって、見ての通り、初もうでじゃないですか。」

えっ!?ルクトさん達、初もうでに行ったんですか!?

「あたり前でしょう。」

出た。流行語ノミネート大賞予定の言葉。

「マドレーヌが急に、「初もうでに行きたい!」って、言い出して、火野王大神社に行ったの。」

火野王大神社!?そこ、私達も、行きました!声、かければよかったのに・・・・・・。

「その帰る途中、王子が真莉亜様におそいかかっているのを見て、すぐにこらしめてやりました。」

ありがとうございます、ルクトさん。

「いてててて・・・・・・。あ、じいや、マドレーヌ、リリア!」

あ。もうお目覚め?ジュンブライト。

「王子、もう二度と、真莉亜様をあんな目にあわないでくださいねっ。」

「へーい、へい。」

返事ぐらい、ちゃんとしろ!
あ、ところでジュンブライトとマドレーヌちゃんとルクトさんとリリアさん、ヴァンパイア界のお正月は、どんなのが、あるんですか?

「知りたいか?」

知りたいです。

「ヴァンパイア界のお正月は、超~すげぇぞ!まず、ごちそうは、ヘビのおぞうにに、てんとう虫のかまぼこに、まむしのさしみに、ちょうちょの羽と、かえるのお煮しめ!さらに、俺のイチオシは、青虫の液体でつくった青虫ジャムと、ハカタの塩でまぜた、青虫のようかんが、一番、おいしいぜ!」

ゔぅ、聞いただけで、気持悪くなってきました・・・・・・。

「それだけじゃありません。ハルルさんのお正月ライブは、ヴァンパイア界にとって、盛り上がる行事ですよ。」

ハルルさん?誰それ?

「とってもかわいくて、小顔で、なんと、ギラ様の妹なんですよ。」

えぇ!?ギラ様の妹なんですか!?

「あぁ。いつも二人で一緒にいて、アクアの恋のライバルらしいぜ。」

あ。アクアさん、ギラ様のことが大好きなんだったっけ。
それより私、ハルルさんのお顔が見たいです。

「これよ。」

リリアさん、スマホを持っているんだぁ。

「『夏、秋、冬、ハルルちゃーん♡』」

うわぁ。すっごいおじさん達の声。てか、ふつー『春、夏、秋、冬』でしょ。

「『みんなぁ、明けましておめでとーう!』」

あ、この人が、ハルルさん?かっわいい~♡

「『ハルルちゃーん!会いたかったよぉ♡』」

おそるべし、ハルルさんファンのおじさん達の声。

「『ハルルも会いたかったよぉ♡さぁ、最初の歌を歌うよぉ♡聞いてね。『ハルルの夏休み』!』」

うわぁ。歌、うまーい♡
・ ・ ・
「トイレに行っトイレ!」

ん?トイレはもう、朝起きてからしたよぉ。
・ ・・
「オオカミがトイレに入って、オー紙がない!」

オオカミがトイレに入って、「オー紙がない!」って、言わないでしょう。
ねー、ジュンブライト・・・・・・。
わわわわ!ジュンブライトが、カッチンコッチンの氷の中で氷ってるぅ!
ジュンブライトだけじゃない。マドレーヌちゃん、リリアさん、ルクトさんもみーんな、氷!
なんでなんでぇ!?
・ ・ ・・
「太陽に行ってみたいよう!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。」

ん?その笑い声、なーんか、聞き覚えがあるんだよねぇ。

「アハハハハハ!」

しかも、大きな笑い声が聞こえる。
・ ・ ・ ・
「そうだ!ソーダーを飲もう!」

「アハハハハ!」

つ、つまらん。こんな時期におやじギャグを言って、おやじギャグで笑う人なんて。
一体、どこでおやじギャグショーをやってるんだ?
私が辺りを見回すと、また。
・ ・・・ ・ ・・
「教科書、かしてください。よし、きょうかしよう。なんちってぇ、二ヒ二ヒ。」

