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2章 異世界の真実
3節 力の源、スキルの獲得
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「よし、この辺りだな。ゴブリンの巣は。」
エリオが立ち止まり、周囲の森を見渡した。草木の間から差し込む日の光がチラチラと揺れ、空気は湿気を帯びている。聞こえるのは鳥の鳴き声と、遠くで小川が流れる音――そして、ときおり聞こえる小さな唸り声。
「うわ、あれか?いるっぽいな。」
ユウは手に持った木の棒を握りしめた。結局、まともな武器を買う金はまだなく、彼の唯一の頼りはこの簡易な「火属性棒」だ。エリオは隣で短剣を構え、低い声で言った。
「落ち着けよ。ゴブリンはそこまで強くないが、頭数が揃うと厄介だ。複数で来られたら、俺が前に出るからお前はチャンスを見て動け。」
「了解……って、複数ってどれくらいだよ?」
「運が悪ければ10匹以上だな。」
「聞かなきゃよかった!!」
そう言っている間にも、ゴブリンたちの姿が見え始めた。木の陰から覗いてくる緑色の小柄な体。汚れたボロ布をまとい、手にはサビた短剣や木の棍棒を握っている。
「ゴブリンって意外と原始的だな……でも、数多いじゃんかよ!3匹どころか5匹いるぞ!」
「こんなのまだ序の口だ。さあ行くぞ!」
エリオが前に出て短剣を振るうと、一匹のゴブリンが瞬時にのけぞった。動きは素早く、経験豊富な戦士のようだった。それを見て、ユウも勇気を振り絞る。
「くそ、オレだってやってやる!」
ユウは火のついた棒を振り回し、近づいてきたゴブリンに思い切り叩きつけた。
「グギャアッ!」
炎がゴブリンの腕に燃え移り、驚いたように後退する。
「おお、効いてるじゃん!」
だが、その瞬間、別のゴブリンが背後から跳びかかってきた。
「うわ、マジか!?」
とっさに転がって回避したユウは、スマホを操作しながら「収納スキル」を発動する。
「頼む、なんかいいアイテム出てこい!」
光が現れ、彼の手元に落ちてきたのは――なんと鍋の蓋だった。
「いや、盾ってことか!?これでどうしろってんだよ!」
とはいえ、選択肢はない。ユウは鍋の蓋を構え、迫りくるゴブリンの攻撃を受け止める。ガキン!という音とともに蓋が弾き飛ばされそうになるが、どうにか持ちこたえる。
「くそ、もっと役立つもの出せっての!」
再び収納スキルを試すと、今度は火の魔法書が出現した。
「おお、これだよ!魔法だ!」
急いで魔法書を開くと、そこには「ファイアボルト」という初級魔法の使い方が記されている。
「えっと、念じて……『ファイアボルト』!」
ユウが叫ぶと、魔法書から赤い火の玉が飛び出し、ゴブリンの一匹に直撃した。爆発音とともにゴブリンは炎に包まれ、その場で倒れ込む。
「やった!魔法使えたぞ!」
その様子を見たエリオが笑いながら叫ぶ。
「おい、初心者のくせに派手じゃねえか!」
「うるせえ!こっちだって必死なんだよ!」
ユウは再び「ファイアボルト」を放ち、残るゴブリンを次々と倒していく。最後の一匹が倒れたとき、彼はその場にへたり込んだ。
「はぁ、はぁ……死ぬかと思った……。」
エリオが手を差し出して言う。
「お疲れさん。でも、お前、初めてにしてはやるじゃないか。あの火の魔法、かなり威力があったぞ。」
「まあ……スキルのおかげだけどな。自分の力って感じがしねえよ。」
「それでも、魔法を使いこなせるのは立派だ。お前、冒険者としてやっていけそうだな。」
エリオの言葉に、ユウは少し照れくさそうに笑った。
帰り道、ユウはスマホでスキル一覧を確認してみた。すると、今までなかった新しいスキルが追加されていた。
スキル一覧:
[鑑定][収納][言語理解][火魔法(初級)]
「おお、これって……魔法が正式にスキルになったのか!」
魔法書を使ったことで、スキルが「火魔法」として習得されたようだ。
「これは便利だな……これからも色々試してみる価値がありそうだ。」
そんなことを考えていると、エリオが隣でぽんと肩を叩いた。
「よし、この調子で次のクエストも受けるぞ!ゴブリン討伐は報酬も出るし、さらに装備も整えられるはずだ!」
「えー、もうちょっと休ませてくれよ……。」
こうしてユウは冒険者としての第一歩を踏み出し、新たなスキルを手に入れながら成長を始めていくのだった――。
エリオが立ち止まり、周囲の森を見渡した。草木の間から差し込む日の光がチラチラと揺れ、空気は湿気を帯びている。聞こえるのは鳥の鳴き声と、遠くで小川が流れる音――そして、ときおり聞こえる小さな唸り声。
「うわ、あれか?いるっぽいな。」
ユウは手に持った木の棒を握りしめた。結局、まともな武器を買う金はまだなく、彼の唯一の頼りはこの簡易な「火属性棒」だ。エリオは隣で短剣を構え、低い声で言った。
「落ち着けよ。ゴブリンはそこまで強くないが、頭数が揃うと厄介だ。複数で来られたら、俺が前に出るからお前はチャンスを見て動け。」
「了解……って、複数ってどれくらいだよ?」
「運が悪ければ10匹以上だな。」
「聞かなきゃよかった!!」
そう言っている間にも、ゴブリンたちの姿が見え始めた。木の陰から覗いてくる緑色の小柄な体。汚れたボロ布をまとい、手にはサビた短剣や木の棍棒を握っている。
「ゴブリンって意外と原始的だな……でも、数多いじゃんかよ!3匹どころか5匹いるぞ!」
「こんなのまだ序の口だ。さあ行くぞ!」
エリオが前に出て短剣を振るうと、一匹のゴブリンが瞬時にのけぞった。動きは素早く、経験豊富な戦士のようだった。それを見て、ユウも勇気を振り絞る。
「くそ、オレだってやってやる!」
ユウは火のついた棒を振り回し、近づいてきたゴブリンに思い切り叩きつけた。
「グギャアッ!」
炎がゴブリンの腕に燃え移り、驚いたように後退する。
「おお、効いてるじゃん!」
だが、その瞬間、別のゴブリンが背後から跳びかかってきた。
「うわ、マジか!?」
とっさに転がって回避したユウは、スマホを操作しながら「収納スキル」を発動する。
「頼む、なんかいいアイテム出てこい!」
光が現れ、彼の手元に落ちてきたのは――なんと鍋の蓋だった。
「いや、盾ってことか!?これでどうしろってんだよ!」
とはいえ、選択肢はない。ユウは鍋の蓋を構え、迫りくるゴブリンの攻撃を受け止める。ガキン!という音とともに蓋が弾き飛ばされそうになるが、どうにか持ちこたえる。
「くそ、もっと役立つもの出せっての!」
再び収納スキルを試すと、今度は火の魔法書が出現した。
「おお、これだよ!魔法だ!」
急いで魔法書を開くと、そこには「ファイアボルト」という初級魔法の使い方が記されている。
「えっと、念じて……『ファイアボルト』!」
ユウが叫ぶと、魔法書から赤い火の玉が飛び出し、ゴブリンの一匹に直撃した。爆発音とともにゴブリンは炎に包まれ、その場で倒れ込む。
「やった!魔法使えたぞ!」
その様子を見たエリオが笑いながら叫ぶ。
「おい、初心者のくせに派手じゃねえか!」
「うるせえ!こっちだって必死なんだよ!」
ユウは再び「ファイアボルト」を放ち、残るゴブリンを次々と倒していく。最後の一匹が倒れたとき、彼はその場にへたり込んだ。
「はぁ、はぁ……死ぬかと思った……。」
エリオが手を差し出して言う。
「お疲れさん。でも、お前、初めてにしてはやるじゃないか。あの火の魔法、かなり威力があったぞ。」
「まあ……スキルのおかげだけどな。自分の力って感じがしねえよ。」
「それでも、魔法を使いこなせるのは立派だ。お前、冒険者としてやっていけそうだな。」
エリオの言葉に、ユウは少し照れくさそうに笑った。
帰り道、ユウはスマホでスキル一覧を確認してみた。すると、今までなかった新しいスキルが追加されていた。
スキル一覧:
[鑑定][収納][言語理解][火魔法(初級)]
「おお、これって……魔法が正式にスキルになったのか!」
魔法書を使ったことで、スキルが「火魔法」として習得されたようだ。
「これは便利だな……これからも色々試してみる価値がありそうだ。」
そんなことを考えていると、エリオが隣でぽんと肩を叩いた。
「よし、この調子で次のクエストも受けるぞ!ゴブリン討伐は報酬も出るし、さらに装備も整えられるはずだ!」
「えー、もうちょっと休ませてくれよ……。」
こうしてユウは冒険者としての第一歩を踏み出し、新たなスキルを手に入れながら成長を始めていくのだった――。
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