君が僕を呼んだから

radio

文字の大きさ
上 下
35 / 36
2章 修行【魔界】

25話

しおりを挟む
コカビエルはラディの修行を行っていたが、自分ができることが終わり、ソフィアの様子を見に来た。


「あら ソフィアちゃん、魔力の扱いが上手くなったわね~」

コカビエルはソフィアの頭を撫でる。
ソフィアも嫌がる素振りも見せず、ニコニコとした顔で撫でられている。いつもと違うのは、耳が少し赤くなっていることぐらいだろう。

「ありがとうございます、コカビエル様。私の方はメフィスト様が残したで何とかなりましたわ」

ソフィアは、わざわざ紙というところを強調して言う。……何度目かは分からないがあえて言おう。あれは一応紙ではあるが名称をつけるなら正しくは本だろう。明らかにメフィストに喧嘩を売っているソフィアにコカビエルの笑顔は多少ひきつっていた。
(………ソフィアちゃんは結構根に持つタイプね)

また、ソフィアの魔力の扱い方が短期間で上達したことに、コカビエルは本当に感心していた。

それは、元人間であるソフィアが悪魔の体に馴染むまでの期間が、普通では考えられないくらい早かったからだ。人間であった頃の数十倍という量の魔力の扱いをたった2週間で習得した。メフィストが残していった紙だけで……
しかも、コカビエルはソフィアからその本を少し見せてもらったが

「………メフィスト、人に教えることに関しては壊滅的ね」

思わずそう言ってしまうくらいの内容だった。

細かい字でびっしりと書かれており、図やグラフなどもない。本当に文字しか書かれていなかった。
さらに、その内容は話口調で書かれており、指南書というよりももはや日記だった。

 最初、それを見たコカビエルは受け取る本を間違えたのかと思ったが、問おうとしたソフィアの真顔を見て、察した。



「……ま、まあこれでソフィアちゃんは問題なく界移動できるわね!」

コカビエルは、多少ひきつった笑顔ではあったが、明るい声で締めくくった。ソフィアは笑顔で返事をする。コカビエルはそれにうなずくと「後は」と言い、自分が先程までいた場所を心配そうに見つめる。
ソフィアも同じ方向を見た。だが、その顔はコカビエルとは対照的に、大丈夫という確信に満ちた顔をしていた。

「ラディ様ならば、必ず成し遂げられます」

ソフィアは断言した。



その頃、ラディはコカビエルにより、全身を特殊な炎で炙られていた。

しかし、もう熱さは感じない。全身へ完璧に魔力を巡らせたラディの今の課題はそれを長時間保つことだった。

現在、炙られ始めてすでに一時間経っていた。
ラディが、体内の魔力を完璧に制御したのは、修業を始めて一週間だった。最初は命の危機を感じて無我夢中で行っていた制御も、今は考えなくても体が勝手に行っている。
生物として異常なスピードで進化を行っているラディにコカビエルも恐怖と興味をもった。

本当に、メフィストが手にしていなければ自分のものにしたいほどに……


ラディは人間の状態でそれなのだ。悪魔達が欲しがるのも納得の逸材だった。力あるものを従えることが悪魔達の中では重要なことだった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...