逍遙の殺人鬼

こあら

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朝食を済ませた私は、空になったお皿を眺めてはため息をこぼした
凄く食べたかったのに…
今は跡形も無く綺麗になったお皿を持ち上げて、悲しげに流し台に置くのであった……

、食べたかったです……」

「作り方教えようか?小さい頃良くジャンと食べて時々食べたくなるのよね。」

「是非教えてもらいたいです!!結局ひとつも食べれなかったので、味が気になって気になって」

「ジャンキーな味よー。男は好きかもねー、ジャンもあのヒル男もよく食べてたわ。」

("男"…)「っそ、そうなんですね…。ぁ…もしかして、ジャンさんの好物だったり…するですかね…?」

何となく聞いただけで、別に深い意味とか無いのに…春さんは少し意地悪な顔して「気になる?」って聞いてくる
そんな質問に戸惑ってしまってる時点で、春さんの作戦勝ちだ









そんなんじゃないですと言う私に、今日はもう遅いからまた今度ねとズルい顔をしていた
ついでに聞きいただけなのに…と、ボソボソ言う私に「はいはい」と頭をポンポン軽く叩かれた

その横を「食った食った」と満足げに過ぎ去る朔夜さんに、そりゃあれだけ食べて満腹じゃなかったら1ヶ月の出費が果てしないよ…と武者震いした
まぁ、払ってないんですけどね……

「洗い物、私がしますね」

「いーのいーの、せっかくお風呂入ったんだからもう寝ちゃいなさい。早く寝たほうがお肌の為よ。」

「でも、春さんも仕事して疲れてるだろし…」

「子どもが余計な心配しなくていーの。ほら、ちゃっちゃかリビングを出る。」

あのあの…と背中を押されながら反抗しようとする私に「10時には寝なさい。」と指をさされて念押しされる
10時就寝なんて…中学生か……
リビングから締め出されて仕方なく自室に向かおうとする私に、待っていたぞと朔夜さんが立ちはだかっていた

(なんか嫌な予感がする…)

だから、目線をずらして見なかったことにした
私何も見てない
何も居ない
………と、スルーしようと企むも、敢え無く失敗

「女、あの男とどう言った間柄だ。」

「んもぉ…"あの男"って男ですか。そんなんじゃ分かりませんよ」

「あれだ…あの……、俺の影武者だ。」

「………それ、もしかして臼田うすたさんの事ですか…?」

そうだ!とまるでクイズ番組で正解した時みたいな感じで言ってくるから、鼓膜が破れるかと思った
耳の奥で"そうだ!"がこだましてる…

間柄と言われましても…とちょっと悩んだ
告白されたけどまだ返事をしていないから恋人ではないし、以前一緒に暮らしていた仲と言うのも微妙だ

「…雇用主…ですかね?」

「"雇用主"だと?」

ですけど。1週間だけお世話になって、それで…まぁ、今でも連絡を取ってはいます」

「俺は一緒に住んでいたと聞いていたが、まさかデリヘルか?」

「え?でり…なんです?と言うより、なんでそんなこと聞くんです?」

「さっき着信があったぞ。こんな夜中に電話するとは、不純だな。」

そう言うと見覚えるのあるスマホをポケットから取り出した
そして「ほら」と不在着信の履歴画面を見せてくる

(ん?)

それ…私のスマートフォンですよね?
なぜ故貴方様がお持ちになっておられるのですか?
それに加えて、なぜ我が物顔でいらっしゃるのですか?

それ私のですよねと指差すと「そうだ。」と頷く朔夜さん
部屋に置いておいたんですけどと自室を指差すと「知っている。」と言う朔夜さん
どうして持ってるんですか?と朔夜さんを指差すと「部屋に入ったからだ。」と呆れ顔をする朔夜さん

「何を言っているんだ。部屋に入らずして取れるわけが無いだろう。」

「すいません、それは分かるんですけど、分かるんですけど…。朔夜さんがが分かりません」

「着信音が鳴ったから、部屋に入ったまでだ。さっきっからそう言っているだろう。聴覚に難ありだな。」

「ごめんなさい、ちょっと理解が追いつかないです。全然分かりません。パンケーキとホットケーキの違いぐらい分かりません」

普通鳴ってたからって他人の部屋入りますか?
え…私がおかしいの?
部屋から着信音がしたら部屋に入って、スマホをポケットにしまうのが常識なんですか?

返してくださいとスマホを奪い返した
今度からポケットに入れて、肌見放さず持っておこうと誓った
部屋に入って、無くしたかも…って焦るのは御免だ
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