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#7 交渉。
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出雲の背に緊張がはしる。
スーツ姿の客は背広の懐からなにかを取りだそうとしている。
客がそれを抜いた。
「…………」
出雲は気づかれぬよう密かに息を吐いた。
男が取りだしたのはただのシガレットケースだ。
「車内は禁煙でお願いします」
「固いこというなよ。このクルマには空気清浄機は取りつけてないのか?」
「保有台数が規定ぎりぎりの弱小零細会社です。そんな立派なものは付ける余裕がありません」
「そんなところで働いているあんたらも大変だよな。ちなみに今日の水揚げ(売り上げ)はいくらなんだ?」
「企業秘密です」
「その100倍だそうじゃないか。いますぐキャッシュで」
客が持っていたビジネスケースを開く。
ちらりと目をやる。
レンガ(1千万の札束)が2個あった。
「何者なんですか?」
「前の客から聞いてないのかい?」
「ワジャム……とかいうやつですか」
「そうさ、あんたがオレたちの仲間になるというのなら、このレンガをもう一個おまけだ。損な取り引きじゃないと思うぜ」
「具体的になにをすればいいのか教えてください」
「おっと乗ってきたな。利口なやつは好きだぜ」
そういうと、客は構わずタバコに火をつけ、紫煙を吹かしはじめた。
次回へつづく
出雲の背に緊張がはしる。
スーツ姿の客は背広の懐からなにかを取りだそうとしている。
客がそれを抜いた。
「…………」
出雲は気づかれぬよう密かに息を吐いた。
男が取りだしたのはただのシガレットケースだ。
「車内は禁煙でお願いします」
「固いこというなよ。このクルマには空気清浄機は取りつけてないのか?」
「保有台数が規定ぎりぎりの弱小零細会社です。そんな立派なものは付ける余裕がありません」
「そんなところで働いているあんたらも大変だよな。ちなみに今日の水揚げ(売り上げ)はいくらなんだ?」
「企業秘密です」
「その100倍だそうじゃないか。いますぐキャッシュで」
客が持っていたビジネスケースを開く。
ちらりと目をやる。
レンガ(1千万の札束)が2個あった。
「何者なんですか?」
「前の客から聞いてないのかい?」
「ワジャム……とかいうやつですか」
「そうさ、あんたがオレたちの仲間になるというのなら、このレンガをもう一個おまけだ。損な取り引きじゃないと思うぜ」
「具体的になにをすればいいのか教えてください」
「おっと乗ってきたな。利口なやつは好きだぜ」
そういうと、客は構わずタバコに火をつけ、紫煙を吹かしはじめた。
次回へつづく
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