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開店時間になるとオネエさま方は忙しなくしていた
お得意様が来るとかで、いつも以上に気合いが入っているみたいだ
実はこのスナックは意外にもそこそこ人気のある場所らしく、お店を開いてすぐに来客が来た
ママさんを始めとして春さんや従業員全員がいらっしゃいませと、活気溢れた声で出迎える
穏やかなムードのBGMが心地良く、会社で疲れ切っているであろう体の緊張を解し、日常とはまた違った場所なのだと認知させてくれる
見学している私は、漏れなく接客対応なんかも見ていた
テンポ良く相槌をし、軽くボディータッチをしている
程よくお酒を進めて相手の余裕を無くし、機嫌の良くなったお客にちょっと高めのお酒を出す
春さんの見事な手捌きに圧倒されまくりだ
「ちーちゃん大丈夫?疲れたら無理しないでいいのよ。」
「私は大丈夫です。お得意様はまだ来ないんですか?」(出来れば普通のお客さんとお得意様との対応の違いを見ておきたいんですが…)
「そうね~、もうそろそろかしらね。」
片手を頬に添えて少し考える様に壁掛け時計を見るその姿さえ、まるで写真集に収めたかのように美しいママさんは「もう来てもいい頃なんだけどね。」と少し困った様子だ
ちょうどその頃カランッと鐘が鳴った
ようやくお得意様のご登場か?と扉の方を見ればスーツなんか着ていないラフな格好の男性が入ってきた
ママさんの方を見れば、どうやら一見さんだったようで「何になさいますか?」とカウンター席に着席するお客さんに問うた
ビールでと言うと朔夜さんを挟んで私を2度見した
じっと私を見ては、はぁ…とため息混じりに額を抑えていた
人の顔見てため息とか、なんとも失礼な人だ
私の顔面になにかついてるんですか?それとも容姿のことでため息をつかれているのでしたら、私にはどうしようもない事ですので
「ちーちゃんちーちゃん、ほら。」
「はい?」
「例のお得意様が来たわよ。今ちょうど春ちゃんが接待してるわ。」
「本当ですか?」(どこどこ?)
きらびやかな春さんの隣に、だいぶお腹の肥えた口髭が特徴のおじさんが座っていた
そして何故か、その横にはまだ年端もいかない小さな男の子も座っていた
スナックに子ども同伴だなんて、少し変だと思った
お得意様だから特別なのかな?って思って見守った
すると、更に妙な事が起こる
隣に座っている男の子は何も無い所に手を振ったり、怖がったりしてみせる
なにか見えているのかな?
演技とは思えないほど、その顔は酷く怯えているのにおじさんはそんな事気づかないかのように無視している
当然春さんは気づいているが、どうすればいいのか分からないようだった
男の子を連れて来たのは初めてなのかな?…
「キツネがぼくを食べようとしてる」と隣に座るおじさんにすがりついていた
当然お店には狐どころか動物一匹居ない
あの男の子だけ見えているみたいだ
そして、見えない狐に怯えている
「うるさいぞ!話の邪魔をするな!」と男の子を叱りつけるおじさん
その怒鳴り声が、昔の私を叱る施設の人と重なって聴こえた
そのせいで体が何故かビクついた
「病気だな、可哀想に。」
「まだ小さいのに…残念だわね。」
「周りの環境もあるだろうし、あれは治らないだろうな。」
「見て、春ちゃんも困ってるわ。お得意様を相手にしなきゃいけないけど、男の子があんなに怯えてちゃね…。」
周りの環境?……
男の子が狐に怯えて恐がっているのに春さんとの会話に夢中になっていること?