「アハハハハ!」

ん?菜の花広場で声が聞こえるぞ。
よし、行ってみよう!
私は、菜の花広場まで、ダッシュした。
ん?人がたくさん、ステージの前に集まってるぞぉ。
なんか、お笑いステージでも、あるのかなぁ?
でも今日は、菜の花広場に芸能人がこないんじゃなかったっけ。
・ ・
「あなたのファンです!不安だなぁ。なんちってぇ、二ヒ二ヒ。」

むむ!あの赤毛のみつあみをしていて、いつもニカニカ笑っているのは・・・・・・。

「笑里奈さん!?」

なんで、なんでぇ!?菜の花広場のステージは一般人の路上ライブ、禁止なんじゃなかったの!?

「あ。真莉亜ちゃん、明けましておめでとう。」

あ、おまわりあさん。こちらこそ、明けましておめでとうございます。
・・ ・・
「アサリがあっさりとれる。なんちってぇ、二ヒ二ヒ。」

「ガハハハハ!」

おまわりさん、自転車に乗りながら、笑っています。

「ところでおまわりさん、菜の花広場のステージは、一般人のライブ、禁止じゃ・・・・・・。」

「笑里奈ちゃんは特別だよ。」

特別?

「そう。笑里奈ちゃんはこう見えて、お笑い芸人を目指しているからねぇ。大阪でも、けっこう路上ライブをしていて、大好評だったらしいよ。」

へぇ。笑里奈さん、人気者だったんだぁ。

「あと、笑里奈さんのお姉さん、まだデビューしたばかりの、お笑い芸人なんだよ。」


えぇ~!?そんなの、知らなかった!

「真莉亜ちゃん、笑里奈ちゃんとは、どういう関係なの?」

「同級生で、クラスメイトなんです。」

そのとたん、おまわりさんの目が点になった。
・・・・・・どうしたんですか?

「すごいねぇ、真莉亜ちゃん!おじさん、知らなかったよぉ!」

ちょっとおまわりさん、手をそんなに強く、にぎらないでください!

「あ、そうだ!真莉亜ちゃんに、これをやろう!」

おまわりさんが私の前に差し出したのは、ようかんが入ったパック。
それを、私は手に取った。

「そのようかんを、家族みんなで仲良く食べてね。」

あ、ありがとうございます。
・・ ・・
「じゃあまたね。洋館でようかんを食べる。ハハハハハハ!」

おまわりさんは、最後におやじギャグを言い残して、笑いながら帰っちゃった。

「真莉亜!」

あ、ジュンブライト。元に戻ったんだ。

「それより、なにがあったんですか?」

あのね、私のクラスメイトの川辺笑里奈さんっていう人の路上ライブが、菜の花広場のステージであったんだよ。

「川辺・・・・・・。」

「笑里奈?」

「誰ですか?それ。」

あ。ルクトさん達は知らないか。

「あ、春間さん。」

あ、笑里奈さん!もう、路上ライブ、終わったんですか!?

「うん、そうだけど。なんで春間さんがそれを知っとるん?」

「初もうでの帰りに、たまたま、菜の花広場から笑里奈さんの声が聞こえたから、私が菜の花広場まで行くと、笑里奈さんがお笑いショーみたいなのをやっていて・・・・・・。おまわりさんに聞いてみたら、笑里奈さんはよく路上ライブをやっているって聞いたんです。」

そのとたん、笑里奈さんが二カッと笑った。

「春間さん、ツッコミ、大得意やろ?」

え?なんで知ってるんですか?

「だって、黒月さんが言うてたんやもん。」

はぁ!?

「二ヒ二ヒ。」

こらぁ!笑うなぁ!

