逍遙の殺人鬼

こあら

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つむじ付近に衝撃を受け、頭を上げたようとした
注意散漫な私がぶつかったモノは何なのかを確認するためだった

「あんた何してんだよ」

それを確認する前に聞こえてきたのは、よく知った声だった
ドキッとした
目に映ったのは、真っ黒なロングコートを羽織って、こちらを見下ろすジャンさんだった

「ジャンさん!?もう…お話は終わったんですか?」

「どんだけ時間経ったと思ってる」

「っえ、もうそんなに時間が…。気づかなかったです」(雪だるま製作に集中しすぎて、時間を忘れるなんて…恥ずかしい…)









「人に突撃して、何のつもり?」

「っあ、いや…、ごめんなさい。足跡に気を取られて、」

「"足跡"?それが攻撃してきた理由?」

「攻撃するつもりじゃっ…」(なかったんだけど…。)

当たった頭を擦りながら、気まずい時間が流れた
意図してやったことではないのだけど…、ぶつかったことは事実だ

(ジャンさんはここで何をしていたんだろう?)
冷ややかな風に煽られる彼の髪の毛は、キラキラと輝いていて、真っ白な雪に輝く星みたいだった

相変わらず長い髪の毛は、なびかれると、合間合間に見える彼の深いアンバー色の瞳に吸い込まれそうになる
不思議な色合いに、目を離せなくなりそう

「なに」

「…なんです…?」

「俺の顔ずっと見てる。なに?」

「っみ、見てましたか!?そんなつもり無いんですけどっ…」

反射的に顔をそらした

(見てました…、ガッツリ見ていました…)
寒い風に当てられてるのに、頬は何となく熱かった

何を探しに来たのかなんて、このころはすっかり忘れていた
枝の存在をほったらかして、私はどぎまぎしていた

「頭大丈夫?」

「あ、ぶつかっただけなので、特に痛みとかないです。ご心配おかけしました」

「いや、そっちじゃねぇんだけど」

「"そっち"って、むぐぅ…!?」

急に両頬を掴まれた
驚きと、突然の行為に変な声が出たのは恥ずかしいが、致し方ない

まばたきが多くなり、私の目に映るジャンさんは顔を近寄せてくる
何事!?と、私は思考が進まない
「なぁ」と、私に話しかけるジャンさんの声が明瞭に聞こえ、自分の鼓動が速まるのが分かった

「あんた白いな」

ほうれしゅかそうですか?」

「あんたさ、アイツと何してた」

あいちゅろあアイツとは?」

掴まれたままなので、まともな日本語は喋れていない
おまけに、不十分な情報量の質問に、戸惑いを隠せずにいる

"アイツ"とは…誰を指しているのか…?
ジャンさんは「あの男だよ」と、眉をひそませながら言ってくる
だから、どの男なのかが分からないですよ…と、言いたいのだが、頬は掴まれたままです…

にゃれそすかだれですか?」

「腕組んで一緒にいた奴」

(あ!潤さんのことか!)「のぐににゃにもとくになにも、」

「何もねぇ訳ねぇだろ。言えよ、何してか」

一瞬の事だった
視界に映るジャンさんは変わらず映るのに、後ろの背景は木の葉の緑色から空の青色へと変わり、背中に何かが当たって、冷たい何かを感じた

押し倒されたのだと分かるのには容易で、雪の上故に背中への衝撃は少なく、痛みはなかった
何をするんだと、ジャンさんの肩を押して起き上がろうとしたが、その手は掴まれ雪の上で拘束される

雪に沈む身体は、思うように動けず、身動きが制限された
行動を制止するようにあらゆる逃げれる可能性を潰され、成す術がない

(この状況は………何だっ!!??)
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