逍遙の殺人鬼

こあら

文字の大きさ
上 下
18 / 333

18

しおりを挟む
ようやく夕食を食べ終えることができた
食べる時間が長く感じた、しかも疲れがどっと重くのしかかった

食べ終わったお皿を流しに入れると、待ってましたと言わんばかりに颯爽さっそうと立ち上がりこちらに歩み寄る臼田うすたさん
にやにやに近い破顔はがんがやたらと目につく

いったい…なんなんだろう………


その笑みの理由を聞くと、髪の毛切って、と詰め寄って来る

だから何故寄ってくる…


「わかりました。わかりましたから、ちょっと離れてください…」

その言葉にやったー!っと無邪気に嬉しがる臼田うすたさんは20歳とは思えないほどはしゃいでいた
意外と子供っぽいところもおありの様で、手を引っ張ってお風呂場へと導いてくれる
そんなに髪の毛を切ってもらうのが嬉しいのだろうか…









ゴミ袋を使って美容師さんが着けてくれるカッパみたいなものをはさみで切って作っていく
ガムテープで貼り付け準備OK

小さな脚立をお風呂の真ん中に置き、臼田うすたさんを中に招く
「はいよー」と心地良い返事をしたかと思うと、急にスエットを脱ぎ始めた彼に喫驚きっきょうする


__________いきなり何をっ!?……


ふぅっ、と脱いだスエットを捨てるとタンクトップ姿でこちらに近づいてくる
今まで気づかなかった男らしい体と程よい筋肉はスエットによって隠されていたらしく、妙に彼をと意識させてくるみたいで、胸を衝くみたいな衝撃が体に走り、カチコチに固まり動くことができなくなる

丸眼鏡を取り軽く前髪をかき上げたその姿は、私の知っている臼田うすたさんとは別の人の様でなんだか変な感じだ
「っさ、お願いします。」と脚立に座る彼のその言葉に我に返る

即席のゴミ袋カッパを失礼しますっと首に巻きつけ、下の方を溝ができるように折り目をつける


「どうぞどうぞ。髪型はちさちゃんにお任せするよ」

目の前にある鏡越しに私に話しかける
鏡の彼にわかりましたと言い、コームで髪をとかす
サラサラで絡まりのない、ボリュームのある髪がどこか気持ちよく感じられた


「それでは…いきます。」

「はいよー。ちさちゃん好みの男にしちゃってくださーい」

「それ、は…ちょっと……」

(困ります…。)


実はあまり男性に会ったことがない
だから、好みと言われても、自分のタイプすら分からないのに……


施設にいた時も女性職員が多くゼロでは無いものの、会う機会は少なかった
唯一会う男性と言えば事務長
中年男性で背が高く、なんとも言えない不気味なオーラを垂れ流した人だった

今では思い出したくもない人物
忘れたい過去の一つだ

考えただけで、吐き気がする…



そんな暗い考えを巡らせていると「大丈夫?」その言葉でっは!とし、断髪に集中する


美容師が書いた本を読んだことはあるが、実際に人の髪を切るのははじめてだ
失敗しないように、慎重に慎重に少しづつ様子を見ながら切っていく
前と後のバランスをあらゆる角度から見て違和感を取り除いていく

無言でやっているが、それは集中している証拠だ

そんな私を見守りながら、口を出さずにいる臼田うすたさんは、いつもみたいなおちゃらけた感じを出さずに静かに座っている



「前髪切るので、目を閉じてください。」

「はーい」


すっと閉じると彼の長いまつ毛が際立って、本当に男なのか?と思わせるほど肌も綺麗で驚く


シャキ、シャキっとハサミの音がお風呂場に鳴り響き、ようやく髪の毛を切り終える
顔についた小さな髪を指ではらい、カッパを首から外す
終わったことを告げるとまぶたを持ち上げ鏡で髪を確認する

スッキリとした前髪に短くした後ろ髪
全体的に重みを取り除いて、アレンジのしやすいような髪型に仕上げた


「おぉー!いいじゃんいいじゃん!!頭が軽いよ!」

何度も鏡を見て前、後を確認する
何度見ても同じですけどね
満足いただけでなによりです
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

人妻の日常

Rollman
恋愛
人妻の日常は危険がいっぱい

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

処理中です...