「はい、これ。」

笑里奈さんが私の前に紙を差し出した。
なんだろ?
私が不思議そうにその紙を取ると・・・・・・。

『第29回 中高生お笑いコンテスト 参加者募集! 対象年齢は、13歳~16歳まで!優勝者には1万円をプレゼント!未来のお笑いスターは誰の手に!』

えぇ~!?私、お笑い芸人を目指してないから、ひゃっかしまーす!

「お笑い芸人目指してなくても、いい思い出になるんやで。」

いや、私は人前でツッコミたくありませんので、ごめんなさい。
そのとたん、笑里奈さんはポケットから何かを取り出した。
そして、その何かを私の前に出した。

「千円あげるよ。」

えぇ!?千円だったのぉ!?そんなの、いりませんえん!あ、ギャグ言っちゃった・・・・・・。
その瞬間、笑里奈さんが顔をにやにやさせながら。

「ギャグのセンス100点満点っと、言うことで、合格やで~!」

えぇ!?これ、テストだったんですかぁ!?
・ ・・
「今日、テストですと!?なんちってぇ、二ヒ二ヒ。これが春間さんの心の中で思っていることやでぇ。」

す、すごいです。人の心をおやじギャグで読めるとは。
でも、私、ギャグを言った瞬間、なんだかお笑いコンテストに出場したくなった気がしたよ。笑里奈さんと。

「笑里奈さん、私と一緒に、お笑いコンテストに出場しましょう!」

土下座しながら、私が言うと、笑里奈さんは二カッと笑った。
・ ・・ ・ ・
「よろしい。では、今日コンビ名とネタ合わせをするで!あたいんちでなっ。」

え?今、なんて・・・・・・。
・ ・ ・ ・・
「だから、あたいんちで、コンビ名とネタ合わせをするで!」

えっ、えぇ~!?そんなの、早すぎますぅ!

「早すぎちゃうで!ええか?今日の夕方5時に、電話するから、電話するから、泊まる準備をしなっ。」

てか、笑里奈さんちにも泊まるんですかぁ!?

「あぁ。あと、春間さんのアドレスを教えてくれんか?」

えぇ!?私の!?

「そう。」

そう言いながら、笑里奈さんが私の前にメモ帳と鉛筆を差し出した。
私はそれを取ると、さっそく、自分のアドレスを書いた。そして、私が書き終わって、笑里奈さんに返すと、笑里奈さんはまた、二カッと笑った。
・ ・・ ・ ・・ ・
「これが私のアドレスです。あ、どれっすか?なんちってぇ、二ヒ二ヒ。」

最後におやじギャグを言って、帰りました。





歯みがきよし、パジャマよし、おふろセットよし、冬休みの宿題も、着がえもトランプも全部、よし!
はぁ、お母さん似ちゃーんとおとまりと、お笑いコンクールのことを言って、よかったよぉ。
お母さん、だめって言うかと思ったよぉ。

「真莉亜が初めて友達の家にとまる!あぁ、今年はなんて、すばらしいお正月なの~。」って、泣いてたんだけどね。

「じゃあ、おとまりに必要なものを、自分で準備して自分でチェックしなさい。」って、言われたんだ。
お母さん、こう見えて心配性なんだ。
ええっと、今、何時だろ。
私が、すぐ近くにある目覚まし時計を見ると・・・・・・。
わ!4時55分!笑里奈さんから電話、かかってくるの、もうすぐじゃん!
仕方ない。5時になるまで、目覚まし時計をじっと、見つめよう。
カチ、カチ。
時計のはりが、少しずつ、12の方へ進んでいく。
カチ、カチ。
あと一分。
カチ、カチ。
頭の中で、時計のはりが動く音が鳴り響く。
カチ、カチ。
キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーコーン。
え?今、外で菜の花広場のチャイムが鳴った?
私が、あわてて目覚まし時計を見ると・・・・・・。
うわぁ!もう、5時になってるし!
トゥゥゥゥル。
下から、電話の音が鳴り響く。

