逍遙の殺人鬼

こあら

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仕事のため家を後にした臼田うすたさんを見送り、少し物寂しく感じる
居間に戻り朝食の残りを食べる
ジャンさんは食べ終わっているというのにまだソファーに座っていて、スマホを見ている
まだアダルトビデオでも見ているのか……

気にしていても仕方ないから朝食のガレットを切り分けて口に運ぶ
元々ゆっくりだった食べるスピードは、この家の2人によってさらに遅く感じさせられ謎の焦りを覚えさせてくる
男の人はみんなこんなにも早いものなのか?
そんなことを思っているとジャンさんが口を開いた

「あんたいくつ?」

「18…ですけど……」

そう正直に答えると「んだよ、酒飲めねぇのかよ」とガッカリされる
いや、ガッカリされても…と思う反面そういう規則は守るんだという思わせてくる
飲めなくて悪かったですね………

「あんた英語は?」

「一応理解はできます。会話も特に問題はないかと…」

「わかった」

何が”わかった”の!?嫌な予感しかしないんですが…………
いまだにスマホに目をやるジャンさんはそんなにAVが気になるのか?と思わせるほどスマホから目を離さない









「食べ終わったら支度しろ」

「っえ、なんでですか?」

「出かける」

だから‼︎??
ちゃんと理由を言ってくださいよ!!
しかしもう用はないのか居間を出て行ってしまう
そんな彼の後ろ姿を黙って見届け、ムカムカしながら朝食を食べ終えた

与えられた自室に入りタンスを開ける
中には色とりどりの衣服が綺麗に入っていた
全部臼田うすたさんが買ってくれたもので、私の物は1つもない

このタンスもベッドもカーテンにカーペットだってそうだ
全部買ってもらったもの、私のものではない
私のものなんて1つもないのかも……
そう思って白いTシャツと黒いズボンを手に取った

「私には1番いい………」

着替えているとブーッブーッと振動音が鳴った
それを手に取ると誰だかわからない人から電話がかかってきていたみたいで、恐る恐る出てみる

「……はい…」

「遅い」

__________ぷつっ…………

切れた………
相手はジャンさんで"遅い"とだけ言って勝手に終了させられた
悪ぅーございましたね!遅くて……

着替えを終えて玄関へと向かう
そこには腕組みしたサングラスと帽子をかぶった、どこぞのスターのオフ時みたいなジャンさんが待っていた
お待たせしました…、て言ってはみたけどそう時間はかかってないとか思いながら靴を履く

「遅ぇんだよ」と言いながら被っていた帽子を私に被せてくる
え?え?と理解できずにいる私を置いて行ってしまう
待ってください…ど玄関に鍵をかけて急いで後を追う
被らされた帽子を整えながら、どこに行くんですか?と聞くが答えてはくれない

まだ外に出るのは怖い
いくらジャンさんが一緒ないるとはいえ………やはり怖いものは怖い
無意識に両手を前にし、身が竦む

(そういえば…私ジャンさんのこと怖いって……)

思ったことあるけど、あいつみたいな心の底から気持ち悪くなる様な、ゾッとするような不快に思うようなことは………ないかも………?

歩き進めて駐車場に着き、ジャンさんの車に乗り、何故かまた助手席に座らせられる
渋々シートベルトをして前方を見る
まだどこに行くか言われない

言いたくないなら…別にいいけど………
でも、一応聞いてみよう

「どこに行くんですか?」

「言ってもわかんねぇだろ」

「…私、行く必要ありますか?……」

「、一人で居たいのか」

それは家の中に一人で居て平気なのか?と言う意味なのか、一人で居たかったのね。のどっちですか?
語尾に疑問感がないから後者なのか…?

外からは見えないと分かってはいるが見ることができない
理由は不安としか言えない
あいつがどこかに居るのかも…と私を憂虞ゆうぐさせる

「ん」

「なんです?…」

「食え」

そう言って手に持っている袋を私に向けてくる
いらないです、と言うと「食べろ」と命令口調で私にそれを押し付ける
手作り感のあるそれはビニール袋に入っているだけで市販のものでないことは容易に分かった

なんですか…これ、と聞くと「ハマンタッシェン」と聞き慣れない単語を言われさらに頭が混乱する
それはクッキのような生地に中央にはチョコレートが包まれていて、三角形のような形のお菓子だった
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