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2章 修行【魔界】
24話
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「少し話が脱線したわね。話、戻すわよ。結論として、ラディちゃんには魔力の密度を上げる練習と、その制御を緻密に行う二つをやってもらう必要があるわ」
「わかった」
「あと界移動には影響がないけど、追加事項としてラディちゃんは魔力の許容量も増やしていきましょう」
「え」
修行を早めに終わらせ、すぐにでも復讐したい俺としては追加事項は必要ないようにも感じる。
「なんで追加で許容量も増やすんだ? 人間にしては多いなら復讐には必要ないんじゃないか? できれば早めに界移動したいんだが」
「これは……今後を考えるとやっといた方が良いわ。一応復讐とも関係してるから」
「え? でもさっきの話ぶりだと制御を密度を上げれば人族を剣も使わずに圧倒できるという感じじゃなかったか?」
「ええ。人族相手ならね」
「…………」
コカビエルの言葉に不穏なものを感じる。そして、まさかを思うが今の話し方だと……
「まさか……今回の件、人族以外の者も関わっているのか!」
「……ラディちゃんがメフィストという悪魔と契約していることも異例なのよ。本来、あなたのような者が悪魔と契約なんてあり得ないことなの。それを置いておいたとしても、あの国やメフィストの封印は……いろいろ複雑なのよ。まあ、メフィストについては少し自業自得だしね……多少は不憫には思ったけど。その辺は直接あいつに聞いてちょうだい」
コカビエルは全てを話してくれる気はないようだ。しかし、状況を理解しているコカビエルが必要というなら許容量の修行も必要なのだろう。
「わかった。許容量も訓練してくれ」
「ええ、賢明な判断ね。じゃあ、まずは今の魔力量で密度を上げましょうか」
「ああ」
とは言い始まったコカビエルとの訓練は地獄だった。
「待て待て待て待て! なんだこれは!」
「なにって、密度を高める修行よ。ほら、ちゃんと集中して足元の魔力の密度上げないと……足、焦げるわよ」
「集中できるか! 熱っ、おい待て! 火力を上げるなあぁぁぁぁあああ⁉」
コカビエルの密度を高める修行はいきなりの実践からスタートした。
今、ラディはコカビエルが点火した特殊な火の上に吊るされており、足元はじわじわと炙られている。
この特殊な火は、魔力密度が高ければ何も感じない、代わりに熱耐性を一切禁じるものだった。
全身の密度を高めるためにも、まずは末端からということでこの方法がとられた。
最初は、ラディもただ炙られている状態だったが、コカビエルが少しずつ火力を上げるため、どうにかそれに耐えられるように思考をフル回転させた。
その結果、足をいつも強化していた剣に見立てたことで足の魔力密度は急上昇させることができた。
「はあ、はあ、火炙りにされるかと思った」
「いやね~、足しか燃えないように調節してたじゃない。それにしても、思った以上に呑み込みが早いわね」
いや、『足しか』でも燃えているのだから問題じゃないか?
「で、どうかしら? そこまで足の密度を上げると他が薄くなるでしょ? そこで、連続して許容量も上げちゃいましょうか」
「は? 許容量は追加事項だと言っていたじゃないか、なんで制御より先にするんだよ」
そういえば、コカビエルはニヤッと笑い
「まだ気づいてないみたいね。今、密度を上げるために魔力を制御したじゃない。この訓練、実は同時に鍛えられるのよ? まあ、自分の中の制御だけどね」
「あ……」
それはそうだ。魔力を足に濃く集中させるために、体中から魔力を制御して集めたのだから以前より制御力は上がっているはずだ。
しかし、コカビエルは別々に修行が必要だと言った……
「騙したな!」
「嘘ではないでしょ? ついでに制御は上がっても未だに緻密な制御とは言えないし、中より体の外で魔力を制御する方が大変なのよ。それに、私の想定よりも貴方の体内での制御が優れていたから先に量を増やすのよ。
本当は少しずつ密度を上げて、その間で制御についてやるつもりだったのに、ラディちゃんは体内魔力のほとんどを足に送ってしまって、今、他の部位の魔力がスカスカじゃない。ここで、限界以上に魔力を入れれば許容量も上がるチャンスなのよ。良かったわね、時短になるじゃない」
確かに、今足に魔力を集中させたため、他の部分の魔力は極端に低くなっている。
しかし、チャンスだと言われても一回騙された気分で釈然としない。
「……」
「この分だと、想定していた二カ月よりも早く修行が終わりそうね」
「!? 本当か!」
「ええ。あたしの想定だと密度を上げて、許容量を上げることが大変だと踏んでたから。それに、体内での制御を見るに、今までは本当に必要がなかったからやってなかっただけみたいだし、センスはあるってわかったからね。この分だと体外での制御もそんなに時間がかからないと思うわ」
騙されたという感情よりも、思わぬ短縮になり喜びが溢れる。だが、ここで気付いた。ではなぜ、コカビエルはさも別々に修行が必要で時間がかかると言ったのか。それには何か大きな意味があるのではないかと………
「コカビエルの説明だと時間が凄く多くかかるように捉えたし、どちらも一応修行が同時にできるなら、別々に修行が必要なんてわざわざ言わなくても良かったんじゃないのか?」
どんな返答が来るかわからないが、なぜあんな言い方としたのか気になり聞いてしまう。
