逍遙の殺人鬼

こあら

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「おい女、なぜそんな顔をしている。もっと嬉しがれ。」

「"なぜ"か?それは、この一週間ずぅーーーーーーーっと、朔夜さんに付きっきりで窮屈だからですよ!!」

「女、お前本当は嬉しいんだろ。神と崇める小説家が目の前に居て、その手伝いができるのだからな。もっと感謝しても良いんだぞ。」

「お手伝いは嬉しいです、!四六時中ひっつき虫みたいに一緒に居るのは嫌です。おかげで臼田うすたさんとの数少ない時間が失われたじゃないですか!最後に言った言葉は"またすぐ会えるよ…。"ですよ!そんな悲しいこと言わせるなんて…」

「俺の小説のほうが大切だ。女は意外と使えると早く知っていればな。」









私はこの人の…朔夜さんのせいで、一緒に居られる時間が限られていた臼田うすたさんとの時間を奪われたのです!!

そう…、あれは忘れもしない、あの………悲しげな顔をした臼田うすたさんの顔…
なぜそんな顔をさせなければならないのか…
願わくば過去に戻りたい…

「急に取材に行かせたり…」

「あれはいい資料になったぞ。警察なんて声かけられるだけで、かけることはないからな。」

「美容整形のところに行かせたりっ…」

「あれは傑作だったな。まさか豊胸を勧められるとは思わなかったな。」

「危うく施術されるとこだったのに…何笑ってるんですか……」

朔夜さんが次々と要求してくるものだから、私は拒否する間もなく連れ回されて、夜は疲れて眠り、朝は朝食を食べては執筆の手伝いをし昼食を食べて外に連れ回されてスナックのお手伝いをし、そしてまた疲れて眠るを繰り返していた

そのせいで……臼田うすたさんと全然一緒に居られなかったっ……
もぅ…泣きそう

「女、棚4の2にある青本取れ。」

「お願いしますとか…言ってくださいよ…。」(左から4番目の棚の、上から2段目…、もう慣れてしまっている自分が恐ろしい…。)

「おい、早く取れよ。」

「ちょっと…っ待って下さいよ…。私は、身長がっ…、!?」

今………………時を止める能力があったら是非使いたい…
上の方にあった本を頑張って、つま先立ちして取ろうとしたが…その頑張りは違った結果を及ぼした…

私の指先に促されて徐々に出てきた青本はするりと下に落ち、ちょうど催促をしに顔を上げていた朔夜さんの顔面目掛けて、落ちていったのでした……

「問題はないようですね。」

「"問題はない"だと?目が開けられないのに、どこがんだ!」

「安静にしていれば良くなりますから。経過を見ましょう。」

「"見る"だって!?目が開けられなくて何も見えないのに、先生だな。」

ご立腹な朔夜さんを相手にするお医者様は、この手の患者さんには慣れているようだ
私は申し訳無さと同情が相まって、彼を支えながら謝罪した

「女、お前まさかわざとじゃないだろうな。」

「まさか!わざわざ眼球目掛けて落としたりしませんよ!そもそも、あの状況でそんなピンポイントに狙えませんよ!!」

頭に目がついてなきゃ、そんな高度な技やってのけられません…
朔夜さんの目元に包帯を巻いて自宅で安静にしている事
それが一番早く治る方法だと
(あと朝晩軟膏を塗ること。)
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