311 / 333
312
しおりを挟む
「大丈夫、大丈夫だから」と、落ち着かせようとするギュウ君の優しさに私は頑張って震える肩を止めようとした
「私っ、なんで泣いてっ…」
吐ききれないこの想いに、喉は潰れそうで
止まらないこの涙に飲み込まれそうで
何もかもが分からない
「ごめっ…」
「大丈夫。大丈夫だ。」
「すぐっ、…止まるから」
「いーから。誰も見てない。誰も気付いてない。何も聞こえてないから。」
その声が、その言葉が、私の気道を開くみたいに呼吸を整えてくれる
私が泣き虫な事を彼は知っている
私が弱虫な事も、私が一度泣くとネチネチする事も…
泣くなとも、落ち着けとも言わず、ただ大丈夫と優しく背中を擦ってくれる
こんなみっともない姿を晒しておいて何だが、ギュウ君がいてくれて本当に良かったと思っている
「ほら、鼻かんで。」
「うん…、ありがとう。ギュウ君ティッシュ持ってたんだね」
「普通持ち歩くだろ。ポケットの役割を無視しちゃ可哀想だろ?それにちさは持ちたくても持てないだろうと思って。」
「無駄に女子力高いね。この服…ポケットひとつもないの…。おまけにバッグって言ったらバターサイズの小さいやつで、何も入らないの」
「その例えはおかしい…。スッキリした?」
私はコクリと頷いた
私はせっかく春さんにお化粧してもらったと言うのに、泣いたせいで落ちてしまった
元々派手なメイクでは無かったけれど、してもらったことを思うと心が痛んだ
「お化粧…取れちゃった」
貰ったティッシュを見ても、残酷的な色合いにげんなりしてしまう
そんな私にギュウ君は「しない方が良いけどな。」ってフォローしてくれる
「私のこのひどい顔の方がいいって言うの?ギュウ君は変わってるね」
「酷くないだろ。」
「こんな気持ち悪い赤毛で、目の色だって少し変だし、肌も白すぎて病人みたいに見られちゃうし…。これが酷いって言わないなら、何が酷いになるのよ…」
「そんな事言ったら俺はどうなるんだよ?日本生まれの日本育ちなのに、この見た目は色々と誤解が生まれるだろ。それに、気持ち悪いって思ったことないよ。」
確かに、ギュウ君は少し日本人とは違う感じの雰囲気を醸し出してる
日焼けと言われればそう見えるが、鼻筋と良い、堀と良い
よく見たらギュウ君の瞳は真っ黒だ
黒い瞳だと思っても光を当てたり、よく観察すると真っ黒でない事がある
日本人も真っ黒な瞳を持っていると思ってる人が大半らしいが、実は焦げ茶色をしているらしい
「ギュウ君の親は外国人なの?」
「両親は知らないんだ。物心つく前から俺はひとりだったから、親がどんな人だったのか覚えてないんだ。」
「…そうだよね…。私もお父さんとお母さんがどんな人か知らないんだ。ギュウ君はハーフかもね」
「ちさもハーフかもよ。クオーターだったりして。」
まさかと二人して笑けた
似た境遇だからなのか
ずっと一緒にいたからなのか
私はギュウ君のことを他人事だとは思えない
「私っ、なんで泣いてっ…」
吐ききれないこの想いに、喉は潰れそうで
止まらないこの涙に飲み込まれそうで
何もかもが分からない
「ごめっ…」
「大丈夫。大丈夫だ。」
「すぐっ、…止まるから」
「いーから。誰も見てない。誰も気付いてない。何も聞こえてないから。」
その声が、その言葉が、私の気道を開くみたいに呼吸を整えてくれる
私が泣き虫な事を彼は知っている
私が弱虫な事も、私が一度泣くとネチネチする事も…
泣くなとも、落ち着けとも言わず、ただ大丈夫と優しく背中を擦ってくれる
こんなみっともない姿を晒しておいて何だが、ギュウ君がいてくれて本当に良かったと思っている
「ほら、鼻かんで。」
「うん…、ありがとう。ギュウ君ティッシュ持ってたんだね」
「普通持ち歩くだろ。ポケットの役割を無視しちゃ可哀想だろ?それにちさは持ちたくても持てないだろうと思って。」
「無駄に女子力高いね。この服…ポケットひとつもないの…。おまけにバッグって言ったらバターサイズの小さいやつで、何も入らないの」
「その例えはおかしい…。スッキリした?」
私はコクリと頷いた
私はせっかく春さんにお化粧してもらったと言うのに、泣いたせいで落ちてしまった
元々派手なメイクでは無かったけれど、してもらったことを思うと心が痛んだ
「お化粧…取れちゃった」
貰ったティッシュを見ても、残酷的な色合いにげんなりしてしまう
そんな私にギュウ君は「しない方が良いけどな。」ってフォローしてくれる
「私のこのひどい顔の方がいいって言うの?ギュウ君は変わってるね」
「酷くないだろ。」
「こんな気持ち悪い赤毛で、目の色だって少し変だし、肌も白すぎて病人みたいに見られちゃうし…。これが酷いって言わないなら、何が酷いになるのよ…」
「そんな事言ったら俺はどうなるんだよ?日本生まれの日本育ちなのに、この見た目は色々と誤解が生まれるだろ。それに、気持ち悪いって思ったことないよ。」
確かに、ギュウ君は少し日本人とは違う感じの雰囲気を醸し出してる
日焼けと言われればそう見えるが、鼻筋と良い、堀と良い
よく見たらギュウ君の瞳は真っ黒だ
黒い瞳だと思っても光を当てたり、よく観察すると真っ黒でない事がある
日本人も真っ黒な瞳を持っていると思ってる人が大半らしいが、実は焦げ茶色をしているらしい
「ギュウ君の親は外国人なの?」
「両親は知らないんだ。物心つく前から俺はひとりだったから、親がどんな人だったのか覚えてないんだ。」
「…そうだよね…。私もお父さんとお母さんがどんな人か知らないんだ。ギュウ君はハーフかもね」
「ちさもハーフかもよ。クオーターだったりして。」
まさかと二人して笑けた
似た境遇だからなのか
ずっと一緒にいたからなのか
私はギュウ君のことを他人事だとは思えない
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
俺の彼女が黒人デカチンポ専用肉便器に堕ちるまで (R18禁 NTR胸糞注意)
リュウガ
恋愛
俺、見立優斗には同い年の彼女高木千咲という彼女がいる。
彼女とは同じ塾で知り合い、彼女のあまりの美しさに俺が一目惚れして付き合ったのだ。
しかし、中学三年生の夏、俺の通っている塾にマイケルという外国人が入塾してきた。
俺達は受験勉強が重なってなかなか一緒にいることが出来なくなっていき、彼女は‥‥‥
【R18】短編集【更新中】調教無理矢理監禁etc...【女性向け】
笹野葉
恋愛
1.負債を抱えたメイドはご主人様と契約を
(借金処女メイド×ご主人様×無理矢理)
2.異世界転移したら、身体の隅々までチェックされちゃいました
(異世界転移×王子×縛り×媚薬×無理矢理)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる