逍遙の殺人鬼

こあら

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燭台に照らされる夕餉ゆうげを食べる為に、私は自分の席についた
木と木が擦れ合う鈍い音を鳴らして、お待たせしましたと言わんばかりに院長に会釈した

何故だか、クリスチャンさんの視線を感じる
彼を見ていないので確認が取れたわけじゃない
そう遠くない場所に座る私は、平常心を保つ為に必死で彼から目線を逸らしていた

(今目を合わせるのは…なんだか良くない気がする)
そう心の中の私が呟くものだから、無駄に緊張してしまうではないか
そのせいか、なんとなく瞬きの回数まで多くなってしまっている気がする









食事中は会話をしてはならない
それがきまりのはずだった

なのに…何故、クリスチャンさん(プラス通訳者)は院長と話している
院長も止めようとはせず、会話を進める
内容は教会についてが多くて、退屈な話だった

(話をして良いのなら、私もシスターシオリとお話したい…。)

でも、院長が話をしているからと、それに続いて他のシスター方、ましてや下っ端の私が声を出してはいけないと理解していた
シスターシオリと目が合うが、何故かウィンクを投げかけてくる

はて…それはどういう意味でしょうか?………
解読不能と首を少し傾けると、瞳を揺らして"あれ"と示してくる
それはクリスチャンさん達のことで、さらに理解不能にさせてくる
眉をひそめてさらに首を貸しがると「シスターちさ。」と院長から声をかけられた
反射的に背筋は正され、シスターシオリから院長へと顔を向けた

「はい、院長」

「クリスチャンさんは今日、この教会にお泊まりになります。貴方はこのお二方を客室にお連れしたら、今夜見回りを行ってください。」

「…私、がですか…?」

「何か問題でもあると言うのですか。」

(いや…そうじゃないけと…。)
何故私が案内して夜回りもせねばならないのか…
案内は、まぁ…分かる
英語話せるし、教会を案内したから私を指名してくる理由も理解できる

だ・け・ど、夜回りは解せぬ…………………
夜になると一層物々しいこの教会を見回るなんて…畏怖いふしてしまう

まだシスターシオリが言っていた話が忘れられない
倉庫の話なんか、聞いてから近寄らないようにしたし、見回りなんてしたくないから逃げていたのに…
遂に…それの努力も虚しく、見習いシスターの私が大量の鍵を手に、見回り&施錠をしなければならない…

(嘘でしょ………。)

私は院長にバレないように、ひっそりとため息をこぼした
正面を見れば、シスターシオリが羨ましそうに見ていた

何なら変わってあげたい
いや、お譲りしたい…
こんな面倒な役目は御免だ
寝るのも遅くなるし…怖いし…

『夜は、なるべく出歩かないようにして下さい。何か不都合や用がある場合は、呼び出し鈴を鳴らしてください。』

『ご丁寧にありがとうね。入浴は誰がしてくれるのかな?』

『はい?入浴はご自由にお使いいただいて構いませんが…』

理解できていない私にクリスチャンさんは言った
体を洗ってくれる人はいないのか?と
どこの貴族だ?そんなことまで私達の仕事なのか?………

メイドとか人を雇って、お風呂から着替えまで身の回りのことをやってもらっていたのだろうか?
たいそうお金持ちだとは聞いていたけど、そんな現代離れした生活を送っていたとは……

『…あの、教会ここではそういったことは…』

『君でいいよ、シスター。私の体を流してくれませんか?』

『っえ!?…っあ、あの…………』
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