逍遙の殺人鬼

こあら

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「ごちそうさまでした。」

「お粗末様です…。」

自分で食べれると言ったのに…結局最後まで臼田うすたさんから食べさせてもらう形になってしまった…
何という醜態…

食べ終わったお皿を片付けていると朔夜さんは「よし。」と何かを確信した
(また変なことをしないといいけど…)

「犬顔、運転できるか?」

「はい、出来ますよ。」

「よし、運転手になれ。」

「どこか行きたいところがあるんですか?」

_____ん?…

朔夜さんの少しにやっとした顔が目に入った…
プロレスで耳にするであろうゴングの鐘が鳴り響いたような気がした

(あの顔…絶対やばいこと考えてるよ…。)

目を合わせるとろくな事にならないので反らした
……が、何故か洗い物をする私を見てくる









(視線を感じる…。)
私はその違和感のある視線になんですか…?と聞いてしまった

「出掛けるぞ。」

「はい?」

「小説のためだ。女、犬顔、行くぞ!」

「っちょ!臼田うすたさんはまだ病み上がりだしっ、」

「女と犬顔支度しろ。」

「人の話!…聞いてくださいよ……」

当たり屋みたいな人ですね…
一方的に、自分都合を押し付けるなんて……
つくづく理解しがたい人だ
(でも小説の為なら…と納得仕掛けている自分が一番理解できない…。)

「ハリケーンみたいな人だよね。」と笑う臼田うすたさんは至って通常運転なご様子だ
慣れてらっしゃいますね…

出会ってまだ間もない私には、どうにもこうにも慣れそうにありません…
春さんとの喧嘩くらいだ、ようやく慣れてきたのは

臼田うすたさん、どうしました?」

「うん…僕のスマホ見なかった?部屋を探したんだけど、見当たらなくて。どこかに落としちゃったかな?」

(まずい!!??)「スマホって…これですよね…?」

「そうそう!ちさちゃんが見つけてくれてたんだね!ありがとう。」

かなりこちらの都合に良いように解釈されて、私を抱きしめる臼田うすたさんは、嬉しそうに私を包み込む
当たり前のように、慣れたようにするそれが私の思考を遅らせる

言わなかったんじゃない…
言う前に臼田うすたさんが誤解して……訂正する機会を失っただけだ………
_____と、嘘をついた

「おい、まだか。」

「朔夜さん知らないんですか…、臼田うすたさんは支度長いんですよ」

「何だと?ったく、男の癖に女のように時間かけるとはなよっちい男だな。」

「"なよっちい"ですか?…臼田うすたさんはちゃんと男らしいですよ!朔夜さんの何倍も優しいだけです。」

「真の男はなど無用なんだよ。まあ、お子様な女には分からないだろうがな。」

今なんと…?!
今朔夜さん、私のことを"な女"と呼んだんですか?!
私のどこがお子様なんですか!
電車料金はちゃんと大人料金ですし!
選挙権だってもうありますし!

(ちゃんと大人な女性ですもん!)
そう言う貴方こそ、見た目と実年齢に反して子どもみたいな所あるじゃないですか!

「私には朔夜さんの方が、幼稚に見えます」

「若々しいということか、なかなか悪くないな。」

「いやっ、そうじゃなくて…。もぉ……」(対抗しようとした私が馬鹿だった……。)

「それにしても遅い!何をそんなに時間を取る事があるんだ。まさか、男のくせにオカマの様に化粧でもしてるんじゃないだろうな。」

そんなわけ無いでしょ…
臼田うすたさんは、単純に走り回って支度しているだけです
ひとつのことをやり終える前に次、また次と手を出してしまう人なのです…
1度に何個もやろうとするから、余計に時間がかかってしまっているのです……
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