逍遙の殺人鬼

こあら

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私はジャンさんが倒れていると聞き、無我夢中で走った
咳き込むみたいに苦しむ私は、夜中に歩き回る不審な未成年に見えたのか、補導されてしまった

必死に走っていた私は息切れが激しく、怪しい薬物でもしているのではないかと疑われてしまった
交番へと促されるが、今はそんな事をしている場合ではない
私がこんなになるまで走っていた理由は、倒れたジャンさんを探し出すためだ

「親御さんは知ってるのか。」

って言ったら、また疑われる…)「あの…」

「きみはまだ若いんだ。これからいろんなことに挑戦できるんだよ。人生を棒に振ってはいけない。」

私が棒に振る前に人生は狂い、まともとは言えないものになっていた
それを嘆く親も、親戚も友達もいない









「さあ、交番に行くぞ。」と私の手を取る
交番に行ったら、保護者が来るまで出られない
私にそんな人物はいないし、こんな時間に連絡が取れる人なんて…いない

少しばかりの抵抗を見せる私に、警官は少し顔をしかめた
その顔を見て思い出した
ちょっと前に、春さんのお店にやって来た人
私の顔を見るなりため息をついた人だ
(だから、余計に私を怪しんでるんだ…)

「っでも…私本当に人を探してて、」

「あぁ、お待たせ。迎えに来てもらって悪かったな。」

「っ!?っジャ、」

「いやー、申し訳ないですね。俺が呼び出したんですよ。」

背後から音も無く現れ、私の肩に手を置いて、私を自分の方に引き寄せるたのはジャンさんだった

警官に私を呼び出したのは自分だと
怪しむ様子が消え切らない警官は、私とジャンさんの間柄を聞いた
その問いになんて答えるのか、私は冷や汗をかいていた

「兄弟ですよ。腹違いの。」

「ご兄弟ですか…。何故こんな時間に呼び出したんですか?まだ補導時間ですよ。」

「実はずっと海外にいて今さっき帰国して来たんですよ。」

「だから迎えに来たと?」

「しばらく会えてなかったせいか、年の離れた兄が恋しくなったんでしょう。小さい頃から夢中になると周りが見えない子でしたから。」

なるほどと警官は納得したみたいだった
ジャンさんは成人した大人だ
本来、成人した人がついていても正当な理由がなければ、良しとはされていないと聞いた

もちろん腹違いの兄弟なんかではない
嘘をついているジャンさんは、次から次に偽物のシナリオを話した

私は何年かぶりに会う兄との再会に、待ちきれず走り出した妹という設定を付けられた
顔が似ていない理由も腹違いならと納得し、ジャンさんの金髪も海外に居たのならと疑問が無くなるように警官の顔は晴れていく

「やっぱりまずかったですね。悪かったな、俺も久しぶりに会えるのが嬉しくてな。」

「っう、うん…。私も嬉しいよ」

「何だ、照れてんのか?成長して可愛げが出たんじゃないか?」

(演技と分かっていてもツラい!)

こっちは、ジャンさんの寸劇に追いつくのが精一杯なのだ
だからたどたどしくなる
それが余計、大好きな兄に頭を撫でられて照れているように見えるみたいだ

違うけど…
でも、そのおかげでこの場をやりきれるなら……と精神統一に勤しむ

「今回は注意だけにしますが、今後は気をつけて下さい。」と警官は私を解放してくれた
そして、ジャンさんは私を引き寄せたまま春さんの家へと向かった
道中何も話さないジャンさんに、私も何だか話出せずにいる

「あんたどういうつもりだ」

もう目の前が春さんの家だというところで、ジャンさんは怒り混じりの低い声で言った
その言葉に、私は彼の顔を見た
ジャンさんの顔は、声と同じく怒っているようだった
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