刑事ジャガー 特異犯罪捜査室

自由言論社

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第8話 追走の果て

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『コンサヨは南蒲田みなみかまたから西糀谷にしこうじやに向かって移動中。
 やつに追いつく最短ルートはそこの角を右に曲がって突き当たりの道を左だ!』
 左耳に装着したハンズフリーイヤホンから逐一、追跡情報が豹吾から流れてくる。ジャガーXEとリンクした捜査室CICカメラの目を通して指示を発しているのだ。

 しかし、自転車で逃走している犯人に対してこちらは徒歩だ。オリンピック選手でもあるまいに追いつけるはずがない…と思っていたのだがそうでもないらしい。
『コンサヨはこの辺りに土地勘はないようだ。同じ道をいったりもどったりしている。おい、前をみろ。やつが右からくるぞ!』
 豹吾がいったとおり、右の路地から自転車に乗ったコンサヨおじさんが破れたトレンチコートの裾を風になびかせて現れた。
『追え、逃すなッッ!』
 いわれるまでもない。颯汰は走る。
 コンサヨは猫道のような細い路地を北に向かって進んでいる。ビル壁に切り取られた空間の先に宝来橋の袂が見えてきた。

 叫んでも効果はないとわかっていても颯汰は声を発した。
「待てーーっ!」
 当然のことながら待つわけがない。コンサヨは一段と自転車のスピードをあげると、切り取られた空間の先へと飛び出した。
 その刹那——

「えっ?!」
 信じられぬことが起こった。赤い獣が横あいから飛び出してきて自転車ごとコンサヨおじさんを撥ねたのだ。
 コンサヨの体が、自転車が、きれいな放物線を描いて呑川のみがわに落下した。汚泥まみれの水飛沫が虹を描く。
 赤い獣——ジャガーXEから鏑木豹吾が颯爽と降り立つ。
 颯汰は豹吾に息を切らして駆けよると——
「うわあ、ねちゃいましたね」
 だが次の瞬間、豹吾はさらに信じられぬ行動にでた。
 レザージャケットの懐からコルトパイソンを抜くと357マグナム弾をコンサヨが落下した水面に撃ち込んだのだ。
 颯汰は確信した。
「撥ねてしまった」のではない。
 最初から明確な殺意をもって、このコンサヨおじさんなる特異犯罪者を抹殺にきたのだ。



       第9話につづく

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