逍遙の殺人鬼

こあら

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箱の中から麻袋を手に取った
それは、折り目に合わせるとちょうどあのサイズと同じくらいの大きさだった

(まさか…考えすぎだよね…。)

だって、アレを見つけたのは周りに何もないような錆びれた教会の図書室…だし
ここからは遠い場所なはず

私は偶然という言葉で片付けて、アルバムを箱に戻した
私の拙い推理力など当てにならない
箱を元の形に戻して、見なかったことにした
もし、当たっていると言うならば……春さんか朔夜さんが、あの手紙達をこの箱から持ち出したことになる

なんのために?
どうしてそんなことをするの?
する意味なんて…あるのかな…?

「よし、この箱達を持って帰るぞ。」

「えぇ!?これを全部ですか?」

「たったの14箱だろ。四の五の言わずに運び出せ。」

「分かりましたよ…。これで全部ですね?」









「ちさちゃん、大丈夫?」

「私より、臼田うすたさんの方が大丈夫ですか?まだ…本調子じゃないのに、こんなに働かされて…」

「僕は大丈夫だよ。あとこれ運べば終わるしね。鍵だけお願いできるかな?」

「はい、もちろんですよ。鍵かけたら車の方に戻りますね」

臼田うすたさんは先に荷物を持って車に戻った
私はコンテナ倉庫に鍵をかけた
扉の確認をして、しっかり鍵を締めた

さて、車へと戻ろうとした時何だか遠くの方から声が聞こえた気がした
何かを叫ぶような、言葉になっていない何かが聞こえたような…気がした

この倉庫の敷地に入る前に門が施錠されていた
だから、関係者以外は入る事ができないはず
……つまり、他の人などいるはずが無いんだ……

「春さんの…家の方?…」

そう思って、私は声が聞こえた方向に向かった
もう声はしない
(確かこの辺りから聞こえたんだけど…。)

同じような見た目のコンテナ倉庫が連なっているだけで、特に変わったものは無い
風が吹いていて、倉庫に当たり音を立てているくらいしか特に耳に入って来ない
試しにコンテナ倉庫に耳を当ててみるけど…得に音はしなかった

辺りを見渡していると急に着信音が鳴った
急な事に驚きながらもスマホを取り出すと、なんと春さんからの電話だった

「はい、ちさです。」

《っあ、ちーちゃん?今どこに居るのよ。》

「実は朔夜さんに頼まれて倉庫に、」

《またあの馬鹿に巻き込まれちゃったのね。ひさしも居ないからビックリしちゃったわよ、起きたのね。》

早く戻るように言う春さんの電話を終えて、私は車に直行した
乗車して春さんからの電話を伝えると、朔夜さんはまた不機嫌な顔をした

「お目当ての物は見つけたんだし、速く帰りましょう」

「オカマめ、俺らを監視するつもりか。」

("俺"ではなく、あなただけでは?…)「まさか…春さんはそんなことしませんよ…多分」

「犬顔、さっさと出発しろ。オカマにこれ以上小言を言われたらお前のせいだぞ。」

間違いなくそれは朔夜さんあなたのせいですよ
シートベルトをして、車は倉庫を離れた

私は橙色に染めた空に、倉庫で見てしまったモノについて考えていた
("沢口家"って書かれていた…。)
春さんの名字はじゃなかった…
なのに…どうして違う家のモノが置いてあったんだろうか…と疑問を生み出してしまった
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