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私の腕を掴むジャンさんの顔を見上げれば、オレンジ色に輝く太陽と重なって、逆光によってあやふやに見せてくる
どうして腕を掴むのか?
どうして私の行動を阻むのか?
疑問は尽きない
私と臼田さんの結婚式に招待されて来たんだろうか?
ジャンさん?と声を掛けても、返事をするどころか微動だにしない
腕を掴む手を放そうと試みるも、石像のように動かない
まるで、私の腕を石膏に挿し込んだみたいにひとりもがく私と、それを見ているだけのジャンさんが居た
『放して下さい、ジャンさん。…ジャンさん?』
そう問いかけているのに、返ってきたのは私への返答ではなく殺意で鋭利な物だった
それは、私の腹目掛けてあっと言う間に移動し、一瞬の出来事で私はその衝撃のまま後ろに倒れた
倒れた私の背後に少しの振動が伝わる
目を開けたままの私は、雲1つない空が回転するのを見届けてッハとした
痛みはなかった
当然、これは夢なのだから痛みなんてある訳無い
少し体を起き上がらせて腹部を確認すれば、何も刺さっていなかった
血も出ていないどころか、いつの間にか変わっていた白いワンピースを彩るように藍の花がお腹に置かれていた
まるでそれが血の代わりと言わんばかりに、鮮やかな発色を見せていた
体を完全に起き上がらせると、小さな花は地面へと落下し若草色に生えている草に重なった
また移動した場所は、遠くの方まで平坦の草原で真っ白なデイジーが咲き誇り、緩やかな風の吹く所だった
建物なんか無くって、都会の真逆を彷彿とさせる
その何とも開放的な場所を歩けば、自分が裸足だったことに気付く
奥の奥まで上を向いて咲くデイジーが、風に遊ばれて揺れている
風は遊びたがりの様で、私の髪までも持って行く
その羽ばたきを抑えては、辺りを見渡した
どうやら臼田さんは居ないようだ
さっきのはやっぱり夢だったんだと、少し落ち込んた
デイジーとは違って、下を向く私を誰かが後ろから静かに抱き締めてくれた
『…臼田さん?』(やっぱり居たんだ)
そう呼び掛けて振り返れば、臼田さんの姿は無く、代わりに髪の毛を黒くしたジャンさんが居た
ビックリした
また刺されるかもと警戒した
少し身構える私は、ジャンさんから距離を取るように後退った
……なのに、ジャンさんが近づいてくるから急に怖くなる
横から吹く風はまるで緊張感を煽るようだった
黒くなった髪を靡かせながら歩み寄っては、私に手を伸ばした
今度こそ殺される…そう思って目を瞑った
強く強く瞑って、どうせ夢だから痛くない…と心を支えてみれば鋭利なものが刺さる衝撃なんか来なくって、逆に優しく私の頬に触れた
反射的に目を開ければそれはジャンさんの手で、両頬に添えていた
『ジャン…さん……?』
問いかけに応じてくれないジャンさんは、少し前かがみになって顔を傾けた
両頬を捉えた手で上を向かせては、彼は目を閉じた
殺気なんて無くって、近づくのは何度目かの彼の唇だった
互いの唇が離れても私は目をパチパチさせることしか出来なくって、その後ジャンさんから抱き締めて来たっていうのに何も言えなかった
どうすれば良いのか分からない私は、模範解答を必死に探した
話しかけた方がいいのか?
それとも離れた方がいいのかな?って……
でも、彼から抱きしめてくれた事が無性に嬉しいという感情を呼び起こして、ジャンさんの背中に手をたどたどしく回してみる
ジャンさんは何も言わない
ただ風の音とデイジーの花びらが空を舞っているだけだった
だからもう少し力を入れて抱き締めた
ジャンさんの存在を確かめるみたいに触れたのに、その途端に消えてしまった
今確かに抱き締めていたはずなのに、彼の姿は跡形も無く失くなっている
それだけでは終わらず、青々と咲き広がっていたデイジーの草原は無くなり冷たいタイルの様な存在が足の裏を支配した
どうして腕を掴むのか?
