逍遙の殺人鬼

こあら

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オドオドと明らかに不審な行動する私は、犯罪でも犯したかの様に辺りを見渡しながらジャンさんの方に歩く
さてさて目的地はどこですか?
「行くぞ」とサングラスを光らせて、乱暴に私の首根っこを掴んだと思ったら、グッと自分の方に引き寄せ肩に腕の感覚が乗った
普通に歩けばいいのに、なんでわざわざ歩きづらいことしてくるんだ?この人は

深く被りすぎたせいか前がよく見えない……
着いたと言う様に歩く脚を止めたジャンさんによって、連動する様に私も止める
どこ?と場所を確認すべく帽子をほんの少しずらすと、そこにはでっかくCとCが重なり合うロゴが見えた

そこは言わずもながら、有名どころのブランドだ
嫌な予感しかしないので、そぉーーっと抜け出そうとするがジャンさんの腕はしっかりと私の首をキャッチしたまま、すっぽんの様に離そうとしない









「いらっしゃいませ。」と品の良い声が聞こえる
残念ながら、その声の主を見ることはできない
不覚にも、首根っこを掴ままれたままだからだ

「やぁ、ビル。よく来てくれたね」

「来てやったぞ」

”ビル”‼︎??
一体いくつ名前をお持ちなのか……
薄々気づいてはいたが、きっと偽名だ

「それでー、シレンデレはどの子かな?」

「こいつ」

「うわっ!?」

急に腕を離したかと思ったら、乱暴に会話相手に投げ飛ばされた
そのせいで相手の人に壮大にぶつかり、その拍子に被っていた帽子は落ちてしまった

「おっと」と優しい手つきの腕が、私の体を包む様にに支えてくれたおかげで、これ以上の失態を晒さずにすんだ
すいませんと顔を上にあげると、以前のジャンさんによく似た髪色の男性が居て、大人の魅力というのだろうか?
そんな落ち着いた雰囲気を持った、店内に合う黒いスーツを着こなすオールバック気味の人が「大丈夫?」と少し微笑みながら心配の声を投げかけてくれる
距離がほぼゼロの距離感によって、甘いけどくどくない香りが私の鼻奥をくすぐる

どれどれ、とそのままの距離感のまま両頬を柔らかな手つきで確認するように触って来て、前髪をずらして顔をよく見えるようにしてくる
目元に触れると「君はクウォーター?」と質問される
そんな質問されても、自分の親の顔すら覚えていないのだから分かるはずもない

「髪の毛といいこの瞳といい、純日本人ではないね。すごく魅力的だ。」

「良いから早くしろよ」

ポケットに手を突っ込んで、明らかに苛立っているジャンさんに、お店の人が頬を赤ながらお水を渡していた
きゃーとか黄色い声をあげながら裏の方に戻り、3人くらいの店員さん方と一緒にジャンさんを見ては「水飲んだよ」と何故かスターのような扱いをしている

「ビルー、髪黒くしちゃったの?似合ってたのに」

「身代わりになってやったんだ、もう良いだろ」

「目立つんだよ」と疎みを見せるジャンさんに「それはすまなかったね」と笑いながら謝るイケメンさん
これが大人の余裕というものなのか
臼田うすたさんとは違った感じの、緩やかなイメージだ

「さあ、座って」と立派な椅子へとエスコートされ、ふかふかで程よい反発力の椅子に座る
前には大きな鏡と女優ライトと呼ばれるものが並んでいた

「どうも、ビルと仲良くさせてもらってる村中 透です。どうぞ透さんって呼んでください。」

「ちさって言います。よろしくお願いします、…透さん?」

「うん!ちさちゃんね、よろしく。」

「あの…私、何するか聞いてなくて……」

そうなの?と少し驚いて見せる透さんは「まぁビルだからねー」と慣れた様子だ
透さんの前で”ジャンさん”と呼ばない方がいいのだろうか?
そんなことを考えていると透さんがジャンさんを呼んだ
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