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第3章 碧斗、高校2年生。あさひ、社会人7年目。
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「ねぇねぇ碧斗、何か欲しいものないの?」
「ないよ、最近コート買っちゃったし」
「じゃあ靴は!あ、帽子とか財布とか!」
「え、急に何?どした?」
行き先は駅前のショッピングモール、昔あさひとヒーローショーを見に来たところ。だいぶお店は変わっちゃったけど今でもデートで人気の遊びスポットなのは健在でいつ来ても人はたくさんいる。
「碧斗に何かプレゼントしたいなって、思って。今日までのお礼に…みたいな」
………。
それか目的は、それで誘われたのか、わざわざ。
てゆーかそれじゃあ俺の方がお母さんじゃないか。
「…何もいらないよ」
「なんか欲しいものないの?何でもいいよ!好きなもの買ってあげる!」
「急に言われてもないよ」
「じゃあ、あれは!?ヒロのグッズ!」
「もういらないよ、小学生の頃好きだったアニメのグッズとかもう欲しくないよ」
そんなのいつの話だよ、って言いたくなる。あさひにとって俺はそんなイメージなのかって。
「…欲しいもの、ないの?」
「ないから、大丈夫だよ」
むぅ~と口を尖らせる。そんな顔されても俺だって困るんだけど、いきなり誘われて欲しいもの催促されてあさひの方がそんな顔するのかよ。
「あ!」
「?」
パンッと両手を合わせて、何かいいこと思いついた風に明るい表情を見せた。マジでこんなとこも変わってない、百面相のあさひも健在で。
「じゃあパンケーキ食べよう!碧斗好きでしょ?」
そして、それはきっとあさひの好きなものだけど…
「うん、好き」
一緒に作るホットケーキが好きだった。
ショッピングモールの中に入っているパンケーキ屋はそこそこ混んでいて、数人いた行列に並んでお店に入った。
並んでいる間、最近見たおもしろかったテレビの話とかおいしかったお菓子の話とかどーでもいい話題で、だけどそんな話をしていたらあっという間に順番が来た。
案内された隅っこの席であさひと向き合って、何のパンケーキにするかメニューを見る。ん~っと声を出しながら少し悩んだあさひと顔を見合わせてお互い食べたいものをあげた。
「「チョコバナナパンケーキ!」」
悩んだ間も5秒くらい、最初から決まってたように話し合う間もなくメニューが決まった。
「毎回そうだよね、碧斗と行くと好きなもの同じだから半分コ出来ないんだよね!」
「いつもチョコレートアイスだったからな、2人して」
「ホットケーキには絶対バナナだし」
「それはあさひが俺にバナナあげとけばいいみたいに言ったから!」
「え、そーだっけ?」
そんな話をしながら注文したパンケーキが届くのを待った。パンケーキより先にフォークやナイフの入ったケースが届いた。
「あさひ、その爪でパンケーキ食べれるの?フォークとナイフ使える?」
「たぶん食べれる!」
「たぶんって」
根拠のない自信につい笑っちゃって。
あさひの白くて細い指にパステルピンクがよく似合っていた。
「その爪、可愛いね」
「本当?」
「うん、可愛い」
可愛いよ、誰より可愛い。
褒めたら頬を緩めて笑う姿も何もかも。
その手にもう触れられなくて。
「ないよ、最近コート買っちゃったし」
「じゃあ靴は!あ、帽子とか財布とか!」
「え、急に何?どした?」
行き先は駅前のショッピングモール、昔あさひとヒーローショーを見に来たところ。だいぶお店は変わっちゃったけど今でもデートで人気の遊びスポットなのは健在でいつ来ても人はたくさんいる。
「碧斗に何かプレゼントしたいなって、思って。今日までのお礼に…みたいな」
………。
それか目的は、それで誘われたのか、わざわざ。
てゆーかそれじゃあ俺の方がお母さんじゃないか。
「…何もいらないよ」
「なんか欲しいものないの?何でもいいよ!好きなもの買ってあげる!」
「急に言われてもないよ」
「じゃあ、あれは!?ヒロのグッズ!」
「もういらないよ、小学生の頃好きだったアニメのグッズとかもう欲しくないよ」
そんなのいつの話だよ、って言いたくなる。あさひにとって俺はそんなイメージなのかって。
「…欲しいもの、ないの?」
「ないから、大丈夫だよ」
むぅ~と口を尖らせる。そんな顔されても俺だって困るんだけど、いきなり誘われて欲しいもの催促されてあさひの方がそんな顔するのかよ。
「あ!」
「?」
パンッと両手を合わせて、何かいいこと思いついた風に明るい表情を見せた。マジでこんなとこも変わってない、百面相のあさひも健在で。
「じゃあパンケーキ食べよう!碧斗好きでしょ?」
そして、それはきっとあさひの好きなものだけど…
「うん、好き」
一緒に作るホットケーキが好きだった。
ショッピングモールの中に入っているパンケーキ屋はそこそこ混んでいて、数人いた行列に並んでお店に入った。
並んでいる間、最近見たおもしろかったテレビの話とかおいしかったお菓子の話とかどーでもいい話題で、だけどそんな話をしていたらあっという間に順番が来た。
案内された隅っこの席であさひと向き合って、何のパンケーキにするかメニューを見る。ん~っと声を出しながら少し悩んだあさひと顔を見合わせてお互い食べたいものをあげた。
「「チョコバナナパンケーキ!」」
悩んだ間も5秒くらい、最初から決まってたように話し合う間もなくメニューが決まった。
「毎回そうだよね、碧斗と行くと好きなもの同じだから半分コ出来ないんだよね!」
「いつもチョコレートアイスだったからな、2人して」
「ホットケーキには絶対バナナだし」
「それはあさひが俺にバナナあげとけばいいみたいに言ったから!」
「え、そーだっけ?」
そんな話をしながら注文したパンケーキが届くのを待った。パンケーキより先にフォークやナイフの入ったケースが届いた。
「あさひ、その爪でパンケーキ食べれるの?フォークとナイフ使える?」
「たぶん食べれる!」
「たぶんって」
根拠のない自信につい笑っちゃって。
あさひの白くて細い指にパステルピンクがよく似合っていた。
「その爪、可愛いね」
「本当?」
「うん、可愛い」
可愛いよ、誰より可愛い。
褒めたら頬を緩めて笑う姿も何もかも。
その手にもう触れられなくて。
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