逍遙の殺人鬼

こあら

文字の大きさ
上 下
32 / 333

32

しおりを挟む
ご飯が先に届いたのは臼田うすたの方だった

「お先に特別セットです。」

そう言って運ばれてきたのは仕分けされたお皿に違う料理が入ったものだった
それが3皿分よお皿に並ぶと「この場所テラスでしか頼めないメニューだよ」と教えてくれる

とてつもないいい香りで私の食欲をくすぐってきて、正直食べてみたい気持ちがあった
しかし、それは不躾だと自重した
だか、その決意はすぐに崩れた

「ちょっと一口食べてくれる?食べたことないから、どんな味かわからないんだ」

「…、はい…。」

パクっと一口サイズに切られたハンバーグを食べる
すると口の中にハンバーグのサッパリとしたクセのない肉汁が溢れ出た
デミグラスソースもしつこくない味でハンバーグとの相性は抜群だ

「どお?」

「…美味しいです」

「じゃぁこれは?」

入っと渡されたオムライスをまたパクっと口に入れる
卵がふわふわで、少しぷるぷるとした食感
ケチャップで炒められたごはんは卵に絡み合う

「最高です…」

「本当?こっちはどう?」

あーんと渡された生姜焼きは、噛めば噛むほど肉にしみたタレの味か口の中で暴れていた
一緒に運ばれた玉ねぎのシャキシャキとした感じと、柔らかい豚肉の違うもの同士のくせにやけにマッチした感じがハマりそうだ









「すっごく、美味しいです!」

「そんなに?こっちも食べてみて」

あーんとまた口を開こうとして、ハっとする
先程から私しか食べていない……
まさかと思うが

「最初から私に食べさせるつもりで…………」

「大正解!」

子供扱いするみたいに拍手をしてくる
パクパクと鯉みたいに食べていたことが恥ずかしくって赤面する顔を見られないように隠す

「でも、この席じゃないと食べれないのは本当だよ」

そんなことより、そうと知らずに食べさせてもらってるみたいな…が問題だ…
恋人でもないのに…………
_____恋人ならいいのか?と問われると困るけど

一緒に食べようよと言ってくる臼田うすたさんの誘惑に今度こそ負けないようにお断りを入れる
私にはちゃんと、フルーツホイップパンケーキがある
……そう思っていたのに…

「デザートはメインが終わるまで運ばれないよ」

だから食べようっと今度はカレーライスをスプーンですくい、私の口の前に持ってくる
彼のその長い腕はテーブルで離された距離を簡単に埋めてしまう

仕方ないからパクっと食べる
だって食べ終わらないとわたしのフルーツホイップパンケーキが食べれないもん

臼田うすたさんも食べてくだいよ」

「はいはい」と言うくせにひと巻きされたカルボナーラを乗せたスプーンは私の方を向いていた
はむっとそれを食べる
怒っているはずなのに、この美味しい料理たちによって邪魔される



思っていたより量はなく3口ぐらいで終わるように盛られていたらしく、数こそ多かったもののそこそこといった食べ具合だった
そしてようやく私のフルーツホイップパンケーキが運ばれてくる

会いたかった、私のフルーツホイップパンケーキよ…

目を輝かせ、ふわっふわのパンケーキに切り込みを入れる
まるで雲の様に軽く口に入れるのは容易なことだった

パンケーキの甘さと少しついていたホイップが、甘さ×甘さで、甘さの2乗になり口の中が甘くなる
続けてフルーツを食べる
いちごは全く酸っぱくなく、みかんはみずみずしさを弾けさせていた
ぶどうは皮まで美味しく、パイナップルなんか噛むたびに甘い汁を出してくる


「幸せそうだね」

私の緩みきった顔を見守る彼は片方の頬に手を付きながら微笑んでいた

臼田うすたさんもどうぞ!」

この美味しさを共有したくて何も考えずに彼にパンケーキを差し出す
その行動に目を丸くし、一時停止したかと思えば、ニヤッと笑ってフォークに刺さったそれをぱくっと食べる
美味しいでしょう?とはしゃぐ私は、いちごを乗せるとまた味が変わるんですっと言って最後のひと切れを彼に差し出す
それに笑いながらも食べてくれる

「すっごく美味しいですよね!こんな美味しいものを食べれるなんて今日を一生忘れません!!」

「一生?」

「はい!」

私のその言葉に先程とは違う微笑を浮かべていたことに、私は気づいていなかった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...