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第9話 曇天
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「なにをやってるんですかッ?!」
颯汰は水面に向かってコルトパイソンを撃ちつづける豹吾の腕を押さえつけた。
「離せ!」
豹吾はやはり確信犯だった。刑事の職分を忘れてコンサヨを抹殺しにかかっている。
「ぼくたちは刑事でしょうが! 処刑人じゃない!」
そのときだ、上空で稲妻が光った。
雷鳴が轟き、天から大粒の雨が降ってくる。
「くそッ!!」
豹吾が颯汰の腕を振り解き、コルトパイソンを懐のホルスターにしまった。
コンサヨが落下した呑川が早くも増水し濁流と化している。
豹吾はジャガーEXの運転席にもどると颯汰を置き去りにして走り去った。
「…………」
颯汰は激しい雷雨に打たれたまま暴れ狂う水面を見つめつづける。
コンサヨおじさんの姿は浮かびあがってこない。底流のところで押し流されたか?
見切りをつけ踵を返すと、近くの軒先に避難して室長の田所に連絡を入れた。
明日、鑑識のダイバーが派遣され、川底や河口の捜索が開始されるだろうとのことだった。
もし、コンサヨが射殺体で発見されれば豹吾は監察の査問に呼び出されることとなる。
いや、死んでいなくても拳銃を発砲したことは事実なのだ。
抵抗されてやむなくといったケースではない。クルマで撥ね飛ばした上、呑川に転落した犯人をさらに拳銃で撃った。これは明らかな警察官職務執行法第七条違反なのだ。
颯汰も査問に呼ばれ証言を迫られる。監察の前では正直にこたえるしかない。
雷雲はさらに低く垂れ込め天をふさいでいる。
はあ……。
重く深いため息をついて颯汰は現場をあとにした。
第10話につづく
颯汰は水面に向かってコルトパイソンを撃ちつづける豹吾の腕を押さえつけた。
「離せ!」
豹吾はやはり確信犯だった。刑事の職分を忘れてコンサヨを抹殺しにかかっている。
「ぼくたちは刑事でしょうが! 処刑人じゃない!」
そのときだ、上空で稲妻が光った。
雷鳴が轟き、天から大粒の雨が降ってくる。
「くそッ!!」
豹吾が颯汰の腕を振り解き、コルトパイソンを懐のホルスターにしまった。
コンサヨが落下した呑川が早くも増水し濁流と化している。
豹吾はジャガーEXの運転席にもどると颯汰を置き去りにして走り去った。
「…………」
颯汰は激しい雷雨に打たれたまま暴れ狂う水面を見つめつづける。
コンサヨおじさんの姿は浮かびあがってこない。底流のところで押し流されたか?
見切りをつけ踵を返すと、近くの軒先に避難して室長の田所に連絡を入れた。
明日、鑑識のダイバーが派遣され、川底や河口の捜索が開始されるだろうとのことだった。
もし、コンサヨが射殺体で発見されれば豹吾は監察の査問に呼び出されることとなる。
いや、死んでいなくても拳銃を発砲したことは事実なのだ。
抵抗されてやむなくといったケースではない。クルマで撥ね飛ばした上、呑川に転落した犯人をさらに拳銃で撃った。これは明らかな警察官職務執行法第七条違反なのだ。
颯汰も査問に呼ばれ証言を迫られる。監察の前では正直にこたえるしかない。
雷雲はさらに低く垂れ込め天をふさいでいる。
はあ……。
重く深いため息をついて颯汰は現場をあとにした。
第10話につづく
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