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ようやく夕食を食べれた私は、少し冷めているご飯を食べている
具沢山の豚汁も、暖かければもっと美味しかっただろうに…
春さんと朔夜さん、2人のせいでほとんど熱を失った状態で食べる事になってしまった
(料理に罪はない…。)
私がもっとうまく止めれていれば、このホッケも口の中でとろけるような旨味が溢れ出ていただろうに…
己を恨んだ
「ところで、この男は何だ。」
「っあ、彼はギュウ君って言って……」(なんて説明すれば良いんだろう。)
「浮浪者か?女と同じ匂いがする。」
「え?同じ洗剤で洗ってないので、匂いは違うと思うんですけど…」
急にまた変なことを言う朔夜さんだ
教会に居た時は、私がみんなの服を洗濯していたから私の服とギュウ君の服の匂いが一緒なのは理解できる
でも、今は違う
(臼田さん…どこに行ったんだろう…。)
春さんに連行されて行った臼田さん、その姿は夕食を食べ終えても見えることはなかった
瑞貴さんやジャンさんも、戻って来ない
もしかして臼田さん、2人の所に言っちゃったのかな…ってテーブルを拭く私に、春さんは心を見透かしたように言った
「もしかして亀?」
「っあ…ちゃんと話した方がいいと思って…」(きっとまだ、ギュウ君の事誤解してるだろうし…。)
「多分まだ寝てると思うわよ。まだアルコールが体に残ってたみたいで、副作用が半端じゃなかったわ。ただでさえ、普段から脳フル回転でいるせいで、人よりも睡眠を必要としてるのよ。」
「"副作用"…ですか?…確かに、よく寝る人だとは思っていたけど…」(副作用って…あのチョコレートの影響って事だよね…。)
私が………、私があのウエイトレスから貰わなければ
私が臼田さんに、チョコレートを勧めなければ…こんな事になってなかったかもしれない…
遊びに行った訳じゃない
その事をちゃんと理解していたはずだったのに…結局私は足手まといだった
みんなに迷惑ばかりかけて……
(手伝うために行ったのに…。)
「臼田さん…?」
真っ暗な部屋
明かりひとつなく、私が扉を開けなければ部屋は暗いままを保っていた
ベッドで眠る臼田さんは、規則正しい寝息を立てて、私が開けた扉の隙間から差し込む光に顔を少し照らされている
ベッド脇にしゃがんで、彼の横顔を眺めた
(綺麗な顔だ。)
私なんかと全然違う、寝顔ですら優しい顔
その顔を見ていると、私彼と付き合ってるんだ…って考えてしまう
悪いことじゃない
ただ……実感が湧かないだけだ
こんな得体の知れない存在の私を、臼田さんは受け入れてくれると言った
私はそれに応えたいだけ
……幸せに、なりたいだけなの…
臼田さんとなら、なれる気がした
夢で見たみたいな、幸せそうな雰囲気醸し出して、私を優しく未来に引っ張ってくれる
そんな予感がしたんだ
(そういえば…いつ起きるんだろう……?)
