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2章 修行【魔界】
メフィストの冒険?⑤
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「何! 宰相が死んだだと? 一大事ではないか」
若き皇帝、カイセルは思わぬ訃報に頭を抱えた。
現在は真夜中であり、火急の知らせと起こされたので最初は不機嫌であったが、宰相の訃報に、そんなものは飛んでいき、頭を占めたのはこれからどうするべきかであった。
宰相自身の死については嘆いておらず、自分がこれからどうすればいいのかしか考えていない。そのため、宰相の死因すら聞き返さない。
そして、なぜ死因が報告されないのかすら、疑問を抱かなかった。
自信の保身についてしか考えられない本来であれば、愚物とも言われても可笑しくない皇帝に、側近である男は答えた。
「はい、宰相様が亡くなったのは誠に残念です。 しかし、実はそれにつきましては代わりの者……適任がおります」
「何! 誰だ?」
頭を抱えていたカイセルはバッと顔を上げた。
「はい。宰相の息子である、メフィス卿が適任だと思われます。噂では、彼の知識量は前宰相を越えているらしいです。私としても、彼ならカイセル陛下のお力になると思います!」
側近である男は、強く言い切った。
「………あぁ、メフィスか」
カイセルは、一瞬誰だと思ったが、頭の中でニコニコといつも笑っている黒髪の青年を思い出す。
「確かに、あいつなら父であった宰相の仕事もこなすだろうな………よし、ならば火急の知らせとしてメフィスを呼び出せ!」
「は!」
▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️
「お待たせ致しました、陛下。家臣メフィス、ただいま参上致しました」
黒髪の男は、堂々とした立ち振舞いで胸に手を当て、カイセルに華麗に礼をする。
(……んん? なんだ、この違和感は………)
カイセルは違和感を感じたが、それを気の疲れだと判断し、メフィスに顔を上げるように言った。
そして、顔を上げた男の紫目と目が合った瞬間、言い知れぬ悪寒が背筋を走った。
まさか自分が一貴族であるメフィスに気圧されているのかと思ったが、そんなことはないと思い直し、気を持ち直すために一度軽く頭を振り再度メフィスと向かい合った。
「メフィスよ、呼び出したのは他でもない。お前の父である宰相が亡くなった。誠に残念なことだ……しかし! 我々も前を向かなくてはいけない。この国のためにも……お前には父である宰相の仕事を継いで欲しいと考えている。この国のためだ、勿論継いでくれるな?」
カイセルは、嫌とは言わせないと圧をかける。しかし、そんなもの知ってか知らずか
メフィスはにこやかに告げる。
「勿論でございます、陛下。私、メフィスは父の後を継ぎ、ありがたく宰相に就かせていただきます」
再度礼をした青年の口元は、、三日月のように笑っていたが、承認の返事にほっとしていたカイセルたちには見えていなかった。
若き皇帝、カイセルは思わぬ訃報に頭を抱えた。
現在は真夜中であり、火急の知らせと起こされたので最初は不機嫌であったが、宰相の訃報に、そんなものは飛んでいき、頭を占めたのはこれからどうするべきかであった。
宰相自身の死については嘆いておらず、自分がこれからどうすればいいのかしか考えていない。そのため、宰相の死因すら聞き返さない。
そして、なぜ死因が報告されないのかすら、疑問を抱かなかった。
自信の保身についてしか考えられない本来であれば、愚物とも言われても可笑しくない皇帝に、側近である男は答えた。
「はい、宰相様が亡くなったのは誠に残念です。 しかし、実はそれにつきましては代わりの者……適任がおります」
「何! 誰だ?」
頭を抱えていたカイセルはバッと顔を上げた。
「はい。宰相の息子である、メフィス卿が適任だと思われます。噂では、彼の知識量は前宰相を越えているらしいです。私としても、彼ならカイセル陛下のお力になると思います!」
側近である男は、強く言い切った。
「………あぁ、メフィスか」
カイセルは、一瞬誰だと思ったが、頭の中でニコニコといつも笑っている黒髪の青年を思い出す。
「確かに、あいつなら父であった宰相の仕事もこなすだろうな………よし、ならば火急の知らせとしてメフィスを呼び出せ!」
「は!」
▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️
「お待たせ致しました、陛下。家臣メフィス、ただいま参上致しました」
黒髪の男は、堂々とした立ち振舞いで胸に手を当て、カイセルに華麗に礼をする。
(……んん? なんだ、この違和感は………)
カイセルは違和感を感じたが、それを気の疲れだと判断し、メフィスに顔を上げるように言った。
そして、顔を上げた男の紫目と目が合った瞬間、言い知れぬ悪寒が背筋を走った。
まさか自分が一貴族であるメフィスに気圧されているのかと思ったが、そんなことはないと思い直し、気を持ち直すために一度軽く頭を振り再度メフィスと向かい合った。
「メフィスよ、呼び出したのは他でもない。お前の父である宰相が亡くなった。誠に残念なことだ……しかし! 我々も前を向かなくてはいけない。この国のためにも……お前には父である宰相の仕事を継いで欲しいと考えている。この国のためだ、勿論継いでくれるな?」
カイセルは、嫌とは言わせないと圧をかける。しかし、そんなもの知ってか知らずか
メフィスはにこやかに告げる。
「勿論でございます、陛下。私、メフィスは父の後を継ぎ、ありがたく宰相に就かせていただきます」
再度礼をした青年の口元は、、三日月のように笑っていたが、承認の返事にほっとしていたカイセルたちには見えていなかった。
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