逍遙の殺人鬼

こあら

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臼田うすたさん…」

彼はやはり眠っていた
今朝と変わらない様子に安堵と焦りを感じた

急変したりしないことは喜ばしい
だけど、一向に目覚めないとなると、胸が締め付けられるみたいに苦しい

掛け布団を整える私に、「起きて欲しいのか?」と朔夜さんが聞いてきた
それに対する私の返答はただ一つ

「勿論ですよ。早く…目覚めてほしいです」

「女、任せろ。」

「っ、なっ何するんですか!!朔夜さっ、」

「起こしてやる。」

ベッドに近づく朔夜さんは、手にしていたペットボトルのキャプを外しながら歩み寄り、眠る臼田うすたさんに向かって飲み口を降ろした

突発的な行動に、私は対処出来ずペットボトルの飲み口から流れ落ちる水たちは、臼田うすたさんの顔面めがけて散らばった









「起きろ、犬顔。」

「っなんてことを!」

「起きて欲しいんだろ?大体いつまで寝てるんだ、こいつは。」

「っちょ、それ以上臼田うすたさんに何かしようものなら、パソコンあるデータ消去して再起不能にしますよ!!」

ペチペチ音をたてて彼の頬を叩く朔夜さんの腕を強引に引っ張った
気は確かですか?と疑いたくなるほど、異常な行動を取るのはなぜなのか
最低ですという私に「女、お前が言ったんじゃないか。」と私を指さして悪びれる様子などない

私がいつ臼田うすたさんに水をかけろと言った?
私がいつ臼田うすたさんの顔を叩いてくれと願った?

そんな願いなどしていない
願ったのは…早く目覚めてくれと祈っただけだ

うぅん…と小さく聞こえた声の音に振り返ると、眉を少しひそめて薄っすらと目を開く臼田うすたさんが、体を起こそうとしていた
何故私と朔夜さんがここに居るのか
何故自身がこんなにびしょ濡れ状態なのかが理解できずにいる臼田うすたさんは、水を拭うついでに目を擦った

「ほら見ろ女、目覚めたじゃないか。」

「こんな荒療治みたいなことして、よく平気で要られますね?!」

「結果良ければ全て良しと言う言葉もある。億劫でいるより、何百倍も効率的だと思うが?」

「人道的に考えてくださいよ。目的にばかり見てたんじゃその内、誰かに足をすくわれますよ」

効率重視でやっただなんて、理解できない
筋は通ってるかもしれないけど、そんなことがまかり通る世の中になってしまえば、もっと悲惨な物へと退化してしまう

『人の肉は食べれるから燃やしてしまうより食べたほうが食料難の軽減にもなる』などと言われて、そうですねと死体の肉を食べれるだろうか?
食用に加工した物ですと提示されても、ではいただきますとは言えない

確かに食べれて、いくらか食糧難の問題を解決できるかもしれない
でも………人の肉を、しかも死体を食べるなんてカオスな事が常識化したらどうだろうか?

人は皆違う
私は反対派あなたは賛成派ね、でもこっちの人は条件次第では賛成よと、答えが皆一緒とは限らない

もっと簡単に言えば、ゴキブリを食事のお供にできるだろうか?
食用ゴキブリは市場に出ている
勿論食べる人はいるだろう
でも、食べない人の方が圧倒的に多いはずだ……

分かりづらい感じにしてしまったが、回り回って同じことを言っているんだ

「ふたりとも…ここで何してるの?」

臼田うすたさんっ、大丈夫ですか?頭痛いとか、吐き気がするとか、気持ち悪いとか、熱っぽいとか、違和感を感じるとかないですか?」

「えっと……、かな?」
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