逍遙の殺人鬼

こあら

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互いに背を合わせ、疲れを休めるように空を眺めている
流石に疲れた…と呟く私に「こんなの余裕…」と強がってみせるギュウ君
ぜはぜはしているくせに、どの口が言うのか

洗濯を手伝ってもらったことには感謝しているが、こんなにも疲れさせてしまったことには少し気が引ける
でも、手伝ってもらったって知ったら……シスターエリは怒るだろうな…

達成感があるからか、前方から吹く風が、空気が美味しく感じる
都会からかけ離れた、自然の匂いを乗せた風
揺れる葉の音さえ心地良い

(あーー…このままだと寝ちゃいそう…)

暖かい日差しと、そよ風に誘われまぶたが重くなる
朝早く起きて、教会に着いてすぐ仕事
休む暇なんてなかったから、今になって限界が来たのか









「…ううん、ダメだ。このままだと寝ちゃいそう」

「寝ちゃえば?結構頑張ったじゃん、俺ら。少しぐらい許されるだろ。」

「寝たら、シスターエリに怒られちゃう。ギュウ君は昼寝してていいよ。」

「えぇ!?俺だけ昼寝とか、後味悪いじゃん。一人なら昼寝しない。」

彼の背中から離れた私に「頑張りすぎじゃねぇの?」と、心配の色を見せてくる
洗濯のことを"頑張りすぎ"と言っているなら、手伝ったギュウ君も同じく
本来ひとりでやるべき仕事を手伝ってもらったのだから、疲れや頑張りは半分に減っているはず

だけど、そうじゃないと言うかのように「少しは断りなよ。」と軽く叱ってくる
風に揺れる漆黒色の髪の間から見せる瞳を、私は目を見開いて見つめた

「何でもかんでも引き受けたら、身体が持たねぇぜ。」

「どうして…知ってるの?」

「全部見てた。教会に入る姿も、一生懸命窓ガラス拭いてる姿も、あの女の子と一緒になって洗濯してた姿も、全部見てた。」

「……、」

「ちさは、他のシスターとは違う。何でも馬鹿真面目にやるし、ちゃんと相手の気持を考えて行動してる。あの女の子に慰めの言葉をやらなかったのは、言っても悲しむ現実は変わらないこと知ってたからだろ?」

どうしてそんなに悲しそうな顔で、辛そうな顔で私を見るの?
まるで、自分もそうだと言ってるみたいで心が痛む

立ち上がってパッパッと草を払うと、下を向いて頭を、かいてみせる
確かに、そうだった
あの状況で大丈夫だよとか気にしないの!なんて無責任でなんの解決にもならない言葉をあげるよりも、一瞬の愉しさの方がいいと思った

まさかそんなことに気づく人がいたとは思いもしなかったし、見ていたことも知らなかった
少しバツの悪そうにしているギュウ君を、無言での見ているせいか背を向けられてしまう

「っご、ごめんなさい!!私、見られてると思わなくって…」

「ちさはやっぱり他のシスターとは違う。ここのシスターはそんなに弱気じゃないし、優しさなんて見せない。」

「私は…見習いだから……」

「そうじゃない。そんな肩書きなんかじゃなくて、ちさそのものだろ。シスターだからあの女の子に話しかけたのか?シスターだからあの女の子と遊んだのか?」

_______何だろう……なんとなく私と同じ匂いがする

別に香りがするわけじゃない
どこか同じ境遇を匂わせるそれに、不思議な親近感を感じてしまう

他の人からしたら困っているんだから助けるのは当たり前
むしろ、しなかったら異常とすら思われるかもしれない
なのにそうとは言わずに、どうしてそうしたのかを当てにくる

「…違う、と思う……」

「だろ。だから、やっぱり他のシスターとは違う。俺はそんなちさ、良いと思う。」

「っ…わ、私…褒めなれてないから、あんまりそう直球に言われると…少し、困ると言うか…」

「っわ、悪い…。」

何この絶妙な空気……
むず痒いこの感じ……

臼田うすたさんや透さんからも沢山褒められたことあるのに、ギュウ君に言われると何だか妙に汗が出るというか
同い年だからかな?…

熱くなる頬を冷ますように、両手でパタパタと扇いで風の流れを作る
心なしかギュウ君の耳も赤く染まっているように見えた
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