132 / 333
132
しおりを挟む
気まずい空気が流れてほしくなかった私は、ギュウ君に沢山話題をふって話しかけた
それに応えるギュウ君は、徐々に昨日の気さくな彼に戻っていく
「そういや、もう少し先に小さな湖がある。あそこは夏でも涼しいんだ。」
「湖?私実際に見たことないかも」
「行ってみる?」
草むしりに飽きていた私は、その誘いに2つ返事で行ってみるとギュウ君に伝え、連れて行ってもらう
この暑さ……まだ4月だよね?
どうしてこんなに暑いのか…地球温暖化のせいですか?
ギュウ君の言った通り、そう遠くない場所に湖はあった
そこはとても澄んでいて、水までもがどこまでも透明で綺麗だった
庭とは違った緑とまだらに咲く花々
風になびく木々と、水面が何とも涼しげで心地良い
「とてもいい場所だね」
「俺のお気に入りの場所だ。教会から近いのに、あまり知られていないんだ。」
「私が来てよかったの?なんだか悪いな…」
「ちさは…特別な。」
なんだろう…ギュウ君の顔が若干赤く見える
暑さのせいかな?
大丈夫?と近寄ろうとするも、何でもないと背を向けられてしまった
何でもないなら、良いけど……
湖に近づけば更に涼しく感じ、思わず目を閉じた
前方から吹く風は私の肌を擽り、花の良い香りを届けてくれる
首元やおでこ、先程までこもっていた熱を優しく静めてくれる
耳を澄ませてみれば葉と葉の奏でる音に、風によって生まれた自然の音
ぴよぴよと遠くから聞こえる雛と思われる鳴き声
「ここは、特別な場所だね」
「そうだな。俺もここはなんだか、安らぐような気がする。」
「ねえ、良かったら何回かここに来てもいい?」
「俺に許可なんか取らなくてもいいんだよ。ちさが来たいときに来ればいい。」
「ありがとう」
私の足元にある小さな花が、生き生きと咲いている
この小さな命でさえ、生きようと一生懸命に咲いているんだ
それを感じるだけで、どうしてだか胸が苦しくなる
それに触れてみても苦しさは消えなかった
少し力を入れれば、簡単に折れてしまうほど弱く儚い存在
(私はこんな小さな一輪の花よりも弱い存在なんだろうな…)
そんな私の目の前に真っ白で可愛らしい一輪の花が現れる
ふりふりと左右に若干揺れ、存在を主張するその花を持っているのはギュウ君だった
「これ、ちさに似てるよね。はい、あげる。」
「………っ、ありがとう…。……不思議ね」
「え?何が?」
「あ、ううん。この花、私にどう似てるの?」
知りたかった
この花との類似点を、どうしても
彼の手から受け取り、両手で大切に掴んで眺める
私が見る限り、全く似ている点はない
どこがどう似ているのだろうか?
デイジーはヨーロッパ生まれで、名前の語源は英語の ”day’s eye”…日光の目
ヨーロッパの人たちの多くは太陽を黄色く描く
デイジーの中央が黄色く太陽の目のようで、花びらが輝く光線のような形をしている事からデイジーという名前がついた
「なんだろうな…ちさが笑った時とか、何か似てる気がする。花びらは真っ白だけど、中央は光ってるみたいに明るい。なんとなく似てる。」
「私が笑うと、デイジーみたいに見えるってこと?それに、私の中央は黄色くなんかないよ」(余計分からない、混乱してきた…。)
「うーん。ギュッとまとめると……可愛いって、ことかな…?…言わせるなよ…。」
"可愛い"………か…
私はもう1度デイジーを見た
確かにデイジーはかわいい
それが例えお世辞でも、なんだか嬉しい
無意識に頬が緩んでしまうではないか
「前にね、ギュウ君と同じことを言ってくれた人がいたの。貰った時はピンとこなかったんだけどね、ギュウ君が言ってくれたことあの人も思ってくれたのかな」
「……そう、か」
「ごめん、こんな話興味ないよね。忘れて」
ギュウ君に言ったところで、何になる?
やめだやめだ
そろそろ戻らないとっと立ち上がり庭に戻ろうとした
だけど、ギュウ君に手首を捕まれ動きを止められる
「ちさ…もしかして、」
「ギュウ君?」
「その……、いや、何でもない。戻るか。」
それに応えるギュウ君は、徐々に昨日の気さくな彼に戻っていく
「そういや、もう少し先に小さな湖がある。あそこは夏でも涼しいんだ。」
「湖?私実際に見たことないかも」
「行ってみる?」
草むしりに飽きていた私は、その誘いに2つ返事で行ってみるとギュウ君に伝え、連れて行ってもらう
この暑さ……まだ4月だよね?
どうしてこんなに暑いのか…地球温暖化のせいですか?
ギュウ君の言った通り、そう遠くない場所に湖はあった
そこはとても澄んでいて、水までもがどこまでも透明で綺麗だった
庭とは違った緑とまだらに咲く花々
風になびく木々と、水面が何とも涼しげで心地良い
「とてもいい場所だね」
「俺のお気に入りの場所だ。教会から近いのに、あまり知られていないんだ。」
「私が来てよかったの?なんだか悪いな…」
「ちさは…特別な。」
なんだろう…ギュウ君の顔が若干赤く見える
暑さのせいかな?
大丈夫?と近寄ろうとするも、何でもないと背を向けられてしまった
何でもないなら、良いけど……
湖に近づけば更に涼しく感じ、思わず目を閉じた
前方から吹く風は私の肌を擽り、花の良い香りを届けてくれる
首元やおでこ、先程までこもっていた熱を優しく静めてくれる
耳を澄ませてみれば葉と葉の奏でる音に、風によって生まれた自然の音
ぴよぴよと遠くから聞こえる雛と思われる鳴き声
「ここは、特別な場所だね」
「そうだな。俺もここはなんだか、安らぐような気がする。」
「ねえ、良かったら何回かここに来てもいい?」
「俺に許可なんか取らなくてもいいんだよ。ちさが来たいときに来ればいい。」
「ありがとう」
私の足元にある小さな花が、生き生きと咲いている
この小さな命でさえ、生きようと一生懸命に咲いているんだ
それを感じるだけで、どうしてだか胸が苦しくなる
それに触れてみても苦しさは消えなかった
少し力を入れれば、簡単に折れてしまうほど弱く儚い存在
(私はこんな小さな一輪の花よりも弱い存在なんだろうな…)
そんな私の目の前に真っ白で可愛らしい一輪の花が現れる
ふりふりと左右に若干揺れ、存在を主張するその花を持っているのはギュウ君だった
「これ、ちさに似てるよね。はい、あげる。」
「………っ、ありがとう…。……不思議ね」
「え?何が?」
「あ、ううん。この花、私にどう似てるの?」
知りたかった
この花との類似点を、どうしても
彼の手から受け取り、両手で大切に掴んで眺める
私が見る限り、全く似ている点はない
どこがどう似ているのだろうか?
デイジーはヨーロッパ生まれで、名前の語源は英語の ”day’s eye”…日光の目
ヨーロッパの人たちの多くは太陽を黄色く描く
デイジーの中央が黄色く太陽の目のようで、花びらが輝く光線のような形をしている事からデイジーという名前がついた
「なんだろうな…ちさが笑った時とか、何か似てる気がする。花びらは真っ白だけど、中央は光ってるみたいに明るい。なんとなく似てる。」
「私が笑うと、デイジーみたいに見えるってこと?それに、私の中央は黄色くなんかないよ」(余計分からない、混乱してきた…。)
「うーん。ギュッとまとめると……可愛いって、ことかな…?…言わせるなよ…。」
"可愛い"………か…
私はもう1度デイジーを見た
確かにデイジーはかわいい
それが例えお世辞でも、なんだか嬉しい
無意識に頬が緩んでしまうではないか
「前にね、ギュウ君と同じことを言ってくれた人がいたの。貰った時はピンとこなかったんだけどね、ギュウ君が言ってくれたことあの人も思ってくれたのかな」
「……そう、か」
「ごめん、こんな話興味ないよね。忘れて」
ギュウ君に言ったところで、何になる?
やめだやめだ
そろそろ戻らないとっと立ち上がり庭に戻ろうとした
だけど、ギュウ君に手首を捕まれ動きを止められる
「ちさ…もしかして、」
「ギュウ君?」
「その……、いや、何でもない。戻るか。」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる