逍遙の殺人鬼

こあら

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私は朝からとても気分が良かった
それは勿論チョコレートのおかげで、今も修道服の内側に隠し持っている
これを独り占めするのは勿体無い
きっと、ギュウ君もまだ食べたいと思っているであろう

それに、あの子にもあげたい
そんな思いでいると、シスターシオリに感づかれた

「何かいいことでもあったのですか?」

「シスターシオリ、実は…ちょっとこちらに。…あのですね、これどうぞ」

「”チョコレート”?なんです、これは?黒い石鹸ですか?甘い香りがします。」

「これは食べ物です。甘くて、疲れた時に食べると一瞬で疲れが消えるんです!」

「なるほど。つまり、甘い薬草のようなものですね。」

「いえ、違います。そうではなくて、お菓子です」









「ギュウ君ギュウ君、昨日どうだった?」

「どうって、何が?」

「何って、…だよ。食べてみた?美味しかったでしょ?」

「そうだな。分かったから、落ち着けって。」

これが落ち着いていられる訳ない
この教会に来て、甘いものといえば果物ばかり
果物は全然好きだから嫌じゃないけど、やっぱりお菓子が食べたかった

唯一作れたのは、ボランティア用のクッキーだけ
しかも、つまみ食いなど許される訳もなく、失敗した奴を泣きながら食べていた

「それより、院長が探してたぞ。早く行った方がいいんじゃないか?」

「院長が?なんだろう…私何かしたかな……?」

「例のクリスチャンさんが来たとかなんとか。茶でも運べばいいんじゃないか?」

そう言って自分の仕事をこなすギュウ君にチョコレートをあげ、お茶汲みをした
院長室をノックして中に入ると、院長と金髪の髪の毛が輝く後ろ姿が目に入ってきた
(この人がさんかな?)
「お入り」の言葉に従って、お茶を運んだ

お客さんに、そして院長にお茶を渡した
そして、多分通訳?の人にも
自分用だったが、お客様優先なので差し上げます

「シスターちさです。英語ができるので呼びました。」

(そうなんだ…。何も言われてませんけどね…。)

「そうですか、それは助かります。」

「シスターちさ、クリスチャンさんに教会を案内して差し上げなさい。」

「分かりました、院長」

私はご指示に従って、案内をする相手を見た
その相手はどこか彼に似ていた
輪郭や鼻の形、目元に唇
違うのはその髪色だけ

クリスチャンさんを見ると彼と重なって見える
それが、無駄に私を動揺させた

「どうした、早くお連れしないか。」

「…すいません、院長。では……」

私…起きてるよね?
幻覚とかじゃないよね?
それとも他人の空似?

歩く私の後ろを着いて来るクリスチャンさんは、背丈も同じくらいに思える
彼じゃない、そんな訳ない
だって、見つけられる訳ないもん…

『ここが、礼拝堂になります。ここに居られるのが聖母マリア像で、ヨーロッパから持ち込まれた貴重なものになっています。そして、ここが懺悔ざんげを行う場所です』

『”懺悔ざんげ”?』

『はい、この教会ではこのように完全な部屋として、外に漏れぬように行われています。』(って言っても、使われたところ一回も見たことないけど…。)

自らの罪を告白する場所
人は皆、自分の過去に罪を犯していて、それに気づき悔い改めることが大切だと
その一歩が告白、つまり懺悔ざんげ

今告白する罪があると言うなら…淡い期待を抱いてしてしまっていることかもしれない
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