逍遙の殺人鬼

こあら

文字の大きさ
上 下
224 / 333

225

しおりを挟む
前から横から後ろから、凄いわ凄いわのお褒めの言葉と私の肩を掴んでは揺さぶって来る
やめてやめてやめて……

今さっきの出来事で、自分自身も意外で慣れないことしたせいで気持ち悪いのに、そんなに豪快に揺らされたら火に油
おまけに、お酒臭い……
前はいいよ、ママさんは飲んでないし両手をパチパチしてるだけだからね
左側も…まぁいいよ、お酒は飲んでないけどいつまで食べてるん?いつまで居るん?ってぐらい居続けてる朔夜さんだし…

でも…、後ろと右側にズラッと居るオネエさま方は、2人とは違ってお酒臭いし何だか暑苦しい…

お仕事はどうしたよ?接客中ではないのですか?
ちょいと静かにひとりで余韻に浸らせておいてくださいよ…
そんな中、春さんから私を呼ぶ声が聞こえてゴクリと唾を飲み込んだ









手招きされて春さんの隣に座った
私の目の前には、先程無視したお得意様が座ってらっしゃる
(怒られる…よね)

当たり前だ
侮辱したも同然の態度をしたんだ
子どもみたいなことをしたとは思っているけど、私のした行動は間違ってはいないと思う…
でも、強気になれないのは自信が無いからだ

「ちーちゃん」

「ぁ、あの…春さん…」(ごめんなさい…私のせいでお店にも春さんにも迷惑かけてしまって……)

「そんな叱られた犬みたいにならないの。ほぉら、スマイルー。」

「っぇえ?っは、春さん?」

口角をグイッと指で持ち上げられて、強制的に笑ったような顔を作らされた
怒って…ない?
瞬きが多くなって、アホみたいに目を見開いた

お得意様の顔も、怒ってはいない
むしろ爽快と言ったように見受けられる
(へ?何で?)

いや、怒られないなら怒られないで良いんだけど…なぜ怒られないんだろう…か?
普通なら気分を害したとかでコップの中の水を、私に掛けたりするんじゃ…無いんだろうか?

「君は何者かな?」

「ぇ…、"何者"って聞かれましても…」(それを知りたいのは私自身なんだけど……。)

「私の甥っ子はずっと"何かが見える"、"襲ってくる"と怯えていてね。でもそれが幻覚だと分かっても、対処が出来なかったのだよ。薬を飲んでも改善されず、私も嫌気が差していた。」

「そう、なんですか…」

「医者にことを理解させる様にと言われてね、親族は皆"そんな物はいない"と否定していたんだ。君は何故、あんなことをしたのかね?一歩間違えば、私の機嫌を損ねた事でこの店の得意先をうしなうことになったのじゃぞ。」

その通り…一歩間違えれば春さんやママさん、お店のみんなが困る事になってた
私が出しゃばらなければ春さんはいつも通り接待をこなして、春さんもお得意様もWin-Winな感じで終わっただろう
でも…それで終わりにしちゃいけない

目を瞑るのは簡単だ
見なかったことにして、無かったことにして片付けるのはとても簡単
勇気を持っても行動に移せなければそれまで

そもそも勇気って?って感じだ
そう言えば、私の好きな映画にも勇気に関する名言があったな

--勇気とは恐れない事ではなく、恐れよりも大切な事があると判断できることだ
勇者の命は短いが、慎重なだけでは生きている価値が無い
これからは君が何者であるか、何者になれるかの間を旅することになる
どう生きるか、どう生きたいかを見定めなさい--

素敵な言葉だ
行動に移したら怒られるとこになるだろうと、恐れは少なからずあった
でも…それよりも、もっと大切だと思った
ちゃんと向き合って、否定するのでは無く歩み寄って分かろうとする事の方が、ずっとずっと大事だと強く思った

「恐れよりも、もっと大切だと判断したからです。否定でなく寄り添うことの方が正解ではなくとも、間違いでは無いと思ったからです」

「ほぅ、賢い娘さんだな。その判断はようだ。」

「"正しい"……ですか?…」

「まともな会話をした事が無かった甥っ子が、君の寸劇の後私に話しかけて来たんだ。ちゃんと理解できる会話をね、驚いたよ。医者は薬とカウンセラーの紹介しかしてくれなかったのに、今日初めて会った娘に治してもらえるなんてね。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

【R18】短編集【更新中】調教無理矢理監禁etc...【女性向け】

笹野葉
恋愛
1.負債を抱えたメイドはご主人様と契約を (借金処女メイド×ご主人様×無理矢理) 2.異世界転移したら、身体の隅々までチェックされちゃいました (異世界転移×王子×縛り×媚薬×無理矢理)

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

女の子がいろいろされる話

ききょきょん
恋愛
女の子がいじめらたり、いじられたり色々される話です。 私の気分であげるので、性癖とか方向性はぐちゃぐちゃです、よろしくお願いします。 思いついたら載せてくゆるいやつです。。

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

処理中です...