36 / 36
2章 修行【魔界】
26話
しおりを挟む
ソフィアの修行終了から、2日後のことだった。
「なっ、なにっ!?」
「キァアッ!」
コカビエルとソフィアがラディの話しをしていたら、まるで地が割れるような轟音と激しい揺れが彼女らを襲った。
そして、その発生源はラディがいる方向だ。
それに気付いた二人はすぐさま空を飛び向かう。
普段であれば転移で済むが、今は何が起こっているかもわからずそれすら危ない。そして、ラディが居るであろう場所には溢れかえるような魔力が満ち満ちていた。
「これは不味いわよ」
「それはラディ様の身に何か起こったということでしょうか」
「……」
コカビエルは答えなかったが、その表情は険しい。
「ラディ様……」
ソフィアは胸元を握りしめた。
コカビエルは、そんな彼女をちらりと見た。ただ、また何も言わずに前を見る。
近付くにつれて、息苦しくなるような魔力が肌を刺激する。そして、これ以上は近付けないと判断してソフィアを止めて、彼を見た。
魔力の異常な密度、量。そして、本来ここに在ってはいけない力を彼から同時に感じる。
(……これは、メフィストも予想しなかったでしょうね)
悪魔であれば嫌悪する力だが、今はそれよりも彼の進化への興奮が勝る。
この魔力こそが彼本来の力なのだろう。
かつての人間であった彼の魔力とはもはや別物と化した力。ただ、契約によって歪に歪められてしまった力だ。
そんな力の渦の中で、呆然と自身の手を見ている青年に声がけた。
「ラディちゃーーん! 力、制御しなさーーい! 」
「ラディ様ーー! 大丈夫ですかー!!」
その声でこちらに気付いたらしい彼は、はっとして瞼を閉じる。それとともに辺りに充満していた力が抑えられ、彼の中に戻っていく。そして、全てを抑え込んだ彼からは一切の力を感じない。それは、それだけ制御が完璧だということだ。
ソフィアはすぐさまラディの元に駆けつけた。
「ラディ様っ! 大丈夫ですか」
「大丈夫だ、問題ない。それどころか、体に力が満ちていて、普段よりも動けそうだ」
そんなやり取りをしている二人を見ながら、コカビエルはラディの力に確信を得る。それと同時に、彼が自力でメフィストが緩めていった拘束をさらに緩めていることに気が付いた。
「まさか魔界でその力が花開くなんて……フフ、やっぱりラディちゃんって最高っ!」
「なっ、なにっ!?」
「キァアッ!」
コカビエルとソフィアがラディの話しをしていたら、まるで地が割れるような轟音と激しい揺れが彼女らを襲った。
そして、その発生源はラディがいる方向だ。
それに気付いた二人はすぐさま空を飛び向かう。
普段であれば転移で済むが、今は何が起こっているかもわからずそれすら危ない。そして、ラディが居るであろう場所には溢れかえるような魔力が満ち満ちていた。
「これは不味いわよ」
「それはラディ様の身に何か起こったということでしょうか」
「……」
コカビエルは答えなかったが、その表情は険しい。
「ラディ様……」
ソフィアは胸元を握りしめた。
コカビエルは、そんな彼女をちらりと見た。ただ、また何も言わずに前を見る。
近付くにつれて、息苦しくなるような魔力が肌を刺激する。そして、これ以上は近付けないと判断してソフィアを止めて、彼を見た。
魔力の異常な密度、量。そして、本来ここに在ってはいけない力を彼から同時に感じる。
(……これは、メフィストも予想しなかったでしょうね)
悪魔であれば嫌悪する力だが、今はそれよりも彼の進化への興奮が勝る。
この魔力こそが彼本来の力なのだろう。
かつての人間であった彼の魔力とはもはや別物と化した力。ただ、契約によって歪に歪められてしまった力だ。
そんな力の渦の中で、呆然と自身の手を見ている青年に声がけた。
「ラディちゃーーん! 力、制御しなさーーい! 」
「ラディ様ーー! 大丈夫ですかー!!」
その声でこちらに気付いたらしい彼は、はっとして瞼を閉じる。それとともに辺りに充満していた力が抑えられ、彼の中に戻っていく。そして、全てを抑え込んだ彼からは一切の力を感じない。それは、それだけ制御が完璧だということだ。
ソフィアはすぐさまラディの元に駆けつけた。
「ラディ様っ! 大丈夫ですか」
「大丈夫だ、問題ない。それどころか、体に力が満ちていて、普段よりも動けそうだ」
そんなやり取りをしている二人を見ながら、コカビエルはラディの力に確信を得る。それと同時に、彼が自力でメフィストが緩めていった拘束をさらに緩めていることに気が付いた。
「まさか魔界でその力が花開くなんて……フフ、やっぱりラディちゃんって最高っ!」
0
お気に入りに追加
5
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる