刑事ジャガー 特異犯罪捜査室

自由言論社

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第4話 食人鬼ゴリラー!

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「こっ、これって完璧ゴリラじゃないですか?」
 この毛むくじゃらの生物はどこからどう見てもゴリラだ。ゴリラが動物園から逃げ出してきたのか?
「違う。本名・五利力夫ごり・りきお。れっきとした人間だ。まあ、畜生にも劣るやつだがな」
 豹吾が吐き捨てるようにいった。
「暴力衝動と性衝動を抑えられないやつだった。脳に障害があることが確認され、近畿地方のとある精神病院に措置入院となったのだが……」
「そこでなにかあったのですか?」
 豹吾がなぜかいい淀む。
 颯汰は先を促した。
「その精神病院は患者に新薬の投薬実験を行なっていたんだ。未承認の薬を過剰に投与された五利の体はみるみる変貌し、最後はこのような姿になってしまったというわけだ」
「…………」
 元は犯罪者とはいえ、違法な人体実験の犠牲者でもある。凶悪な人間に降りかかった最悪な出来事がこのようなモンスターを生み出してしまったのだ。

「文字通りのゴリラ男となった五利は拘束具を食い破り、鉄格子を捻じ曲げて隔離病棟から脱走。各地で殺人事件、強姦事件を起こして全国指名手配となった。ファイルNo.Jー8167。通称ゴリラ男だ」
「こいつの犯行の手口は?」
「それなんだがな……」
 また、豹吾がいい淀む。ひとつ間をおいてつづける。
「脳を喰うんだ」
「脳を?!」
 颯汰は思わず聞き返した。相手の脳みそを喰らうというのか?
「文字通りの意味だ。このゴリラ男は肥大化した手で相手の頭部をわしづかむと、そのまま握りつぶし、飲みそを引きずり出して貪り喰う。殺人鬼というより食人鬼といったほうがいいかもしれない」

 小会議室の空気が一気に重くなった。
「つまり、この都内にはコンサヨおじさん、マッドガッサー、そしてこのゴリラ男の三人が潜伏していて、次なる犯行の機会をうかがっていると……」
 知らぬが仏とはよくいったものだ。マスコミに報道されないだけで、脅威はすぐそこに潜んでいる。
「公表すれば都民がパニックに陥るレベルだ。おれたちの役目は人知れず悪を追い詰め逮捕することだ。都民をいたずらに恐怖にさらしてはいけない」
 と、そのときだ、小会議室の内線電話インターフォンがけたたましい呼び出し音を鳴らした。
 豹吾が受話器をとる。
「わかった、すぐゆく!」
 電話の相手に短く告げると、豹吾は椅子の背もたれに立てかけてあったレザージャケットを手にとった。
「コンサヨおじさんが蒲田のショッピングモールに現れた。買い物客10人にナイフで切りつけたそうだ」
 颯汰は機敏に飛び出してゆく豹吾の背につづいた。
 なんとしてもコンサヨおじさんを逮捕しなければならない。
 東京に戒厳令が敷かれる前に……。



       第5話につづく
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