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俺は戸惑いを露わにする女を、半ば強引に外へと連れ出した
外は寒く普段着のまま出かければ、風邪を引きそうなほど冷え切った空気、それを煽るように吹き乱れる乾っ風が肌を攻撃するように体温を奪っていった
両手に自らの息を吹きかけて指先を温めている女は鼻先が若干赤らんでいた
確かに寒く、もし玄関先で上着を羽織りましょうと言う提案を呑まなかったら、そう思うだけでもっと身体が冷えた気がした
「どこへ行くんですか?行き先ぐらい教えて下さい」
「女、デートと言ったら何処だ。」
「っで、デート!?…ですか?そんなの、分からないですよ…」
「女、お前の年頃なら男女の逢瀬は当たり前だろ。色恋沙汰に疎い女だったとはな、あまり使えないな。」
テーブルに置いてあった朝餉を食べたとは言え、まだ腹が空いている
俺は人よりもよく食うと周りから言われていた
自分では認識した覚えはないが、こうも言われるのであれば間違ってはいないのだろう
運動は極力しない、文机に向かってひたすら執筆を進める
たまに立って書物を物色する時もある
それが主な1日の出来事
だが、決まって腹が空くのは大体同じ時間
そして食べないと頭は上手く回らず、書物も順調には進まない
五月蝿い女を連れて近くのファミレスに来店した
そう混んでいない店内に案内され広々とした4人席に着席する
「お腹空いてるんですか?」
「当たり前のことを聞くな。腹が減っていないのに来るわけ無いだろ、そんな事も分からないとはな。」
「朝食…食べましたよね?なのに、お腹空いてるのかなんて、私には分かりませんよ」
「大の大人が、しかも男があれっぽっちで足りる訳が無い。」
「でも春さんは"お腹いっぱいだ"って言ってましたよ」
その名前は嫌いだ
耳にタコができるぐらいに、春さん春さんって言い続ける女が正直鬱陶しい
そもそもあのオカマは"春"なんて名前ではない
春とは、愛称であって名称ではない
それなのに、何かと言えば「春さんが」「春さんに」「春さんは」と、まるで金魚の糞みたいだ
あんな女装男をちょこまかとうろつく意味が分からん
「おい女、お前あの外国人野郎とはどんな間柄だ。」
「"外国人野郎"……ですか?誰の事を言ってるんですか?」
「無駄に背の高い首に骸骨が彫ってある奴の事だ。女、もしかしてあいつの女なのか?」
「っちっ違いますよ!!ジャンさんは、そんなんじゃ……ないです」
その言い方では、何かあると言っているようなものだ
少し唇に力を入れて歪ませ、うつむくその表情は、若干曇り模様
あんなやつ、あんな鬼一口な男とまさか逢い引きしてるとは、驚嘆だ
認めたく無いような顔して否定する言葉は、行動と合致していない
昨晩も、女のせいでえらい目に遭った
________________________
『この手紙、何故あの女が…』
『泥棒とは、感心しないな』
『!?…人殺しだって褒められることじゃないだろ。俺に何の用だ。』
いつから居たか分からない
気配を無くしたそれに気付くのは容易なことではない
認知した途端に走る悪寒と言ったら、2度と味わいたくない物だ
以前も感じた事がある
あの時はもっと酷く体が震えるくらい、身の毛もよだつ恐怖心と言う名の奈落に突き落とされた
透が走って行く姿に好奇心を引かれ後を追った
その場には小さな姿をした悪魔が居た
秀逸と言われ神童ともてはやされていたそいつは、赤黒く汚染され佇んでいた
駆けつける透のことも虚ろな目で見て、同様など一切見せずにいる
そんなあいつの事が酷く恐ろしかった
俺よりも小さい存在だった
なのに、油を巻いた炎のように一種にして大きくなった
それからあいつに対する俺の認識は変わった
煙たい存在から悍しく惧れる存在へと動かざる得なかったんだ…
外は寒く普段着のまま出かければ、風邪を引きそうなほど冷え切った空気、それを煽るように吹き乱れる乾っ風が肌を攻撃するように体温を奪っていった
両手に自らの息を吹きかけて指先を温めている女は鼻先が若干赤らんでいた
確かに寒く、もし玄関先で上着を羽織りましょうと言う提案を呑まなかったら、そう思うだけでもっと身体が冷えた気がした
「どこへ行くんですか?行き先ぐらい教えて下さい」
「女、デートと言ったら何処だ。」
「っで、デート!?…ですか?そんなの、分からないですよ…」
「女、お前の年頃なら男女の逢瀬は当たり前だろ。色恋沙汰に疎い女だったとはな、あまり使えないな。」
テーブルに置いてあった朝餉を食べたとは言え、まだ腹が空いている
俺は人よりもよく食うと周りから言われていた
自分では認識した覚えはないが、こうも言われるのであれば間違ってはいないのだろう
運動は極力しない、文机に向かってひたすら執筆を進める
たまに立って書物を物色する時もある
それが主な1日の出来事
だが、決まって腹が空くのは大体同じ時間
そして食べないと頭は上手く回らず、書物も順調には進まない
五月蝿い女を連れて近くのファミレスに来店した
そう混んでいない店内に案内され広々とした4人席に着席する
「お腹空いてるんですか?」
「当たり前のことを聞くな。腹が減っていないのに来るわけ無いだろ、そんな事も分からないとはな。」
「朝食…食べましたよね?なのに、お腹空いてるのかなんて、私には分かりませんよ」
「大の大人が、しかも男があれっぽっちで足りる訳が無い。」
「でも春さんは"お腹いっぱいだ"って言ってましたよ」
その名前は嫌いだ
耳にタコができるぐらいに、春さん春さんって言い続ける女が正直鬱陶しい
そもそもあのオカマは"春"なんて名前ではない
春とは、愛称であって名称ではない
それなのに、何かと言えば「春さんが」「春さんに」「春さんは」と、まるで金魚の糞みたいだ
あんな女装男をちょこまかとうろつく意味が分からん
「おい女、お前あの外国人野郎とはどんな間柄だ。」
「"外国人野郎"……ですか?誰の事を言ってるんですか?」
「無駄に背の高い首に骸骨が彫ってある奴の事だ。女、もしかしてあいつの女なのか?」
「っちっ違いますよ!!ジャンさんは、そんなんじゃ……ないです」
その言い方では、何かあると言っているようなものだ
少し唇に力を入れて歪ませ、うつむくその表情は、若干曇り模様
あんなやつ、あんな鬼一口な男とまさか逢い引きしてるとは、驚嘆だ
認めたく無いような顔して否定する言葉は、行動と合致していない
昨晩も、女のせいでえらい目に遭った
________________________
『この手紙、何故あの女が…』
『泥棒とは、感心しないな』
『!?…人殺しだって褒められることじゃないだろ。俺に何の用だ。』
いつから居たか分からない
気配を無くしたそれに気付くのは容易なことではない
認知した途端に走る悪寒と言ったら、2度と味わいたくない物だ
以前も感じた事がある
あの時はもっと酷く体が震えるくらい、身の毛もよだつ恐怖心と言う名の奈落に突き落とされた
透が走って行く姿に好奇心を引かれ後を追った
その場には小さな姿をした悪魔が居た
秀逸と言われ神童ともてはやされていたそいつは、赤黒く汚染され佇んでいた
駆けつける透のことも虚ろな目で見て、同様など一切見せずにいる
そんなあいつの事が酷く恐ろしかった
俺よりも小さい存在だった
なのに、油を巻いた炎のように一種にして大きくなった
それからあいつに対する俺の認識は変わった
煙たい存在から悍しく惧れる存在へと動かざる得なかったんだ…
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