一度眠ると中々起きない臼田さん
きっといつも以上に疲れてるだろうし、私のせいで苦しい思いもした
ならば、いつもより起きるのは先かな
コンコンッと開けたままの扉を春さんがノックした
小さかった隙間を広げるように開くと、少しだけ顔を出してうるさくないように小さな声で言った
「お友達は部屋にちーちゃんの隣の部屋ね。そろそろ寝なさい。」
「もう少し臼田さんに付いてます」
「分かったけど、無理しちゃダメよ。どうせ今日は起きないだろうし。」
「大丈夫です。ただ、心配なだけなので。」
バイバイと手を振り、春さんは行った
扉は閉まりきっていない
春さんのそう言うところが好きだ
心配……、無理して私を探したんだと思う
そしたら知らない男と一緒にいるから、余計に焦らせちゃったんだと思う
(まだ本調子じゃないのに…)
だから、せめてもの償いじゃないけど…見守っていたい
壁掛け時計のチクタクと鳴る音
すぐ近くに居る彼の呼吸
なんだか不安になる
このまま、目を覚まさないかも……って弱気になる
ほんの少し臼田さんは熱っぽかった
それがさらに私を不安にさせるんだ
具沢山の豚汁も、暖かければもっと美味しかっただろうに…
春さんと朔夜さん、2人のせいでほとんど熱を失った状態で食べる事になってしまった
(料理に罪はない…。)
私がもっとうまく止めれていれば、このホッケも口の中でとろけるような旨味が溢れ出ていただろうに…
己を恨んだ
「ところで、この男は何だ。」
「っあ、彼はギュウ君って言って……」(なんて説明すれば良いんだろう。)
「浮浪者か?女と同じ匂いがする。」
「え?同じ洗剤で洗ってないので、匂いは違うと思うんですけど…」
急にまた変なことを言う朔夜さんだ
教会に居た時は、私がみんなの服を洗濯していたから私の服とギュウ君の服の匂いが一緒なのは理解できる
でも、今は違う
(臼田さん…どこに行ったんだろう…。)
春さんに連行されて行った臼田さん、その姿は夕食を食べ終えても見えることはなかった
瑞貴さんやジャンさんも、戻って来ない
もしかして臼田さん、2人の所に言っちゃったのかな…ってテーブルを拭く私に、春さんは心を見透かしたように言った
「もしかして亀?」
「っあ…ちゃんと話した方がいいと思って…」(きっとまだ、ギュウ君の事誤解してるだろうし…。)
「多分まだ寝てると思うわよ。まだアルコールが体に残ってたみたいで、副作用が半端じゃなかったわ。ただでさえ、普段から脳フル回転でいるせいで、人よりも睡眠を必要としてるのよ。」
「"副作用"…ですか?…確かに、よく寝る人だとは思っていたけど…」(副作用って…あのチョコレートの影響って事だよね…。)
私が………、私があのウエイトレスから貰わなければ
私が臼田さんに、チョコレートを勧めなければ…こんな事になってなかったかもしれない…
遊びに行った訳じゃない
その事をちゃんと理解していたはずだったのに…結局私は足手まといだった
みんなに迷惑ばかりかけて……
(手伝うために行ったのに…。)
「臼田さん…?」
真っ暗な部屋
明かりひとつなく、私が扉を開けなければ部屋は暗いままを保っていた
ベッドで眠る臼田さんは、規則正しい寝息を立てて、私が開けた扉の隙間から差し込む光に顔を少し照らされている
ベッド脇にしゃがんで、彼の横顔を眺めた
(綺麗な顔だ。)
私なんかと全然違う、寝顔ですら優しい顔
その顔を見ていると、私彼と付き合ってるんだ…って考えてしまう
悪いことじゃない
ただ……実感が湧かないだけだ
こんな得体の知れない存在の私を、臼田さんは受け入れてくれると言った
私はそれに応えたいだけ
……幸せに、なりたいだけなの…
臼田さんとなら、なれる気がした
夢で見たみたいな、幸せそうな雰囲気醸し出して、私を優しく未来に引っ張ってくれる
そんな予感がしたんだ
(そういえば…いつ起きるんだろう……?)
一度眠ると中々起きない臼田さん
きっといつも以上に疲れてるだろうし、私のせいで苦しい思いもした
ならば、いつもより起きるのは先かな
コンコンッと開けたままの扉を春さんがノックした
小さかった隙間を広げるように開くと、少しだけ顔を出してうるさくないように小さな声で言った
「お友達は部屋にちーちゃんの隣の部屋ね。そろそろ寝なさい。」
「もう少し臼田さんに付いてます」
「分かったけど、無理しちゃダメよ。どうせ今日は起きないだろうし。」
「大丈夫です。ただ、心配なだけなので。」
バイバイと手を振り、春さんは行った
扉は閉まりきっていない
春さんのそう言うところが好きだ
心配……、無理して私を探したんだと思う
そしたら知らない男と一緒にいるから、余計に焦らせちゃったんだと思う
(まだ本調子じゃないのに…)
だから、せめてもの償いじゃないけど…見守っていたい
壁掛け時計のチクタクと鳴る音
すぐ近くに居る彼の呼吸
なんだか不安になる
このまま、目を覚まさないかも……って弱気になる
ほんの少し臼田さんは熱っぽかった
それがさらに私を不安にさせるんだ
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