逍遙の殺人鬼

こあら

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起き上がった私は、飽きたように夜空を見る潤さんを見た
彼がよく分からない
まだ数回しか会っていないんだから、当然ではあるが、本当に分からない

今までずっと優しい人だと思ってた
ピンチな私を助けてくれる、謎が多い人
だけど、それは間違いだったかもしれない

「ねえ、レディは今どんな心境?」

今日3度目の同じ質問
そんなことを聞いて、潤さんは一体何がしたいのか?

そんな中、私の耳には誰かが近づく足音が聞こえた
まずい、こんな夜中に密会していたことが知れたらきっと怒られる
そんな思いから潤さんの腕を引っ張って、木の影に隠れた
いくら一時的な見習いシスターと言えど、ここは教会の敷地内
神聖な場所で、密会だなんて許されない









「何してるんだっ、」

「シッ!見回りです。こんなところ見られたら、怒られます」

しかも、運悪くシスターエリが見回りしてる
彼女に見つかったら、絶対にやばい
シスターシオリならともかく、今は見つからない様に慎重にならねば…

そう思っているのに、潤さんはそれすらも楽しもうとしている
木からシスターエリを気にする私に「ねえ」と話しかけてくる
お願いだから、今だけはおとなしくしていてくれませんかね?

今見つかったら、大目玉を喰らいます。だから静かにして下さい、そう潤さんに言った
体の向きを変えて、ちゃんとしっかりと伝えた
なのにまたニヤッと笑っては、楽しそうにその瞳を輝かせた

「レディは静かにできるのかい?どんな状況でも。」

「勿論です。でなきゃ見つかっちゃうじゃないですか」

静かに、潤さんに叫んだ
この苛立つような感情のまま、静かに放つのはなんとも矛盾ほこたてな話だった
その様子を明らかに楽しんでいる潤さんは、徐に私に顔を近づける
それに身体が強張って、後ろに下がるが立派な木によって阻まれた

またキスされるのか?そう思う私は、下を向いた
嫌だとかしたくないだとかの前に、こんな状況で、教会の敷地内でする様な行為じゃない

そんな私の乱れる髪の毛を耳に掛ける潤さんは、その生暖かい舌を使って露わになった私の耳たぶを舐めた
まさかの出来事に、私はふいに声が出そうになった
でもそれを止めたのは潤さんだった

「この程度で根を上げられたらつまらないよ、レディ。」

「…うごっ………」(いったい何を…?)

「”静かにできる”んでしょ?だったらちゃんと有言実行しないと、シスターが来てしまうよ。」

私の口元を手で覆って抑えて、私が折れないようにしてくる
強制的に口を開かせないようにして、好き勝手にしている
息を吹きかけたり、耳たぶを噛んだり、やりたい放題だ

しまいには耳を離れて首筋にその暖かい感触を押し付けてくる
その間から、ぬるっとしたものが出てきては舐めてくる
くすぐるみたいに、這うそれに慣れていない私は驚きのあまり身体が反応した

「…っふぅ………っ」

「静かに、バレるよ。」

「っんう…っ……」

「今もほら、あんな近くに居る。今声を出したら、確実にバレてしまうね。」

目を強く瞑って必死に耐えた
体の前で硬く握った拳に頼って、必死に耐えた
(お願い…早く行って……)

そう願うことしかできない、無力な私
今も耐えることしかできていない、それだけで精一杯だ

(足音が遠のく?やっと行ってくれた?)
そう安堵したのも束の間
握りしめる拳が緩み、まぶたを開こうとした瞬間、痛みが首に走った
その衝撃に、私は負けてしまった

「っい!」

「ん?何かしら?」

(しまった…、つい声が……)

「この辺で聞こえたのだけれど、」

私は震える手でこれ以上声を漏らさないように抑えた
シスターエリが持っているであろう、明かりがこちらを照らそうとしている

私が耐えられなかったから…どうしよう
そんな後悔しか生まれなかった

「変ね。もっと中かしら?」

(まずい……すぐそこまで来ている)

もうおしまいだ
そう、無理矢理覚悟を決めた私は、神の救いなのかたまたまなのか助けを得ることができた
どこにいたのか分からなかったが、猫が明かりにつられてシスターエリのところへ行く
”にゃーー”と可愛らしい声を出すこの子のおかげで、私は助かりそうです

「あら、猫だったのね。なら、問題なし。」

(はあぁ…よかった……)
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