逍遙の殺人鬼

こあら

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「みんな居なくなっちゃんだね…」

「そんな顔するなよ、悲しませたかった訳じゃないんだ。」

「あんなに良い人たちだったのに…神様は意地悪だね……」

「あのな、神様は寂しがりやなんだ。地上で輝いている人達ほど早くそばに置きたいって思っちゃうんだよ。」

ギュウ君は言った
生き生きとした綺麗な花と今にも倒れそうで萎れた花だったら、多くの人は綺麗な花を選ぶと
神様は、頑張って輝いている人を早く天国に呼びたくて仕方ないんだと

世の中には若くして亡くなった人が多くいる
まだまだこれから活躍していくはずだった人だって少なくない
そんな人たちはみんな、神様が天国に連れて行ったんだと

なんて自分勝手な神なんだと恨んでしまった









「ちさはここで何してるんだ、さっきのデカい男は完全にクリスチャンさんじゃないか、どうなってるんだ?」

「っちょ、ちょっと落ち着いて…」

「殺されるところだったんだぞ!落ち着いてなんかいられるか!」

「そんなに大声出したらっ」(みんなに気付かれちゃうよ…。)

私の手を取って「デカいのが行った今がチャンスだ!」って、逃げる気満々のギュウ君を必死に止めた
そりゃ危険だって判断するかもだけど、ジャンさんを除けばみんないい人たちばかりだから、逃亡はオススメしない
(それに、ここから逃げても行く当てなんてないでしょ…)

「ねぇ、ギュウ君。ギュウ君は知ってたの?」

「何を?」

「薬のこと」

「”薬”?俺は別に病気持ちじゃないぞ。」

「あぁ…そうなの…」(やっぱり、知らないか…良かった)

ギュウ君は何も知らないし、何も関わっていない
これをちゃんと説明すれば…きっとジャンさんも分かってくれるはず

(待って…………)

ギュウ君が知らないとすると、消去法で三郎さんになってしまう
三郎さんが関わっていたことになってしまう……
そんなはずない
…だって、三郎さんも優しくってみんなをまとめるリーダーだった
そんな人が、怪しい薬なんて……関わってるはずない

「ちさちゃん、もう大丈…、」

臼田うすたさん」

「ちさちゃんから離れろ!ちさちゃん大丈夫?なんか変なことされてない?」

何か、絶対に誤解してる
ギュウ君から強制的に離され、距離を取らされた
そして、まるで私に何かしたかのように睨みつけている
さっきまで吐いていたんだろうその顔は、少しげっそりとしている

私を背に隠して、臼田うすたさんはギュウ君こそカジノから連れて来た人物と容易に察することができたようで、警戒心剥き出しだ
そんな彼に、臼田うすたさんと呼びかけても睨みつけるのを止めようとしなかった

「そっちこそ、ちさから離れろ。」と火に油な発言に、臼田うすたさんはさらに機嫌が悪くなった
バッチバチの2人、これをどう止めれば良いのか…

「気安く彼女の名前を呼ぶなんて生意気だな。」

「誘拐まがいの事してるのに、やけに威勢がいいですね。ちさは返してもらいます。」

「何か勘違いしているみたいだけど、君の望みは叶うことはないよ。もちろん、ちさちゃんが君と一緒にどこかへ行くなんて事も実現しない。」

この声……この感じ…
間違いない………

_____あのパーティーと同じ、潤さんに向けた敵意と同じだ……

どちらもお互いに誤解しているんだ
ギュウ君は悪いことなんてしてないし、薬とも関係ない
臼田うすたさんはすごく優しくって、頼れる人だ

(このままじゃ殴り合いになりそうだ…)
今だって、私の前に立つ臼田うすたさんの拳はグッと握り締められている
ギュウ君も身構えて、今から決闘でもすると言うのか……
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