どうして私の行動を阻むのか?
疑問は尽きない
私と臼田さんの結婚式に招待されて来たんだろうか?
ジャンさん?と声を掛けても、返事をするどころか微動だにしない
腕を掴む手を放そうと試みるも、石像のように動かない
まるで、私の腕を石膏に挿し込んだみたいにひとりもがく私と、それを見ているだけのジャンさんが居た
『放して下さい、ジャンさん。…ジャンさん?』
そう問いかけているのに、返ってきたのは私への返答ではなく殺意で鋭利な物だった
それは、私の腹目掛けてあっと言う間に移動し、一瞬の出来事で私はその衝撃のまま後ろに倒れた
倒れた私の背後に少しの振動が伝わる
目を開けたままの私は、雲1つない空が回転するのを見届けてッハとした
痛みはなかった
当然、これは夢なのだから痛みなんてある訳無い
少し体を起き上がらせて腹部を確認すれば、何も刺さっていなかった
血も出ていないどころか、いつの間にか変わっていた白いワンピースを彩るように藍の花がお腹に置かれていた
まるでそれが血の代わりと言わんばかりに、鮮やかな発色を見せていた
体を完全に起き上がらせると、小さな花は地面へと落下し若草色に生えている草に重なった
また移動した場所は、遠くの方まで平坦の草原で真っ白なデイジーが咲き誇り、緩やかな風の吹く所だった
建物なんか無くって、都会の真逆を彷彿とさせる
その何とも開放的な場所を歩けば、自分が裸足だったことに気付く
奥の奥まで上を向いて咲くデイジーが、風に遊ばれて揺れている
風は遊びたがりの様で、私の髪までも持って行く
その羽ばたきを抑えては、辺りを見渡した
どうやら臼田さんは居ないようだ
さっきのはやっぱり夢だったんだと、少し落ち込んた
デイジーとは違って、下を向く私を誰かが後ろから静かに抱き締めてくれた
『…臼田さん?』(やっぱり居たんだ)
そう呼び掛けて振り返れば、臼田さんの姿は無く、代わりに髪の毛を黒くしたジャンさんが居た
ビックリした
また刺されるかもと警戒した
少し身構える私は、ジャンさんから距離を取るように後退った
……なのに、ジャンさんが近づいてくるから急に怖くなる
横から吹く風はまるで緊張感を煽るようだった
黒くなった髪を靡かせながら歩み寄っては、私に手を伸ばした
今度こそ殺される…そう思って目を瞑った
強く強く瞑って、どうせ夢だから痛くない…と心を支えてみれば鋭利なものが刺さる衝撃なんか来なくって、逆に優しく私の頬に触れた
反射的に目を開ければそれはジャンさんの手で、両頬に添えていた
『ジャン…さん……?』
問いかけに応じてくれないジャンさんは、少し前かがみになって顔を傾けた
両頬を捉えた手で上を向かせては、彼は目を閉じた
殺気なんて無くって、近づくのは何度目かの彼の唇だった
互いの唇が離れても私は目をパチパチさせることしか出来なくって、その後ジャンさんから抱き締めて来たっていうのに何も言えなかった
どうすれば良いのか分からない私は、模範解答を必死に探した
話しかけた方がいいのか?
それとも離れた方がいいのかな?って……
でも、彼から抱きしめてくれた事が無性に嬉しいという感情を呼び起こして、ジャンさんの背中に手をたどたどしく回してみる
ジャンさんは何も言わない
ただ風の音とデイジーの花びらが空を舞っているだけだった
だからもう少し力を入れて抱き締めた
ジャンさんの存在を確かめるみたいに触れたのに、その途端に消えてしまった
今確かに抱き締めていたはずなのに、彼の姿は跡形も無く失くなっている
それだけでは終わらず、青々と咲き広がっていたデイジーの草原は無くなり冷たいタイルの様な存在が足の裏を支配した
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