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私を追ってやってきたジャンさんによって、彼女から離されてしまう
また後で会おう、そう言えたら良かったのに…そんなこと言えるはずもなく、ジャンさんに肩を抱えられたまま彼女に背を向け歩き出してしまう
チラッと後ろを見るけど、幸せそうに笑う彼女に何だかモヤ…とした
私が居なくても、あの子は大丈夫そうだった
その事実に胸が押しつぶされそうな思いになった
____________________私は……用無しのようだ……………
急に肩を掴む手に力を込めたジャンさん
え?と彼の方を見ると、笑顔のだったはずの顔は面影がなくなるほど怒っていた
いくら遅い時間だからと言っても分かるほど、彼の眉間にはシワが寄っていて眉は尖り、瞳は光を遠ざけるみたいに冷たく見える
「あんた、なにしてんの」
「…あの、ジャンさん…」
「なにしてんだって聞いてんだよ!」
そんな風に言われビクっと身体が強張り、離されない肩は痛いほど掴まれている
「早く答えろ」と鬼の形相で迫るジャンさんは怖かった
その凶器みたいな瞳が私をさらに硬直させる
その恐怖に耐え、竦む口を精一杯動かく
「っ、友達を…見かけたから……」
「なんで言わねぇんだ!なんで1人で行くんだ!なんでそんなに…馬鹿なんだ」
(もしかして…心配、してくれたの……?)
違うかもしれないけど、もしそうなら…少し嬉しい
口調は強いのに、顔は怒っているのに、何故か言葉は優しく響く
………でも、どうして?
「どうして……ジャンさんが、心配するんですか?」
「俺が心配しちゃいけねぇのか」
「っ、それ、は…………」
いけない、だなんて言えない
だけどそんなふうに聞かれると…………困る
思わず彼から顔を背け下を向く
一時避難だ
心を、状況を整理するためのもの……なのにすぐにそれはやめさせられる
「またそれだ、そうやって下を見るのやめろ」
肩にあったはずの手が顎を覆うように頬を掴み、下を見るのを強制的に阻み自分の方に向かせる
…だから、痛いって………。
「なんであんたはいつも肝心なことを言わないんだ!」
「っ、………痛い…です…」
「そんなことを聞いてるんじゃねぇ!はぐらかすな!!」
何を言えっていうんだ
言ったところで何になる…
どうして彼女を見て必死になったか?
施設でのこと?
私の過去の話?
そんなこと…聞いたところで今さらだ
「…、私は自分が嫌いです…。従うしかできなかった自分も今の自分も。…それだけです」
「そんなんじゃ分かんねぇだろ、ちゃんと言え!」
「………電話、鳴ってますよ」
救われた…これ以上話したって何にもならない
舌打ち混じりに私を離すと電話に出た
相手は臼田さんみたいで「見つけた」と返していた
場所を伝えてるみたいで「そこじゃねぇ」と意外にも通話はすぐには終わらなかった
待っている間にふらっと辺りを見渡す
何を見たいわけでもない、何となく見ただけ
なのに…そこには見たくもない人物が立っていた
遠くにいてもその気持ち悪さは存在感があって、見ているだけでも吐き気が出そうで思わず後退った
そいつは口パクで《み・つ・け・た》と私に言う
こんな時だけは視力が悪い方が良かった
その目に写ってしまった現実に怖くなり、すぐそこで電話を続けるジャンさんの服を掴んでゆっくり歩み寄った
その時ばかりは私の動揺を察したのか、怒ったりせず「なんだ」と言ってくる
"みつけた"その言葉にどれだけの恐怖を感じるか
その恐怖を消し去りたくて彼で隠れるように抱きついた
また後で会おう、そう言えたら良かったのに…そんなこと言えるはずもなく、ジャンさんに肩を抱えられたまま彼女に背を向け歩き出してしまう
チラッと後ろを見るけど、幸せそうに笑う彼女に何だかモヤ…とした
私が居なくても、あの子は大丈夫そうだった
その事実に胸が押しつぶされそうな思いになった
____________________私は……用無しのようだ……………
急に肩を掴む手に力を込めたジャンさん
え?と彼の方を見ると、笑顔のだったはずの顔は面影がなくなるほど怒っていた
いくら遅い時間だからと言っても分かるほど、彼の眉間にはシワが寄っていて眉は尖り、瞳は光を遠ざけるみたいに冷たく見える
「あんた、なにしてんの」
「…あの、ジャンさん…」
「なにしてんだって聞いてんだよ!」
そんな風に言われビクっと身体が強張り、離されない肩は痛いほど掴まれている
「早く答えろ」と鬼の形相で迫るジャンさんは怖かった
その凶器みたいな瞳が私をさらに硬直させる
その恐怖に耐え、竦む口を精一杯動かく
「っ、友達を…見かけたから……」
「なんで言わねぇんだ!なんで1人で行くんだ!なんでそんなに…馬鹿なんだ」
(もしかして…心配、してくれたの……?)
違うかもしれないけど、もしそうなら…少し嬉しい
口調は強いのに、顔は怒っているのに、何故か言葉は優しく響く
………でも、どうして?
「どうして……ジャンさんが、心配するんですか?」
「俺が心配しちゃいけねぇのか」
「っ、それ、は…………」
いけない、だなんて言えない
だけどそんなふうに聞かれると…………困る
思わず彼から顔を背け下を向く
一時避難だ
心を、状況を整理するためのもの……なのにすぐにそれはやめさせられる
「またそれだ、そうやって下を見るのやめろ」
肩にあったはずの手が顎を覆うように頬を掴み、下を見るのを強制的に阻み自分の方に向かせる
…だから、痛いって………。
「なんであんたはいつも肝心なことを言わないんだ!」
「っ、………痛い…です…」
「そんなことを聞いてるんじゃねぇ!はぐらかすな!!」
何を言えっていうんだ
言ったところで何になる…
どうして彼女を見て必死になったか?
施設でのこと?
私の過去の話?
そんなこと…聞いたところで今さらだ
「…、私は自分が嫌いです…。従うしかできなかった自分も今の自分も。…それだけです」
「そんなんじゃ分かんねぇだろ、ちゃんと言え!」
「………電話、鳴ってますよ」
救われた…これ以上話したって何にもならない
舌打ち混じりに私を離すと電話に出た
相手は臼田さんみたいで「見つけた」と返していた
場所を伝えてるみたいで「そこじゃねぇ」と意外にも通話はすぐには終わらなかった
待っている間にふらっと辺りを見渡す
何を見たいわけでもない、何となく見ただけ
なのに…そこには見たくもない人物が立っていた
遠くにいてもその気持ち悪さは存在感があって、見ているだけでも吐き気が出そうで思わず後退った
そいつは口パクで《み・つ・け・た》と私に言う
こんな時だけは視力が悪い方が良かった
その目に写ってしまった現実に怖くなり、すぐそこで電話を続けるジャンさんの服を掴んでゆっくり歩み寄った
その時ばかりは私の動揺を察したのか、怒ったりせず「なんだ」と言ってくる
"みつけた"その言葉にどれだけの恐怖を感じるか
その恐怖を消し去りたくて彼で隠れるように抱きついた
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