「あー!私が出るぅ!」

私は、あわてて階段をおりて、電話のところまでダッシュして、受話器を取った。

「もしもし、春間ですが・・・・・・。」
・ ・・
「『電話にでんわ!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。』」

もう、出てますけど。

「『春間さん、菜の花広場に行っとって。あたい、迎えに来るから。』」

あ、はい。わかりました。
・・ ・・ ・
「『じゃあ、さよおなら~。なんちってぇ、二ヒ二ヒ。』」

プープー。
最後におやじギャグを言って、電話を切るなんて、すごすぎます。
さっすが、大阪人です。
トゥゥゥゥル。
また、電話が鳴り始めた。
笑里奈さん、何か言い忘れたことでもあったのかなぁ。
そう思いながら、私は受話器を取った。

「もしもし、春間ですが・・・・・・。」
・・ ・
「『電話にでんわ!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。』」

もう、出てますけど。てか、笑里奈さん、何か言い忘れたことでもありましたか?

「『俺は、笑里奈じゃねぇぞ!』」

確かに。声は男の人で、しゃべり方は関西弁じゃなくて、自分のこと、『俺』って言ってるし。
まさか、この人・・・・・・。

「ジュンライト!」

「『あったりぃ。よーく、気付いたな。』」

ゾロリみたいな声で、気付きました。
ところで、何か用なの?
・・ ・
「『ぶたのまぶた。なんちってぇ、二ヒ二ヒ。』」

おやじギャグじゃなーい!何か用なのって、言ってんの!てか、笑里奈さんのまね、するんじゃない!
・・
「『サンジ、今何時?今、3時!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。』」

国民的アニメのキャラを、ギャグにするとは・・・・・・。すごいヴァンパイアです。
・・ ・
「『ゾロリ達がせいゾロリ!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。』」

いたずらの天才をギャグにするとは・・・・・・・。

「『缶が感動した!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。』」

今回は、おやじギャグが多いです。

「もう!なんにもなかったら、電話、しないで!」

怒りながら、私は電話を切った。
はぁ、はぁ。一体、なにをしたかったんだろ。





菜の花広場の前で、私は笑里奈さんをまっていた。
それにしても、もうすっかり、夜になりそうだよぉ。
ヒューって、冷たい風が吹くし、電灯に、明かりが付いてるし。
早く、笑里奈さんの家の中であったまりたーい。

「遅くなってごめんな、春間さんっ。」

笑里奈さん!もうずっと、まってましたぁ。

「えへへへへ。だって、店番に冬休みの宿題にとか、いそがしかったんやもん。」

やっぱ、両親が店をもっている子って、いそがしいんですね。いろいろと。
・ ・
「あぁ。さぁ、バスに乗って行こうか。」
・ ・
え?バスに乗って行くんですか?

「うん。あたいの店、ちょこっと遠いからなぁ。」

えぇ~!?そんなの、早く言ってくださいっ。

「ごめんな。電話を切った後、急に、あー!って、思い出したんやで。」

あぁ。お金、もってないよぉ。どうしよ。

「あたいがおごってやるから、安心しとき。」

え?おごってくれるんですか?

「うん。」

うわぁ、ありがとうございます!笑里奈さん!
はぁ。こーんな優しい大阪人がおごってくれるなんて、真莉亜、感激です。
そんな私達の前に、1台のバスがとまった。

「春間さん、行こう!」

えぇ!?あのバスに乗って行くんですか?

「あたり前やろ!さぁ、行くで!」

笑里奈さんは、私のうでをがっしりにぎって、バスの中に入った。
私達が入ったと同時に、バスのドアが閉まって、バスが動き始めた。

「間に合って、よかったなぁ。」

ですねぇ。さ、座りましょ。
私達がいすにすわろうとした、その時。

「あーら、こんなところでぐうぜんですわね、真莉亜様、笑里奈様。」

あれ?前でおじょう様語でしゃべっている、私達と同じ歳の子が、一人、いーや、三人、仲良くすわってるぞぉ。

「真莉亜様、笑里奈様、お忘れになったのですか?わたくしですわよ、わたくし。」

あー!

