逍遙の殺人鬼

こあら

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「下がってて」と怖いほど冷めた声で言う臼田うすたさん
何をするんだと思えば、急に前に歩き始め心配していたことが現実になりかけてしまった

「ダメです‼︎‼︎」

「「っ!?」」

両腕を横に広げ、2人の間に割り入ってこの険悪的な空気を一時停止させた
2人とも落ち着いてと呼び掛ければ、一瞬動きが止まる

「喧嘩や…殴り合いは、ダメです」

「「でもっ!」」

「話せば分かります。臼田うすたさん、こちらはギュウ君。教会に居た時優しくしてくれた私の友達です。」

「”友達”?」

「ギュウ君、この人は臼田うすたさん。ギュウ君に会う前から仲良くしていた、ある意味私の命の恩人」

「”命の恩人”?」









「そう、ちさちゃんのね。」

「えぇ、さん。」

_____どうして………
ちゃんと説明はできてなかったかも知れないけど、喧嘩は防げたけれども…
なんでまだバチバチしているの!?

臼田うすたさんはギュウ君のことを名前では呼ばず、”友達”と読んでいるし、反対にギュウ君は臼田うすたさんのことを”恩人さん”と呼んでいる
この空気感……どうしたというのか…

臼田うすたさん…ギュウ君は本当に良い人なんですよ、信じてください」

「うん?もちろんちさちゃんのことは信じてるよ。」

(その言い方は、まるでギュウ君のことは信じてないって言ってるみたい)「…。ギュウ君も、臼田うすたさんはいい人なんだよ?」

「ちさのいい人の定義は人なんだな。」

(何よ…2人して……。)
全然仲良くしようとする気がないじゃない…
こんな形で会っていなければ、2人ともちゃんと仲良くなれたと思うんだけどな

(ところで臼田うすたさんの吐き気は治ったのかな?)
私よりも重症だった彼は、ここに来るまできっとトイレから出れずにいたはず

「ちょっとひさしー?あんた吐き気は大丈夫なのー?」

「ハルカさん、どうしてここに?」

「あんた、あのチョコ食べすぎたんだから今日は大人しくしてろって言ったわよね?ほら行くわよ。」

「でも、」

「ごちゃごちゃ言ってないで行くわよ。また後でねちーちゃん、とお友達さん。」

連行されて行った…
最後に私に向かってウィンクして行った春さんは、救世主みたいだ
さすが頼りになる人、いやお姉さん!!

臼田うすたさんには悪いけど、春さんのおかげで悪化は免れたみたい
良かった……

やっと静かになったお店の中で、優しく頭を撫でるギュウ君はあの頃と、教会の時みたいに私の細かい変化に気づいてくれる
ただ「大丈夫なのか?」って言うだけで、それはどれを聞いているのか曖昧にしてくる
大丈夫だよって言ってもすぐ分かっちゃうんだろうな…

「ギュウ君は知る権利があると思う…」

「うん。それで。」

「だから、ちゃんと話すね」

「分かった。俺も、ちゃんと聞く。」
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