逍遙の殺人鬼

こあら

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うずく手を鎮めて、ドキドキするこの心を落ち着かせて静かに終わるのを待っている
着々と真っ直ぐに進化された髪の毛は、色味こそ変わらないが見た目は完全に違っていた

春さんが髪の毛を離す度に、パラパラと軽い音を経てる髪は本当に私のものなのか?と疑ってしまう程サラサラが充満していた
私の髪の毛が長いせいで、時間がかかっている
今まで鏡で見ていた髪は胸下ぐらいだったのに、春さんの魔法のような工程によっておへそ辺りまで伸びた

あら不思議、私こんなに長かったんですね髪の毛
「でーきた!」と春さんの言葉を合図に、私は思いっきし根本から毛先へと指で髪をいた









「こんな真っ直ぐの髪の毛見たことないです!すごいすごい!!」

「まるで火を与えた原始人みたいね。最後にオイルつけようか。」

「サラサラ!絡まらない!広がらない!本当に魔法みたいです!!」

「こうしてストレートにして下ろすしても、似てないね。」

「え、」("似てない"って……)

春さんが言い放った言葉が引っかかった
誰に似てないんですか?って聞こうと思ったのに、何故かその答えを知るのが怖くて思うように言えなかった

「オーケー」と私の方を軽く叩くと、完璧と片付けをし始めた
聞こうとしているのに言い出せずに、春さんを見ては床を見て、また春さんを見てる
その挙動不審な態度に「どうかした?」と首を傾げてくる
聞こう、聞くんだと決心づいたはずなのに、私の口から出た言葉は想いを隠した

「っ昨日、なんですけど…。どうしてジャンさんは教会に来たんでしょうか…」(聞きたかったことだけど、だけど……)

「あーまんまし知らないんだけどね、何か調べてたものを辿っていったらあの教会に行き着いたらしくて?それで偵察も兼ねて行くって聞いてたんだけど、ほら、普通じゃ怪しまれるじゃない?だからジャンは持ち前の面で外国の出資者に、アタシはその通訳人として行ったって訳。」

「ジャンさんは何を調べてるんですか?」

「それを話すのはまだちょっと早いかなー。気になるなら、ジャンに聞くことね♪」

ウィンクしてくる春さんに呆気に取られる
直接聞くのはね…と、若干引き気味の私は頭を抱えて脳内葛藤している

知りたい…でも知るのが怖い
ジャンさんに真っ当から聞いたら、ちゃんと答えてくれるかな?
知りたいことを全部、話してくれるかな?…

(また"うるさい"って、薬飲まされちゃうかな…。)
そう思うだけで泣けてきちゃう…
私の弱虫

真正面から、彼の目を見て話すこともできないなんて…私の口はなんのためについているのか
なんのために目がついているのか…

「…教会、あそこに居た人達は…みんな……」

「かもしれないわね。アタシはちーちゃんの救出が最優先だったから、その後どうなったのかは知らないのよ。もしかしたら、ひさしなら知ってるかもね。ジャンには聞きづらいんでしょ?」

「ジャンさんは…私の事嫌ってるので…。嫌いな人との会話って苦痛って聞きますし…」

「嫌いってなんだろうね。好きも嫌いもその人の事を考えてるから感じるもので、無関心な人なんてそもそも記憶に残らないじゃない?好きと嫌い、背中合わせなだけで割と差の無いものなのかもしれないわよ。」

「……でも、話したくないって言われるのが……怖いみたいです…」

少しうつむく私に「そお?」と、ヘアオイルをつけてくれる
春さんはアドバイスをする訳でも後押しする訳でも無く、ただ見守るように聞いてくれる
そんな人、今まで居なかったからこそばゆかった
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