「だって、あの言い方の方が焦るでしょ? あたしも何も無償でやっているんじゃないのだもの。楽しまなきゃね」
心底楽しそうに笑う堕天使に、絶対にこいつに一泡吹かせてやろうと固く誓ったラディだった。
「わかった」
「あと界移動には影響がないけど、追加事項としてラディちゃんは魔力の許容量も増やしていきましょう」
「え」
修行を早めに終わらせ、すぐにでも復讐したい俺としては追加事項は必要ないようにも感じる。
「なんで追加で許容量も増やすんだ? 人間にしては多いなら復讐には必要ないんじゃないか? できれば早めに界移動したいんだが」
「これは……今後を考えるとやっといた方が良いわ。一応復讐とも関係してるから」
「え? でもさっきの話ぶりだと制御を密度を上げれば人族を剣も使わずに圧倒できるという感じじゃなかったか?」
「ええ。人族相手ならね」
「…………」
コカビエルの言葉に不穏なものを感じる。そして、まさかを思うが今の話し方だと……
「まさか……今回の件、人族以外の者も関わっているのか!」
「……ラディちゃんがメフィストという悪魔と契約していることも異例なのよ。本来、あなたのような者が悪魔と契約なんてあり得ないことなの。それを置いておいたとしても、あの国やメフィストの封印は……いろいろ複雑なのよ。まあ、メフィストについては少し自業自得だしね……多少は不憫には思ったけど。その辺は直接あいつに聞いてちょうだい」
コカビエルは全てを話してくれる気はないようだ。しかし、状況を理解しているコカビエルが必要というなら許容量の修行も必要なのだろう。
「わかった。許容量も訓練してくれ」
「ええ、賢明な判断ね。じゃあ、まずは今の魔力量で密度を上げましょうか」
「ああ」
とは言い始まったコカビエルとの訓練は地獄だった。
「待て待て待て待て! なんだこれは!」
「なにって、密度を高める修行よ。ほら、ちゃんと集中して足元の魔力の密度上げないと……足、焦げるわよ」
「集中できるか! 熱っ、おい待て! 火力を上げるなあぁぁぁぁあああ⁉」
コカビエルの密度を高める修行はいきなりの実践からスタートした。
今、ラディはコカビエルが点火した特殊な火の上に吊るされており、足元はじわじわと炙られている。
この特殊な火は、魔力密度が高ければ何も感じない、代わりに熱耐性を一切禁じるものだった。
全身の密度を高めるためにも、まずは末端からということでこの方法がとられた。
最初は、ラディもただ炙られている状態だったが、コカビエルが少しずつ火力を上げるため、どうにかそれに耐えられるように思考をフル回転させた。
その結果、足をいつも強化していた剣に見立てたことで足の魔力密度は急上昇させることができた。
「はあ、はあ、火炙りにされるかと思った」
「いやね~、足しか燃えないように調節してたじゃない。それにしても、思った以上に呑み込みが早いわね」
いや、『足しか』でも燃えているのだから問題じゃないか?
「で、どうかしら? そこまで足の密度を上げると他が薄くなるでしょ? そこで、連続して許容量も上げちゃいましょうか」
「は? 許容量は追加事項だと言っていたじゃないか、なんで制御より先にするんだよ」
そういえば、コカビエルはニヤッと笑い
「まだ気づいてないみたいね。今、密度を上げるために魔力を制御したじゃない。この訓練、実は同時に鍛えられるのよ? まあ、自分の中の制御だけどね」
「あ……」
それはそうだ。魔力を足に濃く集中させるために、体中から魔力を制御して集めたのだから以前より制御力は上がっているはずだ。
しかし、コカビエルは別々に修行が必要だと言った……
「騙したな!」
「嘘ではないでしょ? ついでに制御は上がっても未だに緻密な制御とは言えないし、中より体の外で魔力を制御する方が大変なのよ。それに、私の想定よりも貴方の体内での制御が優れていたから先に量を増やすのよ。
本当は少しずつ密度を上げて、その間で制御についてやるつもりだったのに、ラディちゃんは体内魔力のほとんどを足に送ってしまって、今、他の部位の魔力がスカスカじゃない。ここで、限界以上に魔力を入れれば許容量も上がるチャンスなのよ。良かったわね、時短になるじゃない」
確かに、今足に魔力を集中させたため、他の部分の魔力は極端に低くなっている。
しかし、チャンスだと言われても一回騙された気分で釈然としない。
「……」
「この分だと、想定していた二カ月よりも早く修行が終わりそうね」
「!? 本当か!」
「ええ。あたしの想定だと密度を上げて、許容量を上げることが大変だと踏んでたから。それに、体内での制御を見るに、今までは本当に必要がなかったからやってなかっただけみたいだし、センスはあるってわかったからね。この分だと体外での制御もそんなに時間がかからないと思うわ」
騙されたという感情よりも、思わぬ短縮になり喜びが溢れる。だが、ここで気付いた。ではなぜ、コカビエルはさも別々に修行が必要で時間がかかると言ったのか。それには何か大きな意味があるのではないかと………
「コカビエルの説明だと時間が凄く多くかかるように捉えたし、どちらも一応修行が同時にできるなら、別々に修行が必要なんてわざわざ言わなくても良かったんじゃないのか?」
どんな返答が来るかわからないが、なぜあんな言い方としたのか気になり聞いてしまう。
「だって、あの言い方の方が焦るでしょ? あたしも何も無償でやっているんじゃないのだもの。楽しまなきゃね」
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