「比奈多さん、なぎささん、雪さん!」

しまった!でっかい声で言っちゃった!

「とりあえず、落ち着いて、話しましょう。あ、その前に、お二人とも、お座りになって。お話しましょう。」

あれ?いつもの比奈多さんとは違うような・・・・・・。
そう思いながら、私達はいすに座った。

「・・・・・・はぁ。」

比奈多さん、ため息をついている。どうしたんだろ。

「それは・・・・・・。」

「私達が説明します。」

なぎささんと雪さんは、私達の方を真剣な目で振り向いた。

「実は・・・・・・比奈多様、運動会が終わった後、潤様に好きだと、告白したんです。」

「そうしたら、潤様、好きな人がいるからっと、ことわったんです。」

知っています。それ、盗み聞き、しましたから。とは言わず。

「で、その後、どうしたんや?」

「その後、比奈多様は・・・・・・。」

「『潤様の好きな人は誰か聞き隊!』という、グループを作りました。」

『潤の好きな人は誰か聞き隊!』?なんですか?それ。

「潤様に関係ある人に、潤様の好きな人を聞くという、グループです。」

ルクトさんとリリアさんとマドレーヌちゃんに聞いても、無理だと思いますけど。とは言わず。

「で、そのグループのリーダーと、副リーダーは、誰ですか?」

「リーダーは、比奈多様で、副リーダーは、小春様です。」

えぇ!?副リーダーは、小春さんですか!?なんで、なんでぇ!?

「実は、グループを作る前、比奈多様、泣いていたんです。そこに、小春様がやって来て、わけを話したら、小春様、すっごく怒ってしまって。そこで、小春様が、「かわいそうな先輩を、見離すわけにはいきません!比奈多先輩、一緒に『潤様の好きな人を聞き隊!』という、グループをつくりましょう!先輩がリーダーで、あたしが副リーダーですねっ。」って、おっしゃったんです。」

あらら。じゃあ、比奈多さんと小春さんは、それで仲良くなったっていうわけですね。

「そうです。」

なぎささんは、こくりとうなずいた。

「そんで、もし黒月さんの好きな人が見つかったら、どうするん?」

笑里奈さんが聞くと、雪さんの顔が、急にこわーい顔になっちゃって。

「二度と、潤様の前に現れないよう、転校させるのです。」

えぇ!?それ、ひどすぎるんじゃ・・・・・・。

「ひどすぎじゃあ、ありませんわ!」

比奈多さん、立ち上がったら、ダメですよ・・・・・・。

「わたくしはまだ、潤様のことが大大大大大好きですわ!それなのに、潤様、わたくしのお気持ちをわかってくれずに、好きな人ができましたのよ!潤様の好きな人は、どこのどいつですか!」

ちょっ、比奈多さん、急にいつもの比奈多さんに戻っちゃって。
てか、私の服のそでをつかむの、やめてくださいっ。くるしいです!

「あ。もしかして、潤様の好きな人は、真莉亜様・・・・・・なんですか?」

え?違いますぅ!

「うそつきはどろぼうの始まりですわ!」

「そうよ、そうよ!」

うわぁ。いつもの三人組に戻ってるぅ。
おそるべし、女子のうらみ。

「『火野王大神社前~。火野王大神社前~。お降りの方は、お早めに降りてくださーい。』」

バスが急にとまって、比奈多さんは私の服をつかむのをやめた。

「まずいですわ!なぎさ様、雪様、早くいそがないと、恋結びが、売れてしまいますわ!」

「比奈多様、急ぎましょう!」

「そうですわね!じゃあお二人とも、よいお年を~。」

「よいお年を~。」

そう言いながら、比奈多さんとなぎささんと雪さんは、大急ぎで運転手さんにお金を出して、バスを降りて、行っちゃった。





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