子どもの話に耳を傾けないのはどの大人も同じなんだわ…
そう思った私は体が自然と動いてしまっていた
カウンター席から離れて、春さんの居る席へと向かう
途中ママさんや朔夜さんの私を呼び止める声は聞こえたけど、不思議と止まらなかった
お得意様が来るとかで、いつも以上に気合いが入っているみたいだ
実はこのスナックは意外にもそこそこ人気のある場所らしく、お店を開いてすぐに来客が来た
ママさんを始めとして春さんや従業員全員がいらっしゃいませと、活気溢れた声で出迎える
穏やかなムードのBGMが心地良く、会社で疲れ切っているであろう体の緊張を解し、日常とはまた違った場所なのだと認知させてくれる
見学している私は、漏れなく接客対応なんかも見ていた
テンポ良く相槌をし、軽くボディータッチをしている
程よくお酒を進めて相手の余裕を無くし、機嫌の良くなったお客にちょっと高めのお酒を出す
春さんの見事な手捌きに圧倒されまくりだ
「ちーちゃん大丈夫?疲れたら無理しないでいいのよ。」
「私は大丈夫です。お得意様はまだ来ないんですか?」(出来れば普通のお客さんとお得意様との対応の違いを見ておきたいんですが…)
「そうね~、もうそろそろかしらね。」
片手を頬に添えて少し考える様に壁掛け時計を見るその姿さえ、まるで写真集に収めたかのように美しいママさんは「もう来てもいい頃なんだけどね。」と少し困った様子だ
ちょうどその頃カランッと鐘が鳴った
ようやくお得意様のご登場か?と扉の方を見ればスーツなんか着ていないラフな格好の男性が入ってきた
ママさんの方を見れば、どうやら一見さんだったようで「何になさいますか?」とカウンター席に着席するお客さんに問うた
ビールでと言うと朔夜さんを挟んで私を2度見した
じっと私を見ては、はぁ…とため息混じりに額を抑えていた
人の顔見てため息とか、なんとも失礼な人だ
私の顔面になにかついてるんですか?それとも容姿のことでため息をつかれているのでしたら、私にはどうしようもない事ですので
「ちーちゃんちーちゃん、ほら。」
「はい?」
「例のお得意様が来たわよ。今ちょうど春ちゃんが接待してるわ。」
「本当ですか?」(どこどこ?)
きらびやかな春さんの隣に、だいぶお腹の肥えた口髭が特徴のおじさんが座っていた
そして何故か、その横にはまだ年端もいかない小さな男の子も座っていた
スナックに子ども同伴だなんて、少し変だと思った
お得意様だから特別なのかな?って思って見守った
すると、更に妙な事が起こる
隣に座っている男の子は何も無い所に手を振ったり、怖がったりしてみせる
なにか見えているのかな?
演技とは思えないほど、その顔は酷く怯えているのにおじさんはそんな事気づかないかのように無視している
当然春さんは気づいているが、どうすればいいのか分からないようだった
男の子を連れて来たのは初めてなのかな?…
「キツネがぼくを食べようとしてる」と隣に座るおじさんにすがりついていた
当然お店には狐どころか動物一匹居ない
あの男の子だけ見えているみたいだ
そして、見えない狐に怯えている
「うるさいぞ!話の邪魔をするな!」と男の子を叱りつけるおじさん
その怒鳴り声が、昔の私を叱る施設の人と重なって聴こえた
そのせいで体が何故かビクついた
「病気だな、可哀想に。」
「まだ小さいのに…残念だわね。」
「周りの環境もあるだろうし、あれは治らないだろうな。」
「見て、春ちゃんも困ってるわ。お得意様を相手にしなきゃいけないけど、男の子があんなに怯えてちゃね…。」
周りの環境?……
男の子が狐に怯えて恐がっているのに春さんとの会話に夢中になっていること?
子どもの話に耳を傾けないのはどの大人も同じなんだわ…
そう思った私は体が自然と動いてしまっていた
カウンター席から離れて、春さんの居る席へと向かう
途中ママさんや朔夜さんの私を呼び止める声は聞こえたけど、不思議と止まらなかった
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