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第3章 碧斗、高校2年生。あさひ、社会人7年目。
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「碧斗、碧斗ー!」
「まだ出て来ないの?もうすぐ式始まっちゃうわよ」
「母さんたち先行っててよ、後から碧斗と行くから」
部屋の外、ドアの前で話す声だけは聞こえていた。
「そう…、碧斗にちゃんと制服着て来るように言っといてよ。学生は制服が正装なんだからね」
「あぁ言っとくよ」
「身なりちゃんとさせてよ」
「うん、大丈夫」
「じゃあ…、拓海よろしくね」
さっきから兄貴が何度もノックしてる音も嫌になるほど聞こえている。
「碧斗!何してんだよ、早く出て来いよ!今ならまだ間に合うから!」
ベッドを背もたれにしながら膝を立てて座り、俯きながらきゅっと耳を塞いでいた。
あとは制服のブレザーを羽織るだけ、でもそれが出来なくてブレザーはベッドの上に無造作に放置していた。
「おい、いい加減にしろよ!」
ドンドンドンッ!とノックする音と比例するように兄貴の声も大きくなる。何度もガタガタとドアノブを動かし、力づくで開けようとしている。
「せめてドア開けろ!鍵壊すぞ!」
「………。」
「おい、碧斗!聞いてるのかっ!!」
ドンッと家中に響くような大きな音がした。兄貴がどれだけ怒ってるのかよくわかる、腹の底から怒鳴るような声が聞こえているから。
“明日、…碧斗も来てくれるよね?”
行くよ。
行こうと思ってるよ。
そうやってあさひに言ったからね。
あさひと約束したからね、あさひと約束したことは守らないと。
だけど…、昨日のあさひの顔が頭から離れない。
“泣きたい時に泣かせてあげられなくてごめんね”
あさひにさよならを言われてるみたいだった。
「まだ出て来ないの?もうすぐ式始まっちゃうわよ」
「母さんたち先行っててよ、後から碧斗と行くから」
部屋の外、ドアの前で話す声だけは聞こえていた。
「そう…、碧斗にちゃんと制服着て来るように言っといてよ。学生は制服が正装なんだからね」
「あぁ言っとくよ」
「身なりちゃんとさせてよ」
「うん、大丈夫」
「じゃあ…、拓海よろしくね」
さっきから兄貴が何度もノックしてる音も嫌になるほど聞こえている。
「碧斗!何してんだよ、早く出て来いよ!今ならまだ間に合うから!」
ベッドを背もたれにしながら膝を立てて座り、俯きながらきゅっと耳を塞いでいた。
あとは制服のブレザーを羽織るだけ、でもそれが出来なくてブレザーはベッドの上に無造作に放置していた。
「おい、いい加減にしろよ!」
ドンドンドンッ!とノックする音と比例するように兄貴の声も大きくなる。何度もガタガタとドアノブを動かし、力づくで開けようとしている。
「せめてドア開けろ!鍵壊すぞ!」
「………。」
「おい、碧斗!聞いてるのかっ!!」
ドンッと家中に響くような大きな音がした。兄貴がどれだけ怒ってるのかよくわかる、腹の底から怒鳴るような声が聞こえているから。
“明日、…碧斗も来てくれるよね?”
行くよ。
行こうと思ってるよ。
そうやってあさひに言ったからね。
あさひと約束したからね、あさひと約束したことは守らないと。
だけど…、昨日のあさひの顔が頭から離れない。
“泣きたい時に泣かせてあげられなくてごめんね”
あさひにさよならを言われてるみたいだった。
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