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前から横から後ろから、凄いわ凄いわのお褒めの言葉と私の肩を掴んでは揺さぶって来る
やめてやめてやめて……
今さっきの出来事で、自分自身も意外で慣れないことしたせいで気持ち悪いのに、そんなに豪快に揺らされたら火に油
おまけに、お酒臭い……
前はいいよ、ママさんは飲んでないし両手をパチパチしてるだけだからね
左側も…まぁいいよ、お酒は飲んでないけどいつまで食べてるん?いつまで居るん?ってぐらい居続けてる朔夜さんだし…
でも…、後ろと右側にズラッと居るオネエさま方は、2人とは違ってお酒臭いし何だか暑苦しい…
お仕事はどうしたよ?接客中ではないのですか?
ちょいと静かにひとりで余韻に浸らせておいてくださいよ…
そんな中、春さんから私を呼ぶ声が聞こえてゴクリと唾を飲み込んだ
手招きされて春さんの隣に座った
私の目の前には、先程無視したお得意様が座ってらっしゃる
(怒られる…よね)
当たり前だ
侮辱したも同然の態度をしたんだ
子どもみたいなことをしたとは思っているけど、私のした行動は間違ってはいないと思う…
でも、強気になれないのは自信が無いからだ
「ちーちゃん」
「ぁ、あの…春さん…」(ごめんなさい…私のせいでお店にも春さんにも迷惑かけてしまって……)
「そんな叱られた犬みたいにならないの。ほぉら、スマイルー。」
「っぇえ?っは、春さん?」
口角をグイッと指で持ち上げられて、強制的に笑ったような顔を作らされた
怒って…ない?
瞬きが多くなって、アホみたいに目を見開いた
お得意様の顔も、怒ってはいない
むしろ爽快と言ったように見受けられる
(へ?何で?)
いや、怒られないなら怒られないで良いんだけど…なぜ怒られないんだろう…か?
普通なら気分を害したとかでコップの中の水を、私に掛けたりするんじゃ…無いんだろうか?
「君は何者かな?」
「ぇ…、"何者"って聞かれましても…」(それを知りたいのは私自身なんだけど……。)
「私の甥っ子はずっと"何かが見える"、"襲ってくる"と怯えていてね。でもそれが幻覚だと分かっても、対処が出来なかったのだよ。薬を飲んでも改善されず、私も嫌気が差していた。」
「そう、なんですか…」
「医者に現実では無いことを理解させる様にと言われてね、親族は皆"そんな物はいない"と否定していたんだ。君は何故、あんなことをしたのかね?一歩間違えば、私の機嫌を損ねた事でこの店の得意先をうしなうことになったのじゃぞ。」
その通り…一歩間違えれば春さんやママさん、お店のみんなが困る事になってた
私が出しゃばらなければ春さんはいつも通り接待をこなして、春さんもお得意様もWin-Winな感じで終わっただろう
でも…それで終わりにしちゃいけない
目を瞑るのは簡単だ
見なかったことにして、無かったことにして片付けるのはとても簡単
勇気を持っても行動に移せなければそれまで
そもそも勇気って?って感じだ
そう言えば、私の好きな映画にも勇気に関する名言があったな
--勇気とは恐れない事ではなく、恐れよりも大切な事があると判断できることだ
勇者の命は短いが、慎重なだけでは生きている価値が無い
これからは君が何者であるか、何者になれるかの間を旅することになる
どう生きるか、どう生きたいかを見定めなさい--
素敵な言葉だ
行動に移したら怒られるとこになるだろうと、恐れは少なからずあった
でも…それよりも、もっと大切だと思った
ちゃんと向き合って、否定するのでは無く歩み寄って分かろうとする事の方が、ずっとずっと大事だと強く思った
「恐れよりも、もっと大切だと判断したからです。否定でなく寄り添うことの方が正解ではなくとも、間違いでは無いと思ったからです」
「ほぅ、賢い娘さんだな。その判断は正しいようだ。」
「"正しい"……ですか?…」
「まともな会話をした事が無かった甥っ子が、君の寸劇の後私に話しかけて来たんだ。ちゃんと理解できる会話をね、驚いたよ。医者は薬とカウンセラーの紹介しかしてくれなかったのに、今日初めて会った娘に治してもらえるなんてね。」
やめてやめてやめて……
今さっきの出来事で、自分自身も意外で慣れないことしたせいで気持ち悪いのに、そんなに豪快に揺らされたら火に油
おまけに、お酒臭い……
前はいいよ、ママさんは飲んでないし両手をパチパチしてるだけだからね
左側も…まぁいいよ、お酒は飲んでないけどいつまで食べてるん?いつまで居るん?ってぐらい居続けてる朔夜さんだし…
でも…、後ろと右側にズラッと居るオネエさま方は、2人とは違ってお酒臭いし何だか暑苦しい…
お仕事はどうしたよ?接客中ではないのですか?
ちょいと静かにひとりで余韻に浸らせておいてくださいよ…
そんな中、春さんから私を呼ぶ声が聞こえてゴクリと唾を飲み込んだ
手招きされて春さんの隣に座った
私の目の前には、先程無視したお得意様が座ってらっしゃる
(怒られる…よね)
当たり前だ
侮辱したも同然の態度をしたんだ
子どもみたいなことをしたとは思っているけど、私のした行動は間違ってはいないと思う…
でも、強気になれないのは自信が無いからだ
「ちーちゃん」
「ぁ、あの…春さん…」(ごめんなさい…私のせいでお店にも春さんにも迷惑かけてしまって……)
「そんな叱られた犬みたいにならないの。ほぉら、スマイルー。」
「っぇえ?っは、春さん?」
口角をグイッと指で持ち上げられて、強制的に笑ったような顔を作らされた
怒って…ない?
瞬きが多くなって、アホみたいに目を見開いた
お得意様の顔も、怒ってはいない
むしろ爽快と言ったように見受けられる
(へ?何で?)
いや、怒られないなら怒られないで良いんだけど…なぜ怒られないんだろう…か?
普通なら気分を害したとかでコップの中の水を、私に掛けたりするんじゃ…無いんだろうか?
「君は何者かな?」
「ぇ…、"何者"って聞かれましても…」(それを知りたいのは私自身なんだけど……。)
「私の甥っ子はずっと"何かが見える"、"襲ってくる"と怯えていてね。でもそれが幻覚だと分かっても、対処が出来なかったのだよ。薬を飲んでも改善されず、私も嫌気が差していた。」
「そう、なんですか…」
「医者に現実では無いことを理解させる様にと言われてね、親族は皆"そんな物はいない"と否定していたんだ。君は何故、あんなことをしたのかね?一歩間違えば、私の機嫌を損ねた事でこの店の得意先をうしなうことになったのじゃぞ。」
その通り…一歩間違えれば春さんやママさん、お店のみんなが困る事になってた
私が出しゃばらなければ春さんはいつも通り接待をこなして、春さんもお得意様もWin-Winな感じで終わっただろう
でも…それで終わりにしちゃいけない
目を瞑るのは簡単だ
見なかったことにして、無かったことにして片付けるのはとても簡単
勇気を持っても行動に移せなければそれまで
そもそも勇気って?って感じだ
そう言えば、私の好きな映画にも勇気に関する名言があったな
--勇気とは恐れない事ではなく、恐れよりも大切な事があると判断できることだ
勇者の命は短いが、慎重なだけでは生きている価値が無い
これからは君が何者であるか、何者になれるかの間を旅することになる
どう生きるか、どう生きたいかを見定めなさい--
素敵な言葉だ
行動に移したら怒られるとこになるだろうと、恐れは少なからずあった
でも…それよりも、もっと大切だと思った
ちゃんと向き合って、否定するのでは無く歩み寄って分かろうとする事の方が、ずっとずっと大事だと強く思った
「恐れよりも、もっと大切だと判断したからです。否定でなく寄り添うことの方が正解ではなくとも、間違いでは無いと思ったからです」
「ほぅ、賢い娘さんだな。その判断は正しいようだ。」
「"正しい"……ですか?…」
「まともな会話をした事が無かった甥っ子が、君の寸劇の後私に話しかけて来たんだ。ちゃんと理解できる会話をね、驚いたよ。医者は薬とカウンセラーの紹介しかしてくれなかったのに、今日初めて会った娘に治してもらえるなんてね。」
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