逍遙の殺人鬼

こあら

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カップラーメンにお湯を注ぐと冷蔵庫についている手回しタイマーをとるとカチカチっと3分にセットする

ジッジッジッ、っと時間が過ぎる音を教えてくれるタイマーを見つめ、何かしなきゃと焦燥感しょうそうかんに駆られる

何か、何か……

何でもいい
何か言わなきゃ…



ジッジッジッジッジッジッジッジッジッと時間が、猶予が無くなっていく



「っお、おはようございます…」


タイマーに焦らされて、悩んだ結果がこれだ


小学生が好きな子に精一杯話しかけた最初の言葉みたいなものしか出てこなかった

恥ずかしすぎる………


カップラーメンから目を離し私へと視線を移すジャンさん



ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ


タイマーが鳴り響いた

タイムアウトだ




「うっざ」

タイマーを止め、カップラーメンを片手に割り箸を咥えて台所を出て行ってしまった









うざい

こんなに心に重苦しく来る言葉だったなんて……



そんな風に感じるのは、私が弱いからだろうか
もっと強かったら、もっと違う言葉を投げかけていたら、もっと最良の結果になっていただろうか?


選択を………間違えたんだろうか





「おにぎりを、…作ろう…」

(ジャンさんは食べないけど…………)









ふわぁぁぁぁぁぁぁ……、っと大あくびをしながら台所にやって来たのは私を雇ってくれた不審者だった

相変わらずのボサボサ頭に、手垢のついた眼鏡
おそらく昨日のハンバーグにつけたケチャップと思われるシミが服についていた


おはようございますと声をかけると、目をかきながら眠そうな声でおはようと返してくる


朝早いんだね、そう言うとまぶたがゆっくりと下に下に落ちて行く

そのままにしていたら、立ったまま寝てしまいそうなくらい眠気に襲われているみたいで、話しかけて眠気を覚まさせることにした




「昨日は遅く寝たんですか?」

「………。うん、……ちょっと、調べることがあって、ね……」

「遅くまでお疲れ様です。今朝は塩むすびなんですけど、大丈夫ですか?」

「あーー、ありがとう。元々食材なかったからね…。作ってもらえるだけ嬉しいよ」

「仕事なんで。」




一緒に食べようっと居間に促される

眠そうにしているが、いただきますっとおにぎりを頬張る

「なんか、ほっこり…」



こちらとしては、ハムスターみたいに口一杯におにぎりを常混んでいるあなたの姿のはうが、ほっこりする

小動物か何かですか?



おにぎりを食べながら、今日の仕事について話し出す

お金を渡され、生活に必要なモノと食材を買って来て欲しいと
出来る限り汚いところをできる範囲で掃除して欲しいとのこと




「昨日お風呂入れなかったでしょ。僕らごはん食べたら夕方まで帰ってこないから好きなだけ浴びていいよ。男がいると、入りづらいでしょ。」


「いや、別に…、昨日は疲れててそのまま寝ただけだす。」


これは本当だ

お風呂よりも睡眠が勝っていた



それよりも驚いたのは不審者の対応だ

意外と紳士的で優しさが溢れ出ていた



おにぎりを食べ終えると思いたったかのように口を開く



「そういえば名前言ってなかったね。僕臼田うすた ひさし。彼がかめかめ言うのはひさしが亀って書くから。ちょっと可愛いでしょ?」

ニコッと笑いこちらに微笑みかける

昨日は暗くてわかんなかったけど伸ばしきった前髪で隠された顔は意外と整っていた

忙しくぎて髪の毛を切る暇もないのだろうか?


人懐っこい性格でこの場の空気を暖かくする



君は?っと聞かれ口を開く


「ちさって言います。名字はありません。」


出会ったときに言っていたから察しは付いていると思うが念の為に言った

名字は?なんて彼の口から言わせたら可哀想だから


「可愛い名前だね。でしょ?」



誰に聞いてるの?
私?


そう思っていると後ろから、ふんっと笑う声が聞こえた
ジャンさんだった

スーツ姿に前髪をかき上げた姿でびっしり決まっていた



その言葉がしっくりする感じた




その姿はかっこよく正直見入ってしまうほどよく似合っていた
彼のその姿を見つめているとジャンさんは口を開いた


萵苣ちさ、…レタスね。いい名前なんじゃない」


あ、今鼻で笑ったこの人




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