彼は死神

こあら

文字の大きさ
上 下
4 / 46

4 「死を、宣告する…。」

しおりを挟む
「お前飛べねぇの忘れてたわ」



「えぇぇぇぇ!そんなことより高ぁぁぁぁぁぁい…」

叫ぶ私の反応を見てゲラゲラ笑う最低男に、唯一使える両手でセツさんの上着にしっかり捕まる


「絶対に落とさないでよ…。」



「離さねぇよ」

涙目の私に向かって安心しろと言い、楽しそうに目的に向かう




「絶対だよ…っ」



「はーい」



ビュンビュンスピードを増していき、目を強くつむ



この担ぎ上げられた体勢がなんとも不安定で、ちょっと動いただけでも崩れて落ちてしまいそうな、ジェットコースターより不安にさせる浮遊感がこれは現実だと告げていた

















目的地に着いたらしく私を地べたに、よっと置く




(戻しちゃいそう…)



うぅ…っと胸辺りの気持ち悪さを必死に押さえる


(姿くらましした後ってこんなんなのかな…)






「うっ、…ううぅ…」

(今私、2日酔いで倒れこんでるおじさんと大差ない感じ…)









「クロ。どいつだ?」




「あの髪を1つに結んでいるやせがたの男性です。あと数秒です。」





「ちょうどいいじゃん」








「っう、うぅ…。ん?」




今から何が起こるのか聞きたいけど、座っているだけで精一杯の私は口を開くことすらできなかった



クロさんが言っていた人相の人を見つけ、気分が悪いながら見つめる



(普通に歩いているだけじゃん)



そう思っていると、男性が急に胸に手を当て倒れこむ

周りには交通にんは居らず、男性は息が絶え絶えの状態で意識を失う



「大変っ、…救急車…」

助けなきゃと、電話ボックスを探しているとクロさんが私の肩に手を置く



「これが仕事です。」


そう言いセツさんの方を指差す



男性の方へ歩みより、私にしたように枝切りハサミを首元へ向けガシャンっと勢い良く切る



「そんなっ、なんてことを…」




すると切られた男性の首元から白く柔らかな球体のようなものが現れる

球体は空へ空へとゆっくりと上がっていき、遂には見えなくなっていた



男性へと目を向けると切られたはずの首には傷が1つもなかった






「…?」





「今の白い物体は、男性の魂です。死神の仕事は、生を失った体から魂を切り離す。つまり、死を宣告することです。」



「死を、宣告する…。」



「辛い仕事ではありますが、これをしないと永遠に魂は体から離れることは出来ず苦しみだけが残ります。切り離すにも技術がいり、綺麗に切れないと魂が傷つき来世に影響を与えてしまうのです。」



切るだけが死神だと思っていた私は、作業の大変さと常に死に関わっていることを改めて知る







切り終え私の方へ歩いてくる


「よーし、次行くぞー」





「まだ、あるの?」


毎日どれほどの数を扱っているのか知らないけど、1回見ているだけの私は限界だった


自らの手で人の人生を終わらせるのは冗談でも良いとは言えない





「今回のノルマは達成しています。審問会へ向かってはどうでしょう?」



「そうだな」



それじゃっと、また私を担ぎ上げられる




「あの、この体勢は不安定で怖いんですが…」

オロオロしながら言う





「大丈夫大丈夫」



(いや、私が大丈夫じゃない)






っよ、とまた勢い良く飛ぶ




「んうっ…!!」




「…。」

震える体を見て、担ぎ上げた体勢から抱き寄せる形へと変えていった



体に体重をかけ、彼の右手が背中に、左手が太もも裏にあるのが分かった



私は落ちないように両腕をセツさんの首元に絡めて必死にしがみついた




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【R18】短編集【更新中】調教無理矢理監禁etc...【女性向け】

笹野葉
恋愛
1.負債を抱えたメイドはご主人様と契約を (借金処女メイド×ご主人様×無理矢理) 2.異世界転移したら、身体の隅々までチェックされちゃいました (異世界転移×王子×縛り×媚薬×無理矢理)

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

ようこそ奴隷パーティへ!

ちな
ファンタジー
ご主人様に連れられて出向いた先は数々のパフォーマンスやショーが繰り広げられる“奴隷パーティ”!? 招待状をもらった貴族だけが参加できるパーティで起こるハプニングとは── ☆ロリ/ドS/クリ責め/羞恥/言葉責め/鬼畜/快楽拷問/連続絶頂/機械姦/拘束/男尊女卑描写あり☆

処理中です...