逍遙の殺人鬼

こあら

文字の大きさ
上 下
109 / 333

109

しおりを挟む
大型トラックの荷台に居る私は、車の揺れに耐えながらずらっと並ぶ機材を扱っている臼田うすたさんを見ている
正直パソコン以外の機材名なんかは全く分からない
しかし、臼田うすたさんには分かるようで、揺れを無視して何やら作業を進めている

どこに行くのか今回も伝えられてない
私は着慣れないワンピースを身にまとって、背もたれの無い丸い椅子に座っている

ふと昨日貰った指輪を見た
パーティーの前に臼田うすたさんから貰った指輪を、今も着けている
厳密に言うと、外すタイミングを逃しただけなのだが
何だか彼に守られているみたいで、心が落ち着く
未だに返事をせずにいる私を急かしたりしないで、待っていてくれる









揺れが止まった
目的地に着いたのだろうか?

荷台の扉が開かれ、ジャンさんと瑞貴さんが中に入って来た
それと共に口を開いたのは臼田うすたさんだった

「やっぱり僕がちさちゃんと行くよ。」

「駄目だ、ひさしは裏方担当だろ。行くのはこの子と、ジャンだ。」

(状況が全く飲み込めない…)

何の説明を受けていない私は、どこに・何で・何をしに行くか見当もつかない
そんな私に瑞貴さんは「デート楽しんで」と言ってくる
私はデートするために、荷台に乗って揺れていたの?
全く理解できない

「僕もちさちゃんとデートしたーい」

「うわっ、…うっせぇなー。マイクの近くで言うな」

「マイクチャックだよ。ちゃんと聞こえてるね、よし。」

耳元を抑えるジャンさんは、瑞貴さんに促されて荷台から出されてしまう
どうして誰も説明してくれないのか…
口がついてるんだから、喋ってよ。と思うが、既に手遅れ

「行くぞ」と私の手を取るジャンさんに、何をすれば…と問いかけた

「今からあんたと俺は恋人」

「恋人!?」

「のフリをする」

どうしてそんな歯切れの悪い伝え方をするのか…
”恋人”その言葉を実行するように、繋ぐ手の指を絡ませてくる
いわゆる恋人繋ぎだ

できれば、どうして恋人のフリをするのかも説明して欲しいのだが、そんなことはお構い無しに進んでいく
どうやら今日は何かのお祭りの様で、街は賑わっていた
色んな屋台に出し物
ピエロの格好をした人や火を吹く男など、まるでサーカスだ

そんな輝きに目を取られていると、誰かに肩を突かれる
振り返るとそこには白と黒で着彩された、少し不気味な男性がいた

男は帽子を取ると、そこから勢い良く鳩を何羽も出現させる
それに感動していると、男の口からトランプカードを出してくる
見事な手品に、私は盛大に拍手をした
それに釣られたのか、大勢の人がやってくる

男は胸ポケットから赤いハンカチを取り出すと、中から真っ赤な薔薇を一輪出して見せる
それに観客は大喜び
私もすごい!!と拍手すると、男は私にその薔薇をくれた

「ありがとうございます!すごい綺麗」

薔薇の匂いを嗅いでいると、横からジャンさんに奪われる
一体何をするのかと焦ると、ジャンさんの隣に居た女の子に薔薇を渡した
女の子は「ありがとう」と微笑んでいる

大人げないと分かってはいるが、私が貰ったのに…と拗ねてしまう
なのに強引に手を引かれるから、男の手品を見続けることができなかった

「薔薇…」

「花なんかすぐ枯れる」

「そうだとしても気持ちの問題です。例えすぐになくなるものでも、気持ちがこもっていたらどんなものでも嬉しいです。」

「へぇー。だからあんたは馬鹿みたいにバイキングせしめてた訳か」

「っあ、あれは、普段食べれないご馳走だから…飛びついただけです…」

全く弁解できていない、その言い訳に鼻で笑われてしまう
自分だって、車にお菓子詰め込んでるくせに
人のこと言えないじゃん、とか思うが怒られるので言わない
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

人妻の日常

Rollman
恋愛
人妻の日常は危険がいっぱい

